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2024年10月11日 (金)

プレイバック春日局・(36)父子断絶

【アヴァン・タイトル】

東京都文京区。「春日町」の名が示すように、ここは春日局と縁(えにし)の深い土地です。春日局が家光より拝領になった土地のひとつが、現在の文京区本郷なのです。湯島天神にほど近い春日通りに面して建つのが天沢山麟祥院(てんたくさん りんしょういん)。春日局の菩提寺です。ここはかつて、春日局が好きだったからたちの花に囲まれ、“からたち寺”と呼ばれていました。

狩野探幽(たんゆう)の筆による「春日局像」。また家光より拝領のうちわや書状など、局ゆかりの品々が残っています。死して後も世の中を見守り続けたいという遺言により、墓石には東西南北に穴が開いています。死後350年、今も世の中の動向を見続けているのです──。


元和9(1623)年5月、45歳の徳川秀忠は20歳の徳川家光に将軍職を譲ると宣言します。かつて徳川家康が力のあるうちに秀忠に将軍職を譲り、将軍は徳川家世襲であることを天下に示したのに倣(なら)い、秀忠も力のあるうちに将軍職を譲り、大御所として家光の将軍教育に力を注ぎたいわけです。家光は深々と一礼し、さっそく秀忠は家光将軍就任の儀を朝廷より賜るよう土井利勝に命じて手配させます。

秀忠の呼び出しで不安を隠しきれないおふくですが、将軍になると知って涙を浮かべ、祝辞を述べます。おふくはこの日のために家光誕生から仕えてきたので、感動もひとしおです。しかし家光は不本意そうです。将軍になるとはいえ天下の実権は秀忠にあり、何もできない、何もしてはならない飾り物の将軍なのです。自分を卑下する家光に、おふくは複雑そうな表情を浮かべます。

家光とおふくはお江与の居室に赴きます。始めは1~2年と言われた乳母の務めも20年になったわけで、お江与はおふくを労わります。秀忠が大御所である限り家光は名ばかりの将軍ですが、激しい気性だからこそ腹に据えかねることもあるだろうが、耐えることを説きます。「子としての分を越えるは身を滅ぼす元とお心得なされ。くれぐれも身を誤らぬように」

お江与はおふくの方に向き直し、務めはこれからと励まします。これまでは将軍になるために教育を続けてきたおふくは、これからは奥をしっかりと取り締まり、御台所を迎えて一日も早く世継ぎができるようにしなければなりません。おふくは家光に世継ぎが産まれるまで、見届けるつもりです。

武家伝奏の三条西実条(さねえだ)が江戸に下向します。今回は家光が将軍職に就任する許しが朝廷から出たため、勅許の使者の役目です。秀忠、家光、そして徳川忠長が揃って上洛し、宮中へ参内して朝廷から官位を授けられるわけです。さらに御台所についても、公家から迎えたいとの秀忠の意向もあります。徳川の力を示し、朝廷との関係もより強くするためと、実条は喜びます。

 

夏、秀忠ら父子は上洛の途につきます。7月27日、宮中に参内した秀忠は将軍を辞して大御所となり、家光は征夷大将軍に任ぜられます。そして入内していた和子と3年ぶりの対面です。和子は兄の家光が御台所を迎えると聞いて喜びますが、家光本人は初めて聞く話であり、反発します。「そなたは黙ってわしの言うがままになっておればええ。これは徳川三代将軍の縁組みじゃ。大御所のわしが決める」

実条の骨折りにより、公家の名門鷹司家から孝子姫を迎える──江戸城に戻った家光は、縁組みの話を知っていたのかとおふくを問いただします。家光は紫のこともあり、御台所を迎えるつもりはないのです。呼び止めるおふくに家光は、正勝を常陸5,000石に加増し老職に取り立てると伝えます。「正勝にはよう仕えてもろうた。わしが将軍になってできるのは、それぐらいなことよ」

お江与は秀忠に、忠長の室に織田信良の娘をと進言します。かつて天下統一した織田家が忘れられているような気がしてならないのです。秀忠はこれまでお江与の進言を何ひとつ叶えてやれなかったと、今回はお江与の進言を約束します。秀忠は、忠長に駿府城主とすることも考えていて、家光─忠長による江戸・駿府体制を固めていってもらいたいとも思っているのです。

11月7日、忠長は織田信良の娘を娶り、暮れに家光の正室として鷹司孝子が京から江戸へ下向することが決まります。そんな折、家光は政務は取れず、妻も自由に選べないなど何もかも秀忠の言いなりになっている反発心から、おふくが止めるのも聞かずに鷹狩りと称して稲葉屋敷に赴き、昼間から酒をあおります。

正勝は、秀忠も長年家康の元でそうだったと家光をなだめます。松平信綱は正室は所詮飾り物であり、好きな女を側室にと勧めますが、紫の一件があってから、側女は持たないと家光は心に誓っているのです。家光は遊芸一座を呼び、憂さ晴らしに一緒に歌舞音曲を楽しみます。正勝は遊芸の女たちに、この屋敷に呼ばれたことを他言しないよう言うのを忘れません。

秀忠の考えでは、将軍家では力の不均衡を生むため諸大名から正室を嫁がせられないわけですが、朝廷から嫁がせたとしても飾り物にしておけばいいというものです。世継ぎは側室に産ませればいいわけで、「女子の腹は借り物」と言われたおふくはムッとしますが、正室が江戸城に留まるよう心を配るのも、側室に世継ぎを生ませるのもおふくの務めと言われて、おふくはしぶしぶ承諾します。

家光が稲葉屋敷で騒いでいることはすでにおふくの耳に入り、身をもって諫言する覚悟を正勝に迫ります。正勝も家光をたびたび諫めているわけですが、名ばかりの将軍で、しかも将軍という名に縛られて自由にできないことは、家光には耐え難いことだと同情するわけです。ただ正勝の屋敷での不行状なら自分が守ることもできると、おふくには自分に任せておくよう頭を下げます。

 

12月20日、孝子が江戸城西の丸に入ります。しかし家光は孝子の目通りは無用と断り、おふくにたしなめられます。困窮する公家は、姫を送り込んだことで徳川から金がもらえ、“金で買われた”のならば孝子は京へ帰ることもできません。家光はせめて江戸で不自由ない暮らしをさせてやれとおふくに命じます。「じゃが、二度と孝子のことは聞きとうない。言うても無駄じゃ」

孝子の居室に赴いたおふくは、家光の目通りがないことを伝えます。しかし公家に生まれながら部門に嫁ぐのは悲運だと考える孝子は、将軍に会わずに過ごせるならそれもいいと受け入れます。ただ遠方に嫁いできた孝子はおふくを頼るしかなく、おふくは精いっぱい孝子に奉公するつもりと頭を下げますが、孝子の侍女は京のしきたりで暮らすとくぎを刺してきました。

忠長は酒を飲みながら稲葉正利を愚痴を吐きます。将軍の弟がわずか25万石、しかも2万石の大名の妻を娶るとは、将軍とは差がありすぎるというのです。正利はやんわりとたしなめますが、忠長は家光の不行状の噂を知っていて、それが秀忠の耳に入れば将軍の座も危ういとつぶやきます。「そなたとて一大名の家臣で終わるのは口惜しかろう。わしとてそなたを将軍の老職にしてやりたいわ」

12月19日に愛娘の和子が興子内親王を出産し、秀忠は孝子を迎え入れたと同時の慶事に満足でした。しかしおふくには、家光と孝子の板挟みで、その2人への責任と不安が重くのしかかっています。家光が将軍就任を果たした翌年、年号が元和から寛永へと改元されますが、その寛永元(1624)年、おふくにとって気がかりな出来事が起きます。稲葉正成が役目を捨てて糸魚川から江戸に来たのです。

正勝に聞いたおふくは稲葉屋敷に入ります。松平忠直が改易となり、弟忠昌の附家老である正成は、忠昌や家臣に不穏な動きがないかを見張るお役目だったわけですが、その役目に疑問を抱いてイヤになったのです。将軍へのとりなしは無用と正成はおふくと正勝に伝えますが、正成は昔と少しも変わらないとおふくは微笑みます。正成は所領2万石を没収されただけで、正勝の所領の常陸へ隠棲の身となります。

小鳥にエサを与えるたび、家光は幼少期にすずめの巣を取ろうとして忠長の小姓たちと諍いになったことを思い出しています。家光はおふくに守ってもらいここまでこれたと、その礼におふくの父の菩提寺を建ててやれと勧めます。おふくは涙を浮かべて喜びます。その年、おふくは湯島に父斎藤利三・母お安の菩提を弔う天澤寺を建立します。

9月、秀忠は大御所として江戸城西の丸へ、11月には家光が将軍として江戸城本丸へ移ります。孝子も家光とともに本丸に入りますが、両社は未だに顔合わせを果たしていません。家光と孝子の婚儀も行われておらず、おふくの前に大きな壁となって立ちはだかっていました。


元和9(1623)年12月、鷹司孝子が江戸城に輿入れする。

寛永6(1629)年10月10日、おふくが上洛して昇殿し「春日局」名号を賜るまで

あと5年10か月──。

 

原作・脚本:橋田 壽賀子「春日局」
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
大原 麗子 (おふく)
山下 真司 (稲葉正成)
江口 洋介 (徳川家光)
斉藤 隆治 (徳川忠長)
唐沢 寿明 (稲葉正勝)
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中条 きよし (土井利勝)
中田 喜子 (鷹司孝子)
橋爪 淳 (三条西実条)
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中村 雅俊 (徳川秀忠)
長山 藍子 (お江与)
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制作:澁谷 康生
演出:兼歳 正英

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『春日局』
第37回「先立つ妻に」

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