« 大河ドラマ光る君へ・(45)はばたき ~まひろが道長に別れ告げ旅へ~ | トップページ | プレイバック春日局・(46)忘れえぬ面影 »

2024年11月25日 (月)

プレイバック炎 立つ・第三部 黄金楽土 (32)基成の怒り

文治2(1186)年12月、藤原秀衡は源 義経を平泉へ正式に受け入れます。家臣たちが去った大広間では、藤原基成と泰衡だけが居残っていました。誰が何と言っても平泉が義経を受け入れた事実はもはや変わらず、泰衡は源 頼朝との戦をどう避けるのか考えていかなければならないと主張しますが、基成はそれを「甘い!」と一蹴します。

義経を受け入れることと戦を避けることは両立しないと泰衡自身が言っていたことです。しかし泰衡は、道がなければ切り開けばいいと考えを変えません。この平泉に産まれ、平泉で育ってきた泰衡にとって、100年にわたって受け継いできた平泉の、蝦夷の誇りを捨てることはできない──。「蝦夷の誇りとな……!?」 基成は絶句します。


文治3(1187)年2月、平泉・加羅御所──。藤原国衡・忠衡兄弟を始め藤原氏の家臣たちを前に、弁慶は弓矢の手入れをしながら屋島の戦いでの那須与一の活躍を思い出しつつ語ります。目を閉じてそれを聞く義経は、たった2年前のことながら遠い昔のように感じています。同じ源氏同士の戦いでは憎み合うだけになると、義経はとても寂しそうです。忠衡は気晴らしに義経を笠懸に誘います。

秀衡は義経受け入れについて頭を下げて詫びます。泰衡も受け入れた以上は頼朝に戦の大義名分を与えないことと従来の主張を繰り返しますが、基成はその決断が平泉を滅ぼすと反発します。いざとなれば都に逃れて平泉を見守る道を提案しますが、それが基成の怒りに油を注いでしまいます。「そうはさせぬぞ! この平泉の黄金の輝き、そなた一人で磨き上げたものではない! 奢るでないぞ!」

鎌倉・大倉御所の頼朝のところには、義経の妻が子を産んだという情報が舞い込みます。さらに平泉から朝廷への貢物として、馬7頭に大量の砂金が届けられます。頼朝は、秀衡が義経を抱え込んでいるのは疑いなく、砂金を大量に産出する平泉を いずれこの目で見る時がくるだろうとニヤリとします。「急ぐことはない。ゆっくり……じわじわ攻め挙げていけばよいのじゃ」

後白河法皇は病気がちで咳き込むことも多くなりました。病気全快祈願のための非常の恩赦として義経の罪を許すということに、摂政の九条兼実は苦言を呈します。ただどうせ恩赦を出すなら、海賊や盗賊たちの罪を許すより、義経から反逆者の烙印を取り除いた方が有意義だと法皇は考えているのです。苦々しい表情の兼実は呆れて院の御所を出ていきます。

平泉・束稲山(たばしねやま)は藤原基顕の庵です。基顕は泰衡に民が作ったずんだ餅を勧めます。この庵にもいつの間にか民たちが出入りし、その日の食べ物も困る民たちが食べ物も運んできてくれて、基顕は感謝しています。厚樫山(あつかしやま)に堡塁(ほうるい)を築いているらしいと知った基顕は、平泉を守るためのその下準備こそが民を踏みにじっていることに気づかないのかと泰衡を諭します。

堡塁を築くためには民の力がいる。いざ戦になれば兵糧を民に出させ、年貢を多く積ませ、挙句 民を戦火に引きずり込むことになるわけです。「敵から守ろうという気持ちが、すでに戦を呼び寄せておる。戦は富める権力者が起こすもの。名もなき民はそれに巻き込まれてゆくだけじゃ」

 

秀衡は義経に、頼朝が攻めてきたときに20万の全軍を与えた場合にどう使うか尋ねます。義経は大きな地図を前に、碁石を使って説明します。まず自軍を3隊に分け、第1陣の秀衡軍は10万の兵を率いて下野那須野に陣を敷き、鎌倉勢をおびき出します。鎌倉は大軍で立ち向かうわけです。

第2陣の国衡軍は越後から信濃・甲斐を回って、相模の南側から鎌倉を目指します。一見遠回りですが、鎌倉に幽閉されている城 長茂の残党が越後にいて、心強い援軍として軍勢に加わるのを狙っています。しかも甲斐では頼朝に恨みを抱く甲斐源氏と合流できるわけで、その大軍が鎌倉に近づくだけで、鎌倉にはとても大きな脅威になるはずです。

第3陣の義経軍は太平洋側の海沿いに常陸に進み、これも頼朝に恨みを抱く佐竹らの残党を味方につけます。そして下野の南側から鎌倉の大軍の背後に回ります。義経は軍勢と分かれ、100名ほどの少数で船で上総に向かい、峠越えで天羽庄(あまはのしょう)に行けば、鎌倉は湾を隔てて目と鼻の先です。船を提供する地元豪族の力を借りて海を渡り、鎌倉御所を襲う算段です。

秀衡はこの策でいこうと決断し、秋の出陣に合わせて国衡に地固めをするよう命じます。そしてこの軍議の内容は、時が至るまでは他言無用でいるように徹底させます。その軍議が終わり、御所を出ようとする義経と弁慶は、名も知らない少女から薫子の文を預かります。「明日、申(さる)の刻、白山社にてお待ち申し上げ候」

軍議が終わってゆっくりする秀衡のもとに、倫子が駆けつけます。父基成の様子がおかしいようで、崩れ落ちるかのように傷ついています。秀衡は、公卿である基成には少し離れた場所から、自分たち武士の政を見守ってもらいたいと倫子にも話しますが、倫子は父から夫の悪口は聞きたくないと、もう少し仲良くしてもらいたいと言って出ていってしまいます。

夕方、義経は白山社に赴きます。弁慶からは人の道に外れてはならないとたしなめられ、義経も薫子から顔をそむけますが、薫子がかつて頼朝から側室にと望まれたとき、懇(ねんご)ろの仲だと断らなかったことを持ち出し、悪いと思うならここで会ってほしいと食い下がります。しかし義経はなびかず、薫子は義経を平手打ちします。「ではなぜ平泉に帰って来たのです! 私たちは同体なのです」

 

夏になると、義経や国衡の戦準備が目立ってきて、頼朝に知れることを恐れる泰衡は秀衡に止めるよう伝えてほしいと懇願しますが、戦の発案は実は秀衡によるものと知り、泰衡は愕然とします。奥州攻めを画策する頼朝をけん制するため、西国の武士を動かすという泰衡の和平策を評価しつつ、源氏因縁の奥州を手中に収めるため、その和平策をも頼朝が乗り越えて来そうな気がしている秀衡は、こちらから討って出るしかないと考えています。

泰衡は衣川館の基成を訪ね、和平策を実行するには自分ひとりでは力不足と基成に協力を仰ぎますが、今さら無駄だとそっけない返事です。義経を抱えた以上致し方ないという考えのほかに、やはり秀衡から引退勧告が出されたことにへそを曲げているわけです。身内が反目すれば平泉は足元から崩れると泰衡は食い下がりますが、基成は首を横に振ります。「……ならぬ」

時が来たようだ、と基成はつぶやきます。鎌倉の頼朝へ親書を送るというのです。もちろんこのことは秀衡にも泰衡にも悟られてはなりません。藤原隆実は平泉の館を訪ね姉の倫子に覚悟を求めますが、それが秀衡を抑え、頼朝とは対立しないとの約束の下で基成が平泉を動かすことだと知った倫子は、詳細の企てを耳にする前に拒絶して出ていってしまいます。

平泉から衣川へ慌てて駆けつけた倫子は、父基成に翻意するよう促しますが、隆実の早とちりじゃと笑います。平泉を戦火に巻き込まないためには、基成が秀衡と意を異にすると頼朝に“見せかけ”るしかないわけです。「平泉が平穏に戻った暁には、包み隠さず語り合う時も来よう。今はそなたの胸のうちにだけしまっておいてくれぬか? ここでの話 他言無用じゃ。泰衡にも、まして御館にも漏らすでない」

隆実はさっそく鎌倉の頼朝に会いに行き、基成の親書を渡します。初めこそどこまで信じていいものやらと困惑する頼朝ですが、平泉がここまで分裂していると驚き、しばらく隆実を鎌倉に足止めにすることにします。そして基成が提案する秀衡暗殺計画について、細部にわたり検討することにします。

法皇の下文(くだしぶみ)を持って橘似がやって来ました。あいにく秀衡は無量光院に行っていて、泰衡が応対します。法皇の病気はもうすっかり良くなったというのに、京に向かった隆実は法皇に目通りできなかったと言っていたと泰衡は疑問に感じます。橘似は目を伏せ、隆実は京ではなく鎌倉に行っていたと伝えます。それを耳に入れたくて、橘似は平泉までやって来たのです。

辺りを見回しながらコソコソ動く隆実を、泰衡の命を受けて弥五郎が後をつけます。弥五郎が目にしたものは、隆実のところに数名の男たちが集まり、何ごとか話し合っている様子でした。弥五郎は慌てて泰衡のもとへ戻っていきます。そのころ中尊寺金色堂に籠った基成は、先代藤原基衡に向かって語り掛けます。「貴殿と築いたるこの平泉の栄華、滅ぼさせるわけには参りませぬ……お許しあれ」

弥五郎の報告を受けた泰衡は、無量光院から出てくる馬上の秀衡に駆け寄ります。その泰衡よりも先に、男たちが秀衡を襲撃します。泰衡と弥五郎が斬った男たちは、鎌倉の頼朝から拝借したためか、平泉では見かけない顔です。刺客の顔に戸惑う泰衡ですが、様子を見ていた秀衡はそのまま落馬してしまいます。うーっと唸る秀衡はとても苦しそうです。


脚本:中島 丈博
高橋 克彦 作 「炎立つ」より
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
──────────
[出演]
渡辺 謙 (藤原泰衡)
野村 宏伸 (源 義経(九郎))
時任 三郎 (弁慶)
中嶋 朋子 (薫子)
三浦 浩一 (藤原国衡)
──────────
紺野 美沙子 (橘似)
本郷 功次郎 (北条時政)
中原 丈雄 (藤原基顕)
──────────
長塚 京三 (源 頼朝)
真野 響子 (倫子)
中尾 彬 (後白河法皇)
林 隆三 (藤原基成)
渡瀬 恒彦 (藤原秀衡)
──────────
制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:村山 昭紀
    :NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:吉川 邦夫

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第33回「秀衡逝く」

|

« 大河ドラマ光る君へ・(45)はばたき ~まひろが道長に別れ告げ旅へ~ | トップページ | プレイバック春日局・(46)忘れえぬ面影 »

NHK大河1993・炎 立つ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 大河ドラマ光る君へ・(45)はばたき ~まひろが道長に別れ告げ旅へ~ | トップページ | プレイバック春日局・(46)忘れえぬ面影 »