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2024年11月 3日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(42)川辺の誓い ~まひろ 宇治の道長のもとへ~

長和元(1012)年。藤原道長の三男・藤原顕信が、前途を悲観して出家したことを受けて、源 明子は発狂して道長を見るなり「あなたがあの子を殺したのよ! 顕信を返せ!」と掴みかかります。頭に血が上ったか明子はその場で昏倒し、介抱する道長の横で次男・藤原頼宗は薬師を呼びます。

顕信が出家したことは、嫡男・藤原頼通を通じて中宮彰子に伝えられます。顕信にそのような様子はなく、彰子は憔悴します。三条天皇から顕信を蔵人頭にしたいという提案を、道長が固辞したという経緯を聞き、彰子は表情を曇らせます。五男・藤原教通は蔵人頭になれなかったからと言って現世を捨てるのはやりすぎと助け船を出しますが、道長自身傷ついているといっても彰子は許すことが出来ません。

兄の源 俊賢は妹を心配して急いで帰ってきました。そっと覗いてみると、明子は伏せて涙を流しています。まずは俊賢は、今回のことで慰めの言葉をかけ、内裏の力争いから逃れて心穏やかになったかもしれないと前向きに捉えます。明子は顕信を思い、俊賢に比叡山に暖かい衣をたくさん届けてやってほしいと懇願します。道長はたくさんの衣を百舌彦に預け、比叡山に向かわせます。

三条天皇は「妍子(きよこ)を中宮とする」と言い出します。中宮彰子は皇太后になってもらい、中宮大夫には藤原道綱を、中宮権大夫には教通を指名します。道長は、ありがたき幸せと頭を下げます。だがこの話はこれだけでは終わらなかった。

 

ひとつき後。帝は今度は「娍子(すけこ)を皇后とする」と言い出し、道長は困惑します。しかしかつて一帝二后をやってのけた道長だから異存はなかろうと帝はニヤリとします。近年では大納言の息女が皇后となった例がなく、道長はできないと断りますが、帝は二度と妍子のところには渡らない(子は作らない)と宣言します。道長は三条天皇の術中に落ちた。

このままいけば帝のしたい放題となり、公卿たちは危機感を募らせます。俊賢は娍子立后の日に妍子の内裏参入をぶつけては? と進言します。帝に対して道長の力を見せつけるまたとない好機なのです。藤原行成は、そこまでして公卿たちの心を試さなくてもいいのでは? と心配顔ですが、道長は俊賢に公卿たちへの根回しを命じます。

そうきたか、とフッと笑みをこぼす帝は、妍子の内裏参入は夜行われるため、娍子立后の儀を昼から行うと時間をずらすことにします。時刻をずらしたにもかかわらず、多くの公卿たちは道長に遠慮して娍子立后の儀に参加しなかった。右大臣も内大臣も不在で、立后の儀の上卿(しょうけい)を務めるものがいないわけです。

そこに現れたのは大納言の藤原実資でした。帝は実資に上卿役を頼み、右大臣も内大臣もいない異常事態を察知した実資は「天に二日(にじつ)なし、土に二主なし」と大任を果たすことにします。儀式を終えて夜になり、膳も多く用意していますが、実資や藤原隆家など参列者はごく少数です。膳を下げた方がと女房が進言しますが、実資の養子・藤原資平は諦め顔です。「そのままでよい」

そのころ妍子の内裏参入の宴が明るく催されていました。これからも中宮妍子を盛り立てていこうと藤原斉信が鼓舞しますが、道長は浮かない顔をしています。

後日、変顔をして愛娘・千古(ちふる)を笑わせる実資ですが、帝がとても喜んでいたと資平が伝えに来ました。しかし実資は、あの日のことなら思い出したくはないと冷めた表情です。政を思いきりやりたい帝は、道長にあれこれ言われたくないわけで、時が来たら実資を相談役にしたいと考えているようです。実資は、行きがかり上、上卿を務めたのであって、帝にも道長にも中立の立場を守ります。

娍子が立后したにも関わらず、帝が藤壺に渡ることはありませんでした。そのことを指摘する道長に帝は、藤壺に渡っても若い男に囲まれて宴ばかりで、私のような年寄りが入り込むスキがないと弁解します。帝は道長が比叡山に赴いたとき石を投げられたことを持ち出し、「たたりがあるらしい。しっかりと祓ってもらうがよい」と面白そうです。それからも三条天皇は、妍子のもとにはなかなか渡らなかった。

道長は藤式部の局にやって来ました。妍子が宴三昧で無駄遣いもすさまじく、その悪評が皇太后の耳に入ったらしく呼ばれたわけです。それよりも帝の藤壺へのお渡りのなさを憂う道長です。一条帝と彰子の間には「光る君の物語」がありましたが、三条帝と妍子の間には何もありません。「源氏の物語ももはや役には立たぬのだ。何とかならぬのか」と道長は藤式部に相談します。

道長は、藤式部が源氏の物語ほどのものを書ける人物だと見込んで相談しているわけですが、自分にはどうすることもできないと藤式部はため息交じりです。「物語は人の心を映しますが、人は物語のようにはいきませぬ」 つまらぬことを言った、と道長は去って行き、藤式部は物語の続きをつづり始めます。

もの思ふと
 過ぐる月日も 知らぬ間に
  年もわが世も 今日や尽きぬる
物思いばかりして月日が過ぎたことも知らぬ間に、この年も我が生涯も今日で尽きるのか。藤式部は夜の満月を見上げて、どこか寂しそうです。後日、藤式部の局を通りかかった道長は、文机の上の紙に「雲隠」の文字を見つけます。途端、道長の頭をキーンと痛みが走ります。

 

里下がりしたまひろに、双寿丸が毎日出入りして困るといとは訴えます。賢子はまだ子どもとはいえ裳着は済ませていて、何が起こるか分からないのです。まひろは、それならそれでいいじゃないのと笑います。そこに賢子が腕を怪我した双寿丸を連れて戻って来ました。そこまでの怪我なら来なくてもと皮肉を言ういとですが、「あんたの飯がうまいから」と言われ、つい喜んでしまういとです。

その夜、道長は病に倒れた。源 倫子は夜通しで道長の看病に当たりますが、病状は思わしくありません。翌朝、道長から左大臣の職を辞する書状が帝に提出されます。どうしたものか……と頭を悩ます帝ですが、そこまで本気で悩んでいるような表情ではありません。返すのが先例と言われても、返したくないがのう……とつぶやきます。

土御門殿に皇太后彰子が“里帰り”です。母倫子と祖母藤原穆子が沈んだ顔で出迎えます。あのお強かった父上が(病に)お倒れになるなんて、と信じたくない気持ちでいっぱいです。辞表も二度も提出したと聞かされ、東宮敦成親王のことで道長と衝突が絶えなかった彰子は、自分のせいかもしれないと思い詰めていますが、穆子は自分の信じた道を行きなさいと諭します。

里下がり中のまひろのところには、早く戻ってくるようにとの彰子からの書状が届けられていました。まひろは書状を文箱にしまうと、あたりをキョロキョロと見まわします。

道長の病をきっかけに、内裏には怪文書が出回った。“左大臣の病を喜ぶ者”として、大納言の藤原道綱・実資、中納言の隆家、参議の藤原懐平(かねひら)・藤原通任(みちとう)……。名指しされた道綱は、道長の病を心配しているし、いい弟だもの! と藤原顕光に弁明します。実資も目玉が飛び出るほど驚きますが、放っておくことにします。

一方、隆家のところにはききょうがいました。このような怪文書が出回るとはみんなの心が荒(すさ)んでいるからだと考えています。隆家は、道長の屋敷に見舞いに行くことも考えていますが、正直気が引けます。ききょうは、放っておけばよろしいのでございますよ! と隆家を見据えます。「左大臣さまのお命は、長くは持ちますまい」

相変わらず屋敷にいるまひろは、やることがなく箒で掃除をしたりしています。源氏の物語はもう終わったとつぶやくまひろに、物心ついたころから母はいつも自分をほったらかしにして何かを書いていた、と思い出す賢子は、「書かない母上は母上でないみたい」と笑います。まひろは、賢子には好きな人もいるし、このまま出家しようかしら、とほほ笑みます。

 

病気療養の道長は、宇治に来ていました。百舌彦が書状を持って来ますが、それをチラリと見て無反応です。自分ではもはやどうすることもできないと、後日、まひろの屋敷に百舌彦が現れます。「実は……殿さまのお加減がおよろしくなく……」と、藁をもすがる思いでまひろに助けを求めます。

宇治に向かったまひろは百舌彦の案内で中に入りますが、縁でぐったりしている道長のところで百舌彦はまひろと二人きりにします。名を呼ばれて面倒そうに眼を開いた道長は、目の前にまひろがいてびっくりします。宇治は川風が心地よく、まひろは道長を川辺を歩きに連れ出します。

まひろは道長の気持ちを少しでも軽くするために、自分との約束はお忘れをと勧めますが、道長はその約束を忘れれば自分の命は終わる気がしています。もう終わってもいい──。そんな気持ちが、まひろの中に芽生え始めていました。道長に、俺より先に死ぬなと言われ、まひろは涙を浮かべながら微笑みます。「道長さまが生きておられれば、私も生きられます」 道長は声を押し殺して涙を流します。

戻ったまひろは、終えたはずの源氏の物語の続きを書き始めます。『光る君がお隠れになった後、あの光り輝くお姿を受け継ぎなさることのできる方は、たくさんのご子息の中にもいらっしゃらないのでした』

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ/藤式部)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
木村 達成 (三条天皇)
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見上 愛 (藤原彰子)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
石野 真子 (藤原穆子)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:葛西 勇也・高橋 優香子
演出:中島 由貴

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第43回「輝きののちに」

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