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2024年10月28日 (月)

プレイバック炎 立つ・第三部 黄金楽土 (26)秀衡動かず

【アヴァン・タイトル】

治承4(1180)年、源 頼朝は挙兵した。頼朝の挙兵を契機に、全国に散っていた源氏の一党も次々に決起していった。頼朝は、平泉の義経の参戦とともに藤原氏の兵力をも当てにしていた。一方、反平氏勢力の蜂起を密かに促していた後白河法皇は、平氏政権の弱体化を目論み、この源氏勢の一斉決起を利用し自らの権勢回復を期待していた。

しかし頼朝の傘下に入るのを嫌った秀衡は、義経の参戦と兵の出動を許さなかった。それは頼朝の動向をけん制すると同時に、義経という手駒を失うことを避けるためでもあった。平泉にとっても世の動きに無縁ではいられなかったのである──。


源 頼朝の元に駆けつけたいと、源 義経は藤原秀衡に訴えます。しかし秀衡は、兄が立ち上がったならすぐにでも駆けつけたい弟の気持ちを理解しつつ、義経の身柄を預かる身として、秀衡は義経を断じて外には出せないわけです。逸ってはならぬ、敗戦を喫した頼朝の器量がどれほどのものかが判明するまで時を待てと義経を説得します。

いよいよ義経が平泉から出ていくかもしれず、せいせいしていると薫子は泰衡に当たります。これまではそう思っていた泰衡ですが、いざ義経が離れると考えると胸苦しい思いです。よくよく考えれば義経は不憫な男で、苔丸のような幼子の心を持つと泰衡には写っています。「女子の情に絡まれて決意を変えるような男ではない」

義経と秀衡のにらみ合いの場に、藤原国衡が入ってきました。義経が挙兵するなら自分も出陣して腕を試したいと訴えます。だまれ! と国衡を叱責した秀衡は、一兵たりとも陸奥から出さぬと言い放ちます。いま国衡に兵を預ければ頼朝に味方したと見られ、平家・後白河法皇との三つ巴の中で、義経には兵をつけてやりたいものの、源氏に兵をつけるわけにはいかないのです。

義経が初めて秀衡と会ったとき、亡き父のようだと言ってくれました。嬉しく感じた秀衡はこの6年間、義経を我が子のように思ってきました。それでも駆けつけるのであればその絆を断ち切り、武蔵坊弁慶だけを従えて頼朝の元に行けと秀衡は義経を突き放します。「わしもそなたのことを諦めよう。構わぬ、そうなされい」

頼朝の他に木曽義仲も挙兵し、平家はしばらく鎮圧に忙しいことになりますが、奥州には義経がいる以上、平 清盛は秀衡に援軍の要請は出せないと思われます。そういう意味でも秀衡は義経を平泉に留めておきたいわけですが、一度は出陣を諦めた義経が、頼朝からの直々の書状をもらい、単独で安房に向かうと翻意します。

藤原基成が義経の説得に当たっている横で、泰衡は義経に300騎つけるよう秀衡に進言します。後三年合戦の際に源 義家が清原相手に苦戦していた時、弟の源 義光が官職を捨てて京から300騎を率いて駆けつけ、数は少なくても力強い援軍だと義家が気持ちを強くした故事もあり、故事を尊ぶ頼朝は納得すると思われます。亜古耶は泰衡に言われて、父・鬼丸が打った舞草刀を義経に餞別として贈ります。

 

頼朝は上総国司の館で、東 胤頼(とう・たねより)が下総目代を攻め滅ぼしただけでなく、千葉荘を急襲した下総の千田判官代・藤原親政を千葉常胤・胤頼親子が生け捕りにしたという報告を受けます。千葉親子や甲斐源氏の武田、常陸・上野・下野の豪族たちもこぞって頼朝に加勢すべく動き始めています。それら25,000に奥州から5,000の大軍で義経が駆けつければ……と頼朝は期待します。

しかし実際には、義経と弁慶は無勢で坂東に向かっていました。泰衡と国衡が2人を見送りに出ます。義経がこれまでの礼を言い、背を向けて出発したその時、秀衡が早駆けで追いかけてきました。この者たちをそなたに遣わす! と、佐藤継信と忠信兄弟を義経に与えます。義経は涙を流して秀衡の心遣いに感謝し、出立します。「まこと不憫じゃ。せめて300の兵を……。じゃが300となるともはや軍勢」

そのころ館では倫子が、この6年間で義経にひっかき回された平泉も元通りになると満足げです。しかし薫子は義経がいなくなって、柱に寄りかかって放心状態です。倫子は、もし義経がいなければ薫子はとっくに誰かに嫁いでいたものをと、これから婿探しをせねばとはりきっていますが、薫子の耳にはその言葉は届きません。

 

その年の10月、頼朝は父義朝ゆかりの鎌倉に本拠を据えます。10月20日には30万の軍勢を率いて富士川の合戦に備えます。馬で川を渡る音に驚いた水鳥が多数羽ばたき、その羽音に対岸の平家軍は敵襲と勘違いし、源氏軍に取り囲まれる前にと慌てて京へ引き返していきます。

黄瀬川に置いた頼朝の陣屋に、義経主従が到着しました。安達盛長は、軍勢を率いての来訪ではなくたった4名で駆けつけたと聞いて、九郎義経であるか疑いながら取り次ぎをします。頼朝は義経が身一つで来たことにも驚きますが、20万も30万も擁する秀衡が義経に兵をつけなかったことに怒りを覚えます。「何たる仕打ちぞ。わしが挙兵したことを秀衡は知って知らぬふりを装おうというのか!」

結局義経は夜まで門前で待たされ、かがり火の焚かれる中、義経だけが陣屋の中に案内されます。中では頼朝と、彼に従う豪族たちが居並んで宴が催されていました。呼び込まれた義経は、秀衡に止められて富士川の合戦に1日間に合わなかったことを悔やみますが、清盛の首を挙げたい気持ちは頼朝たちと同じです。

疑わしく義経を見ていた頼朝は、義経を近くに呼び寄せます。後三年合戦の時代、曾祖父源 義家が清原一族と戦ったとき、源 義光が官職を投げうって陸奥まで駆けつけたことを持ち出し、故事に照らし合わせてもめでたいことだと涙を流します。手と手を取り合う頼朝と義経の姿を見て、家臣や豪族たちは涙をぬぐいます。

宴はこのまま進み、盛長は兄弟の感動的再会で豪族たちの結束はより固まったと笑顔ですが、頼朝は秀衡に対して、義光の故事をも知らぬ不調法者! と怒りは収まりません。せめて故事のように300の兵をつけてよこせばいいものを、と怒りはいつしか恨みに変わりつつあります。泰衡の言った通りになりましたが、秀衡も泣く泣くという点で仕方なかったことかもしれません。

 

泰衡の義父・鬼丸は、鍛治師をやめてしまいました。刀の注文が少なくなったこともありますが、武者は刀の扱い方を知らず、飾り物としてしまっていて、それに飽き飽きしてしまったのです。庭番でも武器庫の番人でも使ってくれと頭を下げる鬼丸に、泰衡はやはり舞草刀を作り出してほしいと諭します。80年にわたる陸奥の平穏の時代は終わり、強靭な陸奥にするために、その誇りとして舞草刀が必要なのです。

治承4(1180)年6月、清盛は安徳天皇と後白河法皇を奉じて福原遷都を行ったことで、都が移って京にあった貴族たちの屋敷は荒廃し、盗賊たちが盗んだ高貴な品々を持って、陸奥に滞在する橘似のところに持ち込む、跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)状態となっていました。橘似は盗賊の頭と話をつけるしかないと、しぶしぶその盗品を買い取ることにします。

福原の仮御所では、法皇が『梁塵秘抄』を編集しています。今様や長歌などまだまだ付け加えることがあるわけです。そんな法皇に、清盛が秀衡に、頼朝討伐の親書を送ったと知らせが入ります。先ほどまで満面の笑みを浮かべていた法皇は、それが真実なら由々しきことだと眉間にしわを寄せます。

平泉が義経を出した途端に、頼朝討伐の親書が清盛から送られてくる。やはり義経を出すべきではなかったと基成は後悔します。平泉がいま軍勢を出せば義経と戦うことになるわけで、清盛は自分にそれができると思っているのかと秀衡は不満顔です。基成は、そこまで秀衡が義経に肩入れしているとは思っていなかったようで、驚きます。

薫子の放心状態はまだ続いています。義経主従が鎌倉にいることは分かっているのだから、橘似は弁慶に文を書こうと考えているわけですが、それを聞いた亜古耶は薫子に、義経に文を書くよう勧めます。しかし薫子は無反応で、その様子を見て橘似と亜古耶はとても心配しています。

橘似から清盛からの親書の件を聞いた泰衡も加わり、話し合いがもたれます。法皇から平家を討てとの要請も無視した秀衡が、清盛から頼朝を討てという要請に従えるわけがありません。泰衡は、すぐに返事を出すよう秀衡に求めますが、秀衡は“秀衡軍は平泉を出た” “白河の関を越えた”と橘似に噂を流させ、頼朝を鎌倉から動けないようにしたいと考えています。

「逆でござる!」と泰衡は声を荒げます。秀衡がやろうとしていることは、頼朝の鎌倉での地固めを後押しするだけと主張するのです。秀衡は、法皇・平家・頼朝の三者を動けない状態にしておくことが肝要と考えていて、秀衡と泰衡の考えは真っ向から衝突します。「手前は手前なりに平泉の将来を……。手前の意見なんぞ聞きたくないと仰せられるならば、お辞めにならなければよい!」

泰衡は、この時節に都に向かうと決意を固めて秀衡のところを飛び出します。藤原基顕は泰衡をなだめますが、平泉に縛り付けられて世間知らずの扱いを受け、もうたくさんだという思いが泰衡の中にあったのです。都を見ておかねば話にならない。そう訴える泰衡に、基顕は一緒に都に行こうと賛同します。奥州平泉は何ができるか? どこへ向かえばいいか? 今こそ都へ行くべきなのです。


脚本:中島 丈博
高橋 克彦 作 「炎立つ」より
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
渡辺 謙 (藤原泰衡)
野村 宏伸 (源 義経(九郎))
時任 三郎 (弁慶)
中嶋 朋子 (薫子)
三浦 浩一 (藤原国衡)
中川 安奈 (亜古耶)
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紺野 美沙子 (橘似)
浅利 香津代 (栂の前)
本郷 功次郎 (北条時政)
中原 丈雄 (藤原基顕)
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長塚 京三 (源 頼朝)
真野 響子 (倫子)
中尾 彬 (後白河法皇)
林 隆三 (藤原基成)
渡瀬 恒彦 (藤原秀衡)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:村山 昭紀
    :NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:門脇 正美

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第27回「泰衡、京へ」

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