大河ドラマ光る君へ・(38)まぶしき闇 ~呪詛に揺れる宮中まひろは~
「光る君の物語、読みました」と清少納言は藤式部に伝えます。一瞬身構える式部ですが、引き込まれましたァ~! と少納言は笑みを浮かべます。あんなことを考えていたとは根が暗い、と式部のことをしっかり落としますが、作風は評価しています。ききょうのような女子が藤壺にいたら楽しいのに、とつぶやく式部に、少納言は真顔になり「それはお断りいたします」ときっぱりと返事します。
皇后定子の娘・脩子(ながこ)内親王に仕える少納言は、定子のともし火を守り続けることに命を懸けています。少納言は式部に、なぜ源氏の物語を書いたのか尋ねます。道長に頼まれたのかと少納言はギロリと式部を睨みつけます。帝の心から『枕草子』を消してくれと…… 亡き定子の輝きをないものとするため? 「私は腹を立てておりますのよ、まひろさまに! 源氏の物語を恨んでおりますの」
寛弘6(1009)年。敦康親王は、中宮彰子が産んだ敦成(あつひら)親王に鈴を鳴らしてあやし、その様子を嬉しそうに眺める彰子です。そこに藤原行成が訪問し、敦康親王の元服について藤原道長に相談したいと彰子に許可を求めます。敦康親王は藤壺を出ていかなければならなくなるから元服したくないと言い出しますが、彰子は敦康親王の元服姿を見たいと諭し、ニッコリ微笑みます。
夕刻、道長のところに百舌彦が1枚の紙を持って来ました。敦成親王の寝所の縁の下で見つけたとのことで、それは敦成親王を呪詛するものだと、道長は気づきます。道長に呼び出された行成は驚愕し、すぐに調べると出ていきます。行成の調べにより、円能という僧が浮かび上がってきた。
さっそく円能を捕縛し、水を浴びせて追及します。どうやら敦成親王のみならず、彰子と道長にもこのような紙を置いて呪詛していたようです。捕らえられた円能は厳しい尋問により、呪詛の依頼者は伊周の縁者であり、伊周と敵対する者を排除する目的であると証言した。
陣定(じんのさだめ)が開かれ、道長は公卿たちに意見を求めます。呪詛した者は死罪が相当ではあるが、明法博士(みょうぼうはかせ)に調べさせるべきと行成は主張し、大方の公卿たちはそれに同意見です。一方、伊周については位が上だからか、みな口をつぐんで何も答えようとしません。
明法博士の勘申(かんじん)によれば、“呪詛の首謀者と実行者は律の規定により死罪”とあり、それを聞いた一条天皇は愕然としますが、道長は官位はく奪が相当、伊周は(呪詛には関わりないものの)参内停止にしたいと帝に進言します。道長自身が呪詛されていたのに寛大な処分を求めたのは、厳しい処分をすることでこれ以上恨みを買うようなことは避けたいという、道長の思惑があるわけです。
伊周はどうして自分を苦しめるのか……。帝の心は憂鬱です。今のところ彰子の身にも敦成親王の身にも何ごとも変化がありませんが、敦成親王が生まれた今、敦康親王が邪魔になっていると考える者がいるのも事実です。彰子は敦康親王への思いは変わらないと帝に告げ、帝は彰子を愛おしく抱き寄せます。
満月を見上げる式部に宮の宣旨が近づいてきます。藤壺に仕える理由をもっともらしく答える式部に、宮の宣旨は暮らしのためにここで物語を書いているのだと思った、とほほ笑みます。式部がいろいろ思い悩んでいるのを察知し、娘・賢子ともうまくいっていないと言い当てた宮の宣旨は、式部を見つめます。「夫婦であっても親子であっても、まことに分かりあうことはできぬのではなかろうか」
伊周の屋敷に隆家が駆けつけると、伊周は狂ったかのように呪詛し続けていました。隆家が咎めてやめさせようとしますが、怨念にとらわれたような表情で呪詛をやめません。唱えながら木札を噛みちぎり、隆家を唖然とさせます。
道長は藤原頼通を呼び、敦成親王を次の東宮にすること、一刻も早く即位いただくこと、と確認します。支える者がしっかりしていれば帝は誰でもいいわけですが、帝の心を揺さぶる輩が出てくると朝廷は混乱してしまいます。「いかなる時も我々を信頼してくださる帝、それは敦成さまだ。家の繁栄のためではないぞ。揺るぎなき力を持って民のために良き政を行うことだ」
3月4日には臨時の除目が行われ、実資は大納言に、公任と斉信は権大納言に、行成は権中納言となった。全て道長の思いを反映した人事だった。すでに権中納言であった俊賢を加え、これが後世にいうところの、一条朝の四納言(しなごん)となる。頼通もこの時、わずか19歳にして権中納言となった。
この時の除目で藤原為時は左小弁(さしょうべん)に任官することになり、その書状を小さい観音像の前に置いて手を合わせます。為時にとっては8年ぶりのことであり、越前守を勤め上げて以来となります。物語を生み出したまひろの働きによって得たと思われる任官に、賢子は道長とまひろがどういう知り合いなのか疑問に感じます。
道長は源 倫子に、頼通の婿入り先として村上天皇の第7皇子である具平(ともひら)親王の一の姫・隆姫女王を提案します。倫子に異存がなければ話を進めるつもりですが、倫子は自分より頼通の気持ちを聞いてやってほしいと思いやります。倫子は道長の肩に頭を乗せ、身体を寄せ合います。「子どもたちのお相手を早めに決めて、そのあとは殿とゆっくり過ごしとうございます。二人っきりで」
宿命、密通、不義、幸 不幸、出家──。これらのテーマを見つめて考えに耽る式部のところに道長が訪ねてきました。自分の娘が11歳になり、間もなく裳着の儀となるため、式部は道長から何か1ついただきたいと言い出します。道長は、裳着が済んだら賢子も藤壺に呼んだらどうだと提案します。「さぞかし聡明であろう。人気の女房になるやもしれぬ。亡き定子さまの登華殿のように」
藤壺の人気者になりそうな人気者ならと式部に推薦されたあかねは、藤壺に上がって和泉式部と命名されますが、別れた夫の官職はイヤだと言って、自分で「宮式部」と名乗ります。亡き思い人が親王だったからですが、宮の宣旨はそれをはねつけ、和泉式部と名乗るよう命じます。ほかの女房たちには、才があるのを2人でひけらかすのだと、さっそく陰口をたたかれます。
和泉式部は亡き敦道親王との思い出をつづったらしく、藤式部に披露します。書くことで己の悲しみを救う──。藤式部のあの言葉がなければ、死んでいたかもしれないと和泉式部は微笑みます。「これを書いているうちに、まだ生きていたいと思うようになりました。書くことで命が再び息づいてまいったのです」
藤壺の庭では貝合わせが行われ、公卿たちや女房たちが楽しんでいます。たくさんの貝からペアを探すのは至難の業で、和泉式部のところに回ってきますが、和泉式部は隣に座る頼通の耳元でそっと「お先に」とつぶやき、頼通は見事に貝合わせを成功させます。藤の花が舞い散り、そのころ藤式部は物語をせっせと執筆しています。
藤壺で、道長は敦成親王を抱き上げてあやしていますが、彰子に甘える敦康親王の姿が目に入ります。道長は行成に、敦康親王の元服の日取りを陰陽寮に決めさせるよう命じます。
その年の6月、頼通と隆姫女王の結婚が決まり、続いて中宮彰子の懐妊が明らかになった。そして道長は、敦康親王元服の日取りを告げた。懐妊した彰子の身を気遣って、敦康親王は帝に元服の延期を願い出るつもりですが、元服してからも藤壺に来ていいと彰子に諭され、しぶしぶ承諾する敦康親王です。
2度目の出産を控え、彰子は土御門殿に下がった。帝は道長に、中宮が出産するまで敦康親王の元服を延期するよう命じます。儀式に向けてことは進めているし、出産も元服も無事に済むようにしていると道長は抗いますが、帝は「これは朕の願いである」と聞きません。承諾する道長は、元服後の親王の在所について任せるよう進言します。
藤壺にボヤがあり、一時的に敦康親王は伊周の屋敷に移った。しかし伊周は、日夜続く呪詛のためによろよろと足元がおぼつかなく、せきこんでしまいます。敦康親王は、最近の道長は自分を邪魔にしていると訴えます。敦康は私が守ると宣言する伊周ですが、藤原道雅が気になることを言いだします。「藤壺の火事とて、誰の仕業か分かりませぬな」
伊周は道長のところに赴き、敦康親王を帝から引き離すのをやめてもらいたいと談判します。先例からいっても、次の東宮は帝の第一皇子である敦康親王であるべきで、帝の意志を踏みにじらないでほしいと伊周は頭を下げます。道長は帝の意志で許されたのに、参内しなかった理由を問います。「お前の……せいだ……何もかもお前のせいだ!」
道長は立ち上がり、今後伊周が政に関わることはない、と宣告します。伊周は呪詛のことばをつぶやきながら、呪いの紙を無数にばらまきます。両腕を掴まれて連れていかれる間も紙をばらまき、狂喜して笑いながら下がっていきます。その様子を対岸から見ていた藤式部と、その視線に気づいた道長。ふたりの間の、近くも遠い距離です。
作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ/藤式部)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
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塩野 瑛久 (一条天皇)
見上 愛 (藤原彰子)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
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岸谷 五朗 (藤原為時)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:葛西 勇也・高橋 優香子
演出:黛 りんたろう
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『光る君へ』
第39回「とだえぬ絆」
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