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2024年11月 1日 (金)

プレイバック炎 立つ・第三部 黄金楽土 (27)泰衡、京へ

【アヴァン・タイトル】

治承4年、1180年初頭。平 清盛から平泉に頼朝攻略の援助を請う親書が送られた。このころ、諸国の源氏だけでなく寺院勢力も清盛に反抗し、手を焼いた清盛は東大寺・興福寺を焼き討ちにした。しかし清盛の絶頂期はすでに過ぎ、朝廷における発言力も弱まっていた。

清盛の呼びかけに動こうとしない父・秀衡に対して、泰衡はまず自分の目で都を見定めようとする。平家・源氏・朝廷。三者の思惑が錯綜する中で、泰衡の平泉の行く末を決める旅がいま、始まろうとしていた──。

治承5(1181)年、藤原泰衡の都行きを明日に控え、藤原秀衡は中尊寺金色堂に籠って念仏を唱えていました。福原遷都を諦めた清盛が、京に戻って南都を焼き討ちにしたことを悲観したのです。東大寺は聖武天皇の、興福寺は藤原不比等の発願によるもので、特に興福寺は藤原の氏寺でもあります。この焼き討ちで清盛は藤原一族の支持は得られまい、と秀衡はつぶやきます。

先代藤原基衡、先々代藤原清衡の霊体が、この平泉を、そして奥州藤原の政を見守っているのです。どれだけ心強いか、と泰衡は改めて感じます。そんな中で、味方を失いつつある清盛が、平泉を唯一の頼りとして頼朝追討の要請をしてくるかもしれず、泰衡はうつむきます。秀衡は「なにはともあれ、都もさぞ騒がしいことじゃろうて」と手を合わせます。

都に行く途中で鎌倉に立ち寄り、薫子のために義経に会うつもりでいる泰衡は、文なり歌なりしたためるよう勧めますが、倫子にたしなめられて、初めて薫子に縁談話が進んでいることを知ります。越後の城 資永(すけなが)と聞いて、資永の母親は奥州藤原の仇敵である清原一族だと泰衡は反対を唱えますが、薫子は、自分のことはどうでもいいの、と自暴自棄に陥ります。

薫子から義経に宛てた文を亜古耶から預かった泰衡は、伴丸の寝顔を見て出発しようとします。そこに藤原国衡が現れ、ギロリと睨みつけます。「そなたがおらぬ間に、この平泉が変わっても知らぬぞ。そなたが都で何を見てこようと、この出羽や陸奥を守るためには戦じゃ。親父どのの反対を押し切って出発する以上、文句を言うな」

 

平泉を出発して23日後、泰衡一行は近江の宿に到着します。そこで合流した橘似に、高倉上皇が身罷ったと聞かされます。院政の再開を要請しても受けなかった後白河法皇も、今では率先して政に精を出しているそうです。泰衡は清盛にも会えるかなと胸躍らせて、夜も眠れません。同行する藤原基顕は、京で見極めたいものがあると、そのままとどまるつもりだと打ち明けます。

そのころ平泉には、薫子と縁談がまとまりつつある城 資永の従兄弟・城 助能(すけよし)が来ていました。信濃で挙兵した木曽義仲を討てとの清盛の命令があり、城一族は秀衡に援軍を請うているのです。国衡は、源氏勢が自分たちの敵になるのは目に見えているため、そのうちの一つを潰しておくに越したことはないと与力参戦に賛成しますが、秀衡は国衡をたしなめ、大きくため息をつきます。

京に入った泰衡は、大叔父・藤原基房と対面します。泰衡は庭の美しさに目を輝かせますが、基房はその「四方四季の庭」を自慢げに案内します。春には東の清流の庭、夏には南の朱雀の庭、秋には西の白虎の庭、冬には北の玄武の庭を開いて、趣の違う庭をそれぞれ楽しんで四季を感じるという趣向の庭なのです。贅を尽くした作りだと泰衡は感嘆の声を上げます。

平泉は都に勝る雅な土地でありながら、このような庭がないとはまだまだ都に追いつかないなと基房は笑います。泰衡は、玉手箱のように箱を開けばたちどころに消えてしまいそうな“虚無”を感じると感想を述べ、基房は面白そうに笑います。その基房は、清盛が熱病に倒れたと泰衡たちに告げます。清盛に会うつもりだった泰衡や基顕は、アッと声を上げて驚きます。

 

京に留まると話していた基顕の姿は、伊勢・二見浦にありました。そこで庵を結ぶ僧西行に、出家したい旨を伝えます。この世をいかに嫌悪していても俗世を離れるのは難しいとつぶやく西行は、都で無数の餓死者を見て浄土に旅立ちたい基顕に、出家など志さずに大掛かりな往生への仕掛けである平泉で極楽往生を遂げる道を説きます。

そして秀衡は基房の仲介で法皇と対面します。法皇は秀衡が義経を鎌倉に遣ったのは大きな間違いだと泰衡に指摘します。泰衡は秀衡が義経を引き止めたことを弁明し、自分の考えを主張しますが、法皇は話を終わらせてしまいます。泰衡は、かつて法皇が作らせた『後三年合戦絵巻』の出来栄えに感服し、慕っていたと打ち明け、法皇は急に機嫌がよく笑顔になります。

挨拶の途中ながら、今様の芸者たちが勢ぞろいし、泰衡の前で舞いが始まります。文化が盛んな平泉でもさほど見られないもので、泰衡は目を輝かせます。そこに席を外していた基房が慌てて戻って来ました。「清盛が……寂滅いたしましてございまする」 法皇は、これ以上めでたいことがあろうかと、清盛の死出の旅路の角付けにとにぎやかに盛大に舞わせます。

鎌倉では、未だに動かない頼朝に義経が意見していました。世の中は飢饉で食糧難なのにどうして兵を動かせるかと頼朝は反論しますが、そこに安達盛長が報告します。京の三善康信から清盛が病死したとのことです。家臣全員が大喜びする中、義経は「源氏一門の仇はとうとうこの世から姿を消してしまったのだぞ! 平家一番の仇はいなくなってしまったではないか!」と腹を立てます。

泰衡のいない平泉にも、清盛の死が伝わります。清盛の死は平家凋落の兆し、後継者の平 宗盛に源氏一門がどう立ち向かうか──。国衡は今のうちに義仲を追討して、源氏の勢力を弱めておく必要があったのにと悔しがります。基成は、今こそ平泉の動きが天下を決める時だとして、取るべき道を間違えないように秀衡に注意喚起します。

伊勢・二見浦で基顕と合流した泰衡ですが、そのころ秀衡が橘似に流させていた、秀衡が2万の軍勢で白河の関を越えたという噂が届き、少しその薬が効きすぎではないかと心配します。そこに外出から戻ってきた西行は、兵の力で国を治めるのが下の下なら、文化の力で天下を治めることこそが最高であり、文化の力こそが国を守ると泰衡に説きます。

西行は泰衡に、政治問答集『貞観政要』を読むよう勧めます。「文化を滅ぼすは兵力、その兵力で天下を治めてきた者は民衆に嫌われ、歴史上でも低い評価しか得られぬ。真に国を富ませ民の暮らしを豊かにするのは弓矢の力ではなく文化の力なのじゃ。平泉にはそれがある!」 西行の説得に、泰衡は信じてみたいと目を輝かせます。


脚本:中島 丈博
高橋 克彦 作 「炎立つ」より
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
渡辺 謙 (藤原泰衡)
野村 宏伸 (源 義経(九郎))
中嶋 朋子 (薫子)
三浦 浩一 (藤原国衡)
中川 安奈 (亜古耶)
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紺野 美沙子 (橘似)
柳生 博 (西行)
本郷 功次郎 (北条時政)
寺泉 憲 (藤原基房)
中原 丈雄 (藤原基顕)
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長塚 京三 (源 頼朝)
真野 響子 (倫子)
中尾 彬 (後白河法皇)
林 隆三 (藤原基成)
渡瀬 恒彦 (藤原秀衡)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:村山 昭紀
    :NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:吉村 芳之

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第28回「兄と妹」

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