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2024年11月11日 (月)

プレイバック炎 立つ・第三部 黄金楽土 (29)兄弟の宿命(さだめ)

【アヴァン・タイトル】

朝廷、平家、そして鎌倉の頼朝。藤原秀衡は、三つ巴のどの勢力にも与(くみ)せず、距離を置いた関係を続けていた。しかしその三者の勢力均衡が、いま大きく揺らぎ始めた。木曽冠者・源 義仲の出現である。彼は従兄・頼朝の旗揚げに呼応して兵を挙げ、瞬く間に北陸を制覇した。その怒涛の進撃は各地で平家軍を討ち破り、義仲はいま都の目前にまで迫っていた。

三者の均衡が傾き始めたことは、平泉の中立外交に深刻な影を落としてきた。各勢力の熾烈な闘争は、度重なる出兵要請をはじめ、独立を目指す奥州を否応なく時勢の波に飲み込んでゆく──。


寿永2(1183)年5月に倶利伽羅峠で木曽義仲軍に敗れた平家は、7月25日、一門の住む屋敷を焼き払い、幼帝安徳天皇と建礼門院徳子を擁して福原へ。そして入れ替わるように木曽軍が入京を果たします。

相模の武者・藤巻光能が平泉館を訪ねます。頼朝の旗揚げに参加したものの、近ごろの世の騒乱を考えるに、坂東を捨てて奥州で戦いたいと配下への組み入れを求めてきたのです。藤原国衡は参入を勧めますが、裏切りを聞いた頼朝と平泉が緊張関係に陥るからと藤原泰衡は断ります。光能は生きて鎌倉には帰れないと刀を振り上げて秀衡に襲い掛かり、泰衡に斬り捨てられます。

後白河法皇は義仲に平家追討を命じますが、義仲軍は入京すると兵糧などすさまじい略奪を始め、都の女たちを襲います。飢饉の最中であり、兵たちも止む無くという事情はあるものの、公卿たちはその悪行にすっかり愛想を尽かしてしまいます。困った法皇は頼朝にしきりに上洛を促します。

義仲を喜んで都に迎え入れたのは法皇なのに、どうして鎌倉にばかり義仲征伐を押し付けるのだ、虫が良すぎるではないかと頼朝は立腹します。平泉に命じればいいものを、と頼朝は考えていますが、ここは法皇の命令を断るために、いま鎌倉を空ければ奥州の秀衡や常陸の佐竹に留守を狙われるという理由をひらめきます。「まことにこれほどまでに真っ当な理由があろうか。平泉は鎌倉にとって鬼門よ」

平泉の加羅御所には出産したばかりの薫子が赤子を連れて帰ってきていました。暮らし向きはとても裕福というわけではないにせよ、夫である河田次郎守継やその父らにもよくしてもらい、とても過ごしやすそうです。そんな妹に泰衡は安堵しながら、秀衡のもとに赴きます。その後ろ姿に、薫子は颯爽さを感じます。やはり都に行ったのが泰衡をそうさせているのかもしれません。

法皇から秀衡に対し、頼朝追討の院宣が出されます。それは義仲と手を組めということになり、国衡はこれに同意します。しかし頼朝相手では大きな戦さになってしまうし、西国にいる平家が勢力を盛り返せば、平泉はとんだ戦に巻き込まれてしまうことになってしまいます。泰衡はあまり乗り気ではありません。秀衡も藤原基成も、使者の表情からなんとなく事情を察します。

基成は使者に酒を呑ませ、この院宣が法皇自ら出したものではなく、頼朝を潰したいために法皇に無理やり書かせたものだと聞き出します。礼儀作法もわきまえない木曽の山猿は、気に入らなければ何をしでかすか分からないわけで、使者は適当な返事でいいと言い出します。「内裏は義仲にひっかき回されておりまする。安徳天皇後の皇位にまで口を出す始末で」

 

京で孤立しかけていた義仲の最後の手段として、11月19日に法皇の法住寺殿を襲撃した義仲は、法皇を幽閉してしまいます。その後の報告で、法住寺殿は半焼け、木曽の大軍に蹴散らされ、六条河原にかけられた首の数は630余りとのことです。法皇の怒りはなかなか腰を上げない頼朝に向かいます。せっかく官位を元に戻してあげたのに、動かなければそれを剥奪すると怒り心頭です。

2か月後の寿永3(1184)年1月、頼朝はついに軍勢を西に向けます。本隊は近江路から琵琶湖畔の瀬田に到着、義経軍は伊勢から宇治川へ進軍中です。宇治川で義経軍に撃退された義仲軍はわずかな兵で敗走し、近江粟津でついに討たれます。このままでは頼朝は引くわけがなく、何が何でも法皇から平家追討の院宣を引きずり出し、平家を追い詰めていくだろうと秀衡は予測します。

2月7日には平家の堅固な一ノ谷の陣を、義経は背後の鵯越えから攻める奇襲作戦を実行し、思わぬ敵に平家軍は総崩れとなります。しかし橘似のところに現れた弁慶は、浮かない表情です。平家を追い落としたというのに、頼朝の評価が全くなされず、戦とはかかわりのない源氏武者だけが次々と任官されていっているのです。もしかしたら讒言者の存在がそうさせているのかもしれません。

その義経は、京の院の御所にいました。法皇から盃をいただいた義経は、大きな盃というのにググッと一気に飲み干します。法皇の近臣たちは、義仲のような粗暴な武者を想像していただけに、見るからに華奢で雅な姿に評判もおのずと上がります。清盛亡き後、平 宗盛を仇としてとことん戦うと言う義経に、近臣たちは酒をどんどん勧めます。

法皇は、自分に言いたいことはないかと義経を見据えます。義経は「悔しい」とつぶやきます。鎌倉のため、頼朝のために命を懸けて戦ったというのに……と涙を流します。泣き上戸だの、と法皇は笑いますが、立ち上がった義経は、「俺の武功をかすめ取ったのは誰だ! あの鵯越えの逆落とし、俺が致さねば誰が……!」と大声で喚き散らしバタッと倒れます。連れ出された義経を見て、法皇は苦々しい表情です。「他愛のない奴じゃの。戦巧者かもしれぬが、まだ育ちきっておらぬところがあるようじゃ」

法皇から検非違使判官、左衛門少尉という武官としては相当な官位をもらったと、頼朝は義経からの文で知ります。勝手に任官してはならないと言っておいたはずなのにと頼朝は激怒します。法皇のえさにまんまと引っ掛かりおって、愚かなやつだと頼朝は吐き捨てます。頼朝は平家追討軍から義経を外しますが、難渋を極め、義経に再び出陣を命じざるを得ませんでした。

 

元暦2(1185)年2月19日、義経は再びの奇襲で屋島の平家軍を海上に追いやり、瀬戸内海を西へと軍を進めます。潮の流れによって一気に決着をつけようとした平家軍に対し、潮流の変化を巧みに読んだ義経が逆襲し、混乱する平家水軍を討ち破ります。3月24日、平家は壇ノ浦においてついに滅亡しました。義経の功績は誰の目にも明らかでした。

鵯越えといい壇ノ浦といい、すべて自分と平泉で鍛錬したたまものだと国衡は胸を張りますが、そんな義経を平泉から出してしまったのは大きな損失だったと後悔しきりです。義経を抱えていればこの陸奥は戦に巻き込まれると泰衡は反論しますが、国衡は「負け犬め!」と吐き捨てて出て行ってしまいます。

この陸奥を戦から守るたった1つの方法は、相手の文化を認めること、相手に己(おの)が文化を認めさせること──。秀衡は腕を組みつぶやきます。東大寺大仏復興のために平泉が5,000両、鎌倉が1,000両の寄付をしたところを見ると、仏を尊ぶ者同士が手を携える時もくるかもしれません。しかし基成は、鎌倉は頼朝と義経、平泉は泰衡と国衡という“兄弟仲”が当面の問題と考えています。

 

京から鎌倉に戻ろうとした義経主従ですが、頼朝に許されず腰越駅で留め置かれます。「義経、犯すことなくして咎を被り、功ありて誤りなしと言えどご勘気を被るの間……」と、頼朝の勘気を解こうとして義経は弁明の書状をしたためます。世にいう「腰越状」です。

頼朝の返事は、捕虜となっている平 重衡を南都の寺に引き渡し、宗盛父子は京の近くで処分するように、とのことでした。義経はあまりに冷酷な返事に、膝から崩れ落ちます。返事を伝えに来た北条時政は、そんな義経の心情など全く考えず、早く処分するように促します。「もはやこれまでよ。こっちから縁を切ってやる! 法皇から頼朝追討の院宣をいただき、鎌倉を滅ぼしてやる!」

義経は京に引き返し、頼朝は義経の所領を没収します。兄弟の亀裂は決定的となります。

さて平泉の兄弟は……。国衡は義経と連携せよと提案します。義経は頼朝と敵対している今、平泉が義経に接近するほど危険だと泰衡は反論しますが、国衡に言わせればそこがねらい目で、平泉が義経と連携すれば頼朝をけん制することになるわけです。泰衡は、義経が戦巧者ながら、見えない駆け引きでは赤子のようなものだと言い、国衡と殴り合いの大喧嘩になります。

泰衡と国衡の果たし合い──。秀衡は、二人とも安倍の血が流れていると、果たし合いを見届けることにします。国衡に抑え込まれた泰衡は、防戦するので精一杯です。


脚本:中島 丈博
高橋 克彦 作 「炎立つ」より
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
渡辺 謙 (藤原泰衡)
野村 宏伸 (源 義経(九郎))
時任 三郎 (弁慶)
中嶋 朋子 (薫子)
三浦 浩一 (藤原国衡)
中川 安奈 (亜古耶)
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紺野 美沙子 (橘似)
本郷 功次郎 (北条時政)
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長塚 京三 (源 頼朝)
中尾 彬 (後白河法皇)
林 隆三 (藤原基成)
渡瀬 恒彦 (藤原秀衡)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:村山 昭紀
    :NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:吉川 邦夫

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第30回「義経追討」

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