プレイバック炎 立つ・第三部 黄金楽土 (31)約束の剣
【アヴァン・タイトル】
源 義経追討の宣旨が後白河法皇より鎌倉の頼朝の元に届いた。頼朝は行方知れずとなった義経の行き先を平泉と読み、そこで奥州を孤立させる作戦に出た。一方秀衡は、断固として鎌倉と対峙する姿勢を摂ろうとしたが、泰衡の意見により頼朝が押し付けてきた条項を呑む。それは平泉を戦火に巻き込まないための選択であった。
そのころ都落ちしていた義経・弁慶の一行は、数々の受難に遭いながら平泉を目指していた。しかし今ここで義経を受け入れることは、奥州の立場を危うくすることになる。泰衡は決死の覚悟で義経の平泉入りを阻止せねばならなかった──。
文治2(1186)年12月、義経入りを直前に控えて平泉の緊張は頂点に達していました。藤原泰衡はあくまでも義経は入れないと主張します。どうしても入りたければ血を見ずには済まないと言い、平和を唱える泰衡が義経を殺すとはと藤原秀衡と国衡の反発を食らいます。秀衡は自分が栗原寺に行くと言い出します。栗原寺には義経主従がいるのです。
倫子はわざわざ秀衡が出向くことはないと嫌な顔を見せますが、義経の行動如何で平泉の存亡にかかわるだけに、他の者に任せておけないと自ら動く決断をしたわけです。以前の食客時にもさんざんにひっかき回されて、倫子はもうこりごりですが、ここは平泉には一歩たりとも踏み込まないようにと説得するしかないと秀衡も考えているようで、倫子は不安を抱えながら秀衡を見送ります。
藤原基成も義経入りには反対で、捕らえて頼朝に引き渡すしかないと言うし、これまでの義経の戦功を聞いてもどこか別人の話をしているような気持ちになっている薫子は、今の平泉の情勢では平泉入りは無理だと説明する亜古耶の意見に同意です。「そうね、その方がよい。来られぬ方が……いえ、今さら来られては困りまする」
栗原寺で秀衡と再会した義経は、平泉に来てしまった迷惑を詫びます。ことここに至っては秀衡の命じるままに行動する覚悟の義経ですが、もし平泉が頼朝と一戦交えるのなら全力で戦うと告げます。秀衡自身、義経の父親のつもりでいますが、平泉の父でもあります。『泣いて馬謖を斬る』の例えもあり……。その時、臨月を迎えていた義経の妻が産気づき、無事に子どもを出産します。
朝を迎え、忠衡のみが館に戻って来ました。秀衡は義経を受け入れる──と忠衡には読めたようで、それを国衡に伝えます。義経の妻の産後の肥立ちを見るためにしばらくは栗原寺に留まらせ、その後受け入れるだろうと笑顔を見せる忠衡に、国衡は「そうか! そうこなくちゃ!」とうれしそうな表情です。
藤原基成は秀衡と無量光院で対面し、自分のしたことが分かっているのかと咎めます。いま義経を受け入れても、いずれは首を刎ねるか引き渡すかしなければならないのです。できるだけ多くの民を極楽浄土に連れていきたいと願う秀衡は、生まれたばかりの赤子を目の前にすれば、その父を殺すなどはできなかったわけです。
倫子は、秀衡の情け深さを理解しつつ、このことで再び泰衡と仲たがいをしないか心配です。相談すれば面倒になると考える泰衡は、秀衡に無断で義経と話をしに栗原寺へ向かいます。それに同行する予定で姿を見せない河田次郎ですが、薫子からの無理な願い事を聞くか否かで動けずにいました。「わしを苦しめないでくれ……薫子……」
泰衡が栗原寺に到着すると、赤子誕生の宴が催されていました。そこには食べ物と酒を持って駆けつけた栂の前の姿もあり、弁慶から酒を勧められますが、鎌倉からの追っ手がきているかもしれない状況で酒など飲めないと、泰衡はかたくなに断ります。
泰衡と対面した義経は、平泉には戻らないという決意の証として所望した泰衡の腰刀を、大切に所有していました。この太刀に誓ったことも当然忘れていないわけで、秀衡と泰衡に会えたことを冥途の土産に命を絶とうとしますが、泰衡は力づくでそれを止めます。二人がもみ合っている時に刺客が襲撃し、泰衡は駆けつけた弁慶とともに防戦しますが、義経の姿が見えなくなってしまいました。
襲撃したのは次郎の手の者で、薫子の無理な願い事とはこのことでした。義経は次郎の乗る馬に乗せられ河田館に向かいます。門前まで連れてこられて義経が戸惑っていると、薫子が館から出てきました。久しぶりに再会する元恋人の二人……見つめ合うふたりの姿から目を背ける次郎です。薫子は館の中に義経を引き入れます。
夜から降り始めた雪は、朝を迎えても止みそうにありません。そして義経の姿も見つからず、弁慶を始め藤原家家臣たち総出で捜索していますが、泰衡には焦りの色が見え始めていました。国衡の策略かもしれないと、泰衡は何もかも事情を知っている次郎に、そうとは知らずに国衡の様子を探らせます。
頼朝は義経に協力的だった公卿の職を解き、義経をかくまった南都の僧らを処罰します。僧・聖弘得業(しょうこうとくごう)も関東に召喚され、頼朝の尋問を受けます。聖弘は完全に義経の肩を持った弁明をし、頼朝はギロリと睨みつけますが、勝長寿院の供僧職を与えることにします。世間の人々も聖弘のように頼朝と義経のことを見ているかもしれないと考えてのことです。
河田屋敷で秀衡の許しを待つ義経ですが、時がいたずらに過ぎていきます。薫子は時が解決すると義経を諭しますが、その時平泉の館から使者がやって来ます。慌てて義経の姿を隠す次郎と薫子ですが、使者は秀衡が薫子を呼んでいると伝えて出ていきます。
秀衡は“いざという時”が目前に迫っていると考え、正月で帰省する兵たちを帰さず、国衡には戦の準備にかかるよう命じます。そこに現れたのは薫子ではなく義経でした。伏し目がちの義経は、許しを得ぬままの平泉入りを詫びますが、秀衡は笑顔で義経を迎え入れます。「不自由な思いをさせたが、今日からは何の遠慮もいらぬ。この平泉にしっかと根を生やすつもりで生きられい」
秀衡は家臣たちを集め、義経受け入れを表明します。基成は秀衡の決断こそが平泉を滅ぼすと考え直しを迫りますが、秀衡は聞く耳を持ちません。平家・法皇・源氏という三つ巴の均衡が崩れた今、源氏一強とさせないためには平泉の力を強くするしかないのです。秀衡に呼びこまれた義経は、鎧に身を包んで現れます。泰衡は秀衡の決断に呆然とします。
脚本:中島 丈博
高橋 克彦 作 「炎立つ」より
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
渡辺 謙 (藤原泰衡)
野村 宏伸 (源 義経(九郎))
時任 三郎 (弁慶)
中嶋 朋子 (薫子)
三浦 浩一 (藤原国衡)
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浅利 香津代 (栂の前)
中川 安奈 (亜古耶)
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長塚 京三 (源 頼朝)
真野 響子 (倫子)
林 隆三 (藤原基成)
渡瀬 恒彦 (藤原秀衡)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:村山 昭紀
:NHKアート
:NHKテクニカルサービス
演出:三井 智一
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第32回「基成の怒り」
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