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2024年11月17日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(44)望月の夜 ~まひろが聞く道長の栄華の歌~

長和4(1015)年になっても三条天皇の病状は改善しません。正しい判断ができなければ政は滞り、国は乱れると藤原公任は意見します。源 俊賢も公卿全員の願いと進言しますが、帝は藤原道長に厳しく言っておくと返答を避けます。譲位を迫られた三条天皇は、次なる対抗策を打ち出してきた。帝の皇女禔子(やすこ)を藤原頼通の妻にさせたいと言い出したのです。

亡き具平親王の姫・隆姫女王を妻としていても、禔子を嫡妻とすれば喜ばしいとごり押しする帝です。道長は、頼通が断ると分かった上で話を持ち掛けます。源 倫子も心は隆姫に、お務めは禔子にすればいいと賛成しますが、嫌がる頼通は、藤原も左大臣の嫡男であることも捨てて、隆姫を連れて都を出ると座を蹴ります。廊に出た道長の前には、美しいながらも雲がかかる月が映っていました。

彰子は高倉殿を出て、この時期は土御門殿に移っていた。道長に話を聞き、仮に頼通が帝に従ったとしても、禔子内親王が名ばかりの妻となってしまうことに、彰子は一条天皇の名ばかりの中宮になった自らの姿を重ね合わせて心を痛めます。女子を道具のように扱う帝も父も、女子の心を考えたことがあるのかと道長に迫ります。「この婚儀は誰も幸せにせぬと胸を張って断るがよい」

道長に従って帝に入内させられた中宮妍子(きよこ)も、今や酒におぼれる日日を送っています。彰子の言葉に触発されたか、道長は枇杷殿の妍子を訪ねますが、かなり年上の帝に嫁がされた上に、産んだ禎子(よしこ)が皇子でなかったと道長がひどく肩を落としたという話を聞いた妍子には、父道長への信頼は全くありません。唯一の慰めが贅沢と酒しかなく、妍子は道長を追い出します。

帝は禔子を頼通の妻にするよう促しますが、政務多忙で頼通にまだ会えていないと道長は話をはぐらかします。内親王を妻にしたくない者なぞおらぬと思うがの、と帝は吐き捨てるように言います。帝は自分の政の代わりを道長に務めさせるべく、道長を“摂政に准ずる者”として政を委ねることにします。そうすれば帝は譲位せずに済むと考えたわけです。

道長は頼通に対し、禔子を妻に迎えなくてもよいと伝えます。しかし帝に内親王はいらないと答えるわけにもいかず、病になれと助言します。そして教通(のりみち)には、その噂を内裏中に流せと命じます。「兄は命の瀬戸際の病である、と。伊周の怨霊によるものだ。文句を言うな。隆姫を傷つけぬためだと思ってやり抜くのだ」

万策尽きたかと力を落とす帝ですが、道長の言うまま譲位するのではなく、藤原実資は奥の手を出すよう進言します。つまり“東宮に敦明親王を立てるなら譲位しよう”と条件を出すのです。そうか、と明るい表情になった帝は、実資は唯一の忠臣と持ち上げます。

三日月の昇る夜、帝に膝を貸す皇后娍子は「きれいな月でございますよ」と帝に声をかけます。目の見えない帝を憐れんでか、娍子は涙を流します。泣くなと慰める帝ですが、敦明親王が東宮となることだけが明るい望みです。敦明親王を東宮とすることと引き換えに、三条天皇は譲位を承諾した。

 

翌年、大極殿において後一条天皇の即位式が執り行われた。道長は幼い後一条天皇の摂政となって名実ともに国家の頂点に立ち、彰子は国母(こくも)となった。長和5(1016)年。後一条天皇の後ろには皇太后彰子が座し、脇に摂政道長が立っています。そして内庭広場にはたくさんの公卿たちが並んで、その即位を祝います。

土御門殿では、藤原穆子(むつこ)が倫子に肩を抱えられて月を眺めていました。孫の彰子を入内させ、曾孫の敦成親王は帝となり、今でも信じられない心持ちです。やはり道長は大当たりだった──。「私に見る目があったからよ?」と穆子はほほ笑みますが、倫子に促されて休むことにします。

まひろや賢子と夕餉を摂る藤原為時は椀の汁を直衣にこぼしてしまい、老いぼれてしまったと恥ずかしがります。賢子も立派に育ち、まひろも内裏で重んじられ、そろそろ出家しようと思うと言い出します。嫡男の惟規に先立たれ、その菩提を弔いながら過ごすのです。遠くの寺に行くわけではなく、それでは何も変わらないと賢子は考えますが、為時は賢子に女房として内裏に上がることを提案します。

為時は自らを官人には向いていないと考えていて、それだけに官職のない期間が長く、家族に迷惑をかけてきたという思いが強いわけです。しかしまひろから見て、父為時は越前守としての仕事ぶりがとても誠実であり、感じ入るほどの人物です。「長らくご苦労さまでございました」とまひろは為時を労わります。

公卿たちによる帝への奏上にも、摂政道長の助言で帝が返答しますが、その不満は公卿たちの中でくすぶります。道長も出席する陣定で意見を聞き政を行うのは一見筋が通った話ですが、欲張りすぎとも言えます。公任は「内裏の平安を思うなら、左大臣をやめろ」と忠告します。先帝に対し譲位を促した道長でしたが、今度は自分が辞めろと言われる番なのか、と落胆します。

 

土御門殿で執筆をつづける藤式部のもとを訪ねた道長は、摂政と左大臣を辞すると言い出します。道長が摂政をやっていては世の中は何も変わらないと思ったのです。摂政を頼通に継がせるつもりと聞き、藤式部は道長自身の民を思いやる心は伝わっているのかと問いかけます。藤式部がつづる物語でさえ、書き手の思いが読み手に伝わりにくく感じることが多々あるのです。

思いを伝えて何になる、と道長には疑問ですが、道長が光る君の物語を藤式部に書かせたことで、皇太后彰子は自分を見つけたわけです。道長の気持ちがすぐに頼通に伝わらずとも、その思いにいずれ気づくかもしれません。そして次の代、その次の代と進み、一人で成せなかったことも時を経れば成せるかもしれません。

そんな話をしていた時、現れたのは倫子でした。政の話だと断る道長ですが、政の話を藤式部にすることに、倫子はちょっとだけ焼きもちを焼きます。藤式部が彰子付きの女房であることから、彰子の考えを知っておかなければ政はできないと言い訳する道長に、藤式部が男であればあなたの片腕になりましたでしょうに、と皮肉たっぷりで返答する倫子です。

倫子が藤式部を訪ねたのは、夫道長のことを書いてほしいと頼みたいためでした。道長の華やかな生涯を書物にして残したい──。答えに窮する藤式部に、今すぐ答えなくてもよろしいとにっこり微笑んで、倫子は藤式部の局を去って行きます。

 

寛仁元(1017)年。そして、頼通がご一条天皇の摂政となった。教通、威子(たけこ)、嬉子(よしこ)ら弟妹たちも、兄の摂政就任をお祝いします。頼通の役に立ちたい威子ですが、入内してくれと言われて戸惑います。帝は10歳、威子は19歳なのです。顔色をサッと変え、威子は「いやでございます」と断りますが、倫子は、数年もすれば帝も大人になると動じません。

1歳上の嬉子が入内すると自薦しますが、嬉子には嬉子の役目があると頼通は聞き入れません。動揺を隠しきれない威子に倫子は、帝の最初の女になって心をしっかりとつかめと諭しますが、それでも威子は「いやでございます!」と拒否し続けます。翌年の春、威子は後一条天皇に入内した。

三条院が危篤と百舌彦が知らせに駆けつけます。道長にとって三条院は姉超子の子、甥であり、対立していたとはいえ近しい存在なのです。三条院は臨終の時を迎えていました。「闇だ……闇でない時はあったかの」とうなされる三条院は、目の見えない自分とともに、その闇を共に歩んでくれた娍子に対して感謝の言葉をかけます。

時勢に翻弄され続けた三条院は42歳で世を去り、後ろ盾を失った敦明親王は自ら申し出て東宮の地位を降りた。そして道長の孫であり、帝の弟である敦良(あつなが)親王が東宮となった。それから1年、彰子は太皇太后、妍子は皇太后、威子は中宮となり、3つの后の地位を道長の娘3人が占めた。この夜、威子が中宮となったことを祝う宴が、土御門殿で催された。

慶びの言葉を述べる道長ですが、道長と頼通以外めでたいと思っている者はいないと妍子に牽制されます。しかし道長はものともせず、公卿たちを招いて盛大に宴を催します。舞台では頼通と教通が華麗に舞い、評判も上々です。実資のとりもちで、太閤道長から頼通・教通へと盃が下されます。そして公卿たちにも盃が下され、道長は立ち上がり夜空を見上げます。

今宵はまことによい夜だ、歌を詠みたくなった、と道長は実資を近くに呼び、返しの歌を求めます。
この世をば
 わが世とぞおもう 望月の
  かけたることも なしと思えば

実資は、そのような優美な歌に返す歌はないと返答します。元稹(げんしん)が菊の歌を詠んだ時、白楽天は深く感じ入って返歌できず、代わりに元稹の歌に唱和したとのエピソードを語り、今夜もみんなで唱和いたしましょうと提案します。参加者たちはみな整列し、実資の唱和に追いかける形で唱和していきます。道長の後姿を、藤式部は微笑んで眺めています。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ/藤式部)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
木村 達成 (三条天皇)
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見上 愛 (藤原彰子)
上地 雄輔 (藤原道綱)
秋山 竜次 (藤原実資)
石野 真子 (藤原穆子)
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岸谷 五朗 (藤原為時)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:黛 りんたろう

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第45回「はばたき」

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