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2024年11月18日 (月)

プレイバック春日局・(44)おんなの目

【アヴァン・タイトル】

「それがしサンマを取り寄せて食したるところ、美味などとは程遠い代物じゃ」「いやぁそれは何かの間違いでござろう」「いや違いはござらぬ。特に本場と申す、房州から取り寄せたものじゃ」「いや、それはいかん。サンマは目黒に限る」

今年はサンマが大豊漁です。落語『目黒のサンマ』は、三代将軍家光がモデルと言われています。食文化研究家の永山久夫さんに、将軍家光と庶民の食事を再現していただきました。家光の夕食は、焼きマツタケ、鯛の刺身など、品数9つと現代人が見ても豪華なものです。しかし栄養面では麦めしや大根汁など、庶民の食事の方が質素にもかかわらず、たんぱく質ビタミンなどで遥かに優れていると、永山さんは評価しています。

一方将軍の食生活は栄養面で偏りがあり、しかも柔らかくさっぱりしたものが中心で、後代の将軍はあごが退化していったとさえ言われています。若い時のように外出もままならぬ将軍家光にとって、旬のサンマは二度と味わえぬ青春の味だったのかもしれません──。


寛永11(1634)年・春。江戸城下で行われていた花見の祭りはまだ続いています。茶店に入ったおふくは同伴するお勝に、声をかけた町娘がかつて家光が寵愛した遊女紫に生き写しだと説明します。紫の父親が豊臣恩顧の家老で、将軍に身を任せたのを恥じた紫が自害したことを伝えると、おいたわしや、とお勝は表情を曇らせます。

それ以来、家光は女性(にょしょう)を遠ざけていますが、このまま側室に見向きもしなければお世継ぎ誕生は望めません。おふくは、家光があの町娘を見た時、心の傷が癒えるかもしれないと一縷(いちる)の望みを抱きます。身分も生まれも分からない娘ながら自分が預かって仕込むと先走るおふくを、お勝はたしなめます。

その町娘の小袖を買った旗本奴(はたもとやっこ)が、屋敷まで代金を取りに来いと言い出しているようで、町娘は代金は品物と引き換えだと文句を言っています。盗人呼ばわりした町娘に刀を抜く奴ですが、容赦はしないとおふくが相手をします。そのあたりに置いてあった棒を手に、奴をたちまち叩きのめし、奴は捨て台詞を吐いて慌てて逃げていきます。名乗らず去っていくおふくの背中を、町娘は見つめます。

江戸城に戻ったお勝はあの町娘の性根に惚れたと、娘がどのような人か調べてみると買って出ます。将軍の側室として障りがないか、大奥に入ることも含めて、調査してくれるというのです。おふくは、どう調べようかと思案していただけに、お勝の申し出をありがたく受けます。「あれだけの気骨を備えておれば、生まれてくるお子とて案ずることはありますまい。わたくしにお任せくだされ」

江戸城近くの下町に、商いから町娘とその母親が戻って来ました。桜ももう散って花見客も少なくなったと愚痴を言う町娘に、同じ長屋仲間の婆さんが、娘のことを嗅ぎまわってるおかしな奴らがいると耳打ちし、気をつけるように忠告します。「悪いことした覚えなんかないもん。嗅ぎまわったって何も出やしないよ」と町娘は気にする様子もありません。

家に戻ると父親が待っていました。代わりに懸命に働いてくれる妻と娘に詫びますが、「焦っちゃいけない、商いがうまくいくようになったら、必ず目のお医者さまに掛かれる……もう少しの辛抱だから。生きてさえいればいいときだって来る」と父親を励まします。父親は後添えとして妻と娘と所帯を持ったわけですが、昨年の火事で視力を失い、余計に苦労をさせてしまっていると後悔しているのです。

 

お勝はおふくに、あの町娘のことは諦めるようにと残念そうに告げます。町娘の実の父親は下野国都賀郡(つがごおり)高島村の農民で、江戸に出て侍奉公するうち、主家の金子を着服した咎で高島村に戻ります。田畑を失い猟師となりますが、禁猟の鶴を撃ったのが発覚して死罪となり磔にされたのです。

残された母娘は領主の家臣である七沢作兵衛に見込まれて後添えとなり、作兵衛は武士を捨て古着を扱う商人となりますが、失明したため母娘が細々と古着を商っているというわけです。ちなみに娘の姉は嫁いで平戸にいて、弟は国元で奉公しています。町娘の名は「お楽」と言いますが、死罪となった者の娘ではとお勝は難色を示します。

おふくは、自分の父親・斎藤利三も謀反の罪で磔に処せられたものの、徳川家康に乳母として召し抱えてもらったという経緯があります。「娘には関わりのないこと。みじめな思いをした者は人の痛みも分かり、それだけ人を思いやる温かさとて持てるようになるものにございます」 将軍の側室になるのは並の辛抱では耐えられず、それほどの苦労を乗り越えてきた娘ならばと、おふくはお勝を見据えます。

 

しとしと雨の中、駕籠が下町のお楽の家の前に来ました。使者のクラは英勝院(お勝)が作兵衛夫婦とお楽と対面したい旨と伝えますが、妻のミツは何か不始末でも? と困惑して作兵衛を見つめ、作兵衛は徳川家康の側室だった人物がなぜ自分たちのような者に? と訝(いぶか)ります。

呼ばれるままお勝の屋敷に入る3人ですが、お楽は「立派なお屋敷だァ……将軍さまの側室を務めると、大した暮らしができるんだなァ」と屋敷内をキョロキョロ見渡します。そこに現れたお勝を見て、お楽は自分たちを上野の花見で救ってくれた女性だと気づきます。お勝は、お楽に春日局の部屋子として大奥に上がってもらいたいと告げます。

「お断りいたします! 私は侍が大ッ嫌いだ」とお楽はお勝を見つめます。旗本連中が鶴を撃っていた罪を、お楽の実父が濡れ衣を着せられて磔にされたのです。金子を着服したのも、主君が妻に内緒で吉原の遊女へつぎ込んだ金を実父が盗んだことにされ、江戸を所払いされたのです。それだけにお楽は、侍を憎んでいるわけです。「私はおっ父やおっ母のそばを離れるつもりはない。帰ろう」

残念だ、とお勝はつぶやきます。お楽が奉公してくれたら作兵衛の目を治し、家も建てられ、両親の暮らしが立つようにしたのに、ともったいぶります。良い薬師に見せれば作兵衛の目は良くなるらしいし、ミツも商いをせずに済むわけです。ええ孝養になろう、と言われ、お楽は一も二もなくこの話に飛びつきます。ミツも、お勝の目に止まったのがお楽の果報かもしれないと、話を受けたいと頭を下げます。

家に戻ったお楽は、古着は必要なくなるとたたき売りに出ていきます。作兵衛は、たかが部屋子に上がるだけなのに、大金を使って自分たちの面倒を見てまで、お楽に執心するのかと疑います。ミツは、将軍家を牛耳るとうわさの春日局が、自分たちの暮らしが立ち行かないのを心配してのことだといいように考え、ありがたいと思って受けましょうと作兵衛を説得します。

一方、お勝の報告を受けたおふくは、お楽が言う実父の話はもしかしたら真実かもしれないと笑います。鶴を撃ったのが旗本だったとしても、領主としては他に下手人を上げなければ、幕府への面目が立たないわけです。それだけに武士を嫌うのももっともだと考えるおふくは、お楽を仕込むのは大変だというのも覚悟しているようです。「それぐらいの娘でのうては、仕込み甲斐がございませぬ」

 

お楽はおふくと対面します。お勝の顔と合わせて、上野の花見で出会った女性だと知って安堵するお楽ですが、おふくは厳しい表情で告げます。「本日からわたくしの元で働いてもらいます。一切そなたの勝手は許されぬ」 立ち居振る舞い、言葉遣い、奥のしきたりなどは祖心尼がお楽に教えることになり、お楽は不安そうな表情を浮かべます。

おふくは徳川家光に、そろそろ世継ぎをと進言します。家光は耳が痛そうに「わかった」とその場しのぎの返事をしますが、徳川忠長亡き後、徳川家を守るのは家光ただ一人とおふくは説得します。しかし家光には、この7月に上洛して朝廷とのわだかまりを解消するという大仕事があり、次は日光東照宮を再興するつもりです。幕府も法度で固めなければならず、世継ぎどころではないと言いたいのです。

おふくは、それらと世継ぎは別儀と一蹴します。家光は、正室も側室も拒む事情をよく知っているはずのおふくの、度重なる説得の言葉に涙目になりますが、それでもなお徳川のために世継ぎをと家光を見据えます。「ふく……好きにせい!」「はい。ふくの好きに計らわせていただきます。ふく、必ずお世継ぎのご誕生、この目で見届けさせていただきます」

おふくは家光正室の鷹司孝子の居室に向かい、孝子が江戸に来て10年もの間、自分が乳母としてありながら力が及ばずと頭を下げます。孝子に仕える常盤は、家光はおふくに頭が上がらないというのに、いまだに世継ぎが授からないことをからかいます。おふくは、自分の不始末と認めつつ、孝子に頭を下げます。「つきましては、御台さまにお仕えなされておる侍女の中で、これぞと思われる娘がおりましたら」

 

7月、家光は30万の大軍を従えて上洛。上皇の御領3,000石を1万石に増し、京の民に5,000貫を与え、上皇、天皇、東福門院和子に拝謁します。和子は兄の心遣いに感謝しますが、和子の調度品づくりで匠たちが腕を競い、京の文化は花開いたようで、家光はどんどん金銀を使うようにと微笑みます。

その間にも祖心尼によるお楽の教育は続きます。茶道の作法を教わるお楽は正座し続けて足がしびれ、転んでしまいます。こんなことをさせられる覚えはない! とお楽は立ち上がり、現れたおふくに暇乞いをしますが、「勝手は許さぬと言うてある」とおふくは突っぱねます。両親の家の手配をし、じき目の薬師にも診せると言われれば、お楽は大きくため息をついて祖心尼の元に戻ります。

お楽が柄杓(ひしゃく)を手にしたとき、遠くから「西の丸が火事じゃ!」と侍女の叫び声が聞こえてきます。おふくと祖心には大慌てで出ていきますが、お楽はらんらんと目を輝かせ、西の丸の方角を見ています。お楽の教育はまだまだ前途多難です。そして江戸城の一角から火の手が上がり、西の丸が全焼するという大火事になりました。家光上洛中の出来事でした。


原作・脚本:橋田 壽賀子「春日局」
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
大原 麗子 (おふく)
江口 洋介 (徳川家光)
若村 麻由美 (お楽)
東 てる美 (お勝)
岩本 多代 (ミツ)
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中田 喜子 (鷹司孝子)
伊東 四朗 (七沢作兵衛)
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制作:澁谷 康生
演出:小松 隆一

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『春日局』
第45回「三代目の力」

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