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2024年11月22日 (金)

プレイバック春日局・(45)三代目の力

【アヴァン・タイトル】

東京都千代田区紀尾井町。都心部に位置するこの一角には、広大な敷地を持つホテルや大学が立ち並んでいます。いずれも江戸時代の大名屋敷の跡地です。現在ほとんどの大名屋敷は、大きな公共施設などにその姿を変えています。

この一角は、紀伊、尾張、井伊の三つの大名家にちなんで、明治以降「紀尾井町」と呼ばれるようになったのです。寛永12(1635)年に制度化された参勤交代で、大名は長期の江戸滞在を命じられ、それにつれ大名屋敷が増えていきました。江戸の都市人口はおよそ50万人。武家地が全面積の7割を占める一方で、ほぼ同数の町人地は2割にも満たないものでした。

武士の消費生活を支えるために、多くの町人が狭い土地で活発な経済活動を行っていたのです。江戸の人口は家光の時代から40年後の元禄年間、100万を超え、江戸は世界一の消費都市になっていったのです──。


父・徳川秀忠の死から2年半の寛永11(1634)年7月、徳川家光は30万の大軍を従えて上洛します。安定した江戸幕府を天下に誇示する場となりました。おふくの部屋子として修行中のお楽は、将軍と聞いてもいまいちピンと来ず、的外れなことを聞いたりして他の侍女たちに笑われてしまいます。そこに祖心尼が来て呼び出されます。お楽はまだ仕事が残っているのにと大きくため息をつきます。

大奥に勤める侍女たちの多くは旗本の子女で、行儀作法・読み書き・武芸などは一通りわきまえていて、それだけにお楽には一日も早く女子のたしなみを身につけなければならないわけです。奥へ上がって早2か月、なぜおふくは自分を望んだのか分かりかねています。親のために奉公したのではなかったのかと祖心尼に諭され、一度はやる気を見せますが、うまくいかず悔しい思いをします。

京から江戸へ戻る将軍の行列とかち合い、夕暮れに新宅に帰って来た七沢作兵衛とミツです。目の療治もでき、食うものに困らない生活を送っているとはいえ、やはりお楽を奉公に出すのではなかったと作兵衛は後悔します。ミツは、大奥奉公はただでさえできるものではなく、心がけ次第では大奥で取り立ててもらうことも夢ではないと諭します。「どれほどの幸せか……女子の冥利にございます」

家光が江戸城に戻って来たというのに、老中酒井忠世が姿を見せません。土井利勝によれば、江戸城留守居役でありながら先日の西の丸出火の責任を取り、寛永寺に蟄居しているとのことです。家光は主君より預かった大事な城を捨て、寺に蟄居とは何ごとかと火に油を注ぐ結果になります。家光は、もはや出仕には及ばぬと忠世に隠居を命じます。

江戸城本丸の増築では諸大名に相当な賦役(ふえき)を課せられ、さらに参勤交代でも莫大な出費になるとおふくは懸念します。家光は諸大名が財を蓄えれば謀反の元だとあっけらかんと返答しますが、各地は天候不順で凶作でもあり、飢饉にでもなればその過酷な賦役(ふえき)が農民を苦しませることになるのではないかと問題提起するのです。家光はうーんと考え込んでしまいます。

本題はここからで、おふくは柔和な表情に変わり、上洛も済ませたためお振をおそばにと差し出そうとしますが、一方の家光は表情を固まらせます。「東照宮造営を果たしてからと言うたはず」と家光は立ち上がり、そのまま部屋を出ていきます。黙って家光を見送るおふくですが、おふくにはこのまま引き下がるつもりは全くありません。

日光東照宮造営には、総工費70万両、1年半の見積もりです。江戸城増築ですでに諸大名に相当額の負担を強いていることから、家光はこの70万両について、大名への賦役を課さず寄進も受けず、徳川の力だけで建てたいと言い出します。東照宮造営は家光の仕事であり、自分の力で果たしたいという思いがあるのです。利勝は黙って受け入れ、家光は満足げに頷きます。

 

東照宮造営はその年の11月に始まり、急ピッチで工事は進められます。そして着手して1年半後、無事に完成した東照宮に家光やおふく、老中や諸大名が社参し、盛大に遷宮の儀式が行われます。改めて社殿を見上げて、家光はとても満足そうです。おふくも三条西実条も、東照宮内部のち密な細工に思わずうなります。

宿舎に戻った家光は、東照宮は徳川の力だけで建てたものだと胸を張ります。おふくは、東照宮をこの目で見ることが出来てここまで生きた甲斐があったと涙を浮かべます。ただひとつ無念であるのは、この壮大な東照宮を若くしてこの世を去った稲葉正勝にも見せてやりたかったことです。そこに「是が非でもお目通りせねばならぬ! 家光公!」と伊達政宗が無理に参上します。

政宗は仙台に62万石を拝領していますが、それだけに家康への思いが強く、今回の東照宮造営にも力を貸したかったわけです。せめて灯篭1基だけでもと持参したものの、それさえも断られてしまった政宗は、灯篭奉納を求めて参上したのでした。家光は寄進を受ければ諸大名こぞって続き、それは家光の翻意ではないと改めて断りを入れます。政宗は家光の気概に感心し、大笑いして引き下がります。

武家伝奏役の実条は、年齢的に役目の辞退を考えています。朝廷と幕府の関係も家光の上洛により好転し、東照宮も造営を果たして、家康に勝るとも劣らない将軍になったと実条は目を細めます。おふくが実条の仲介で乳母として上がったとはいえ、おふくの人生の道を誤らせてしまったのではないかと実条は後悔することもありますが、「みなわたくしが選んだ道」とおふくは微笑みます。

 

お楽が江戸城に上がって2年、祖心尼はひと通り教育し終え、おふくの身の回りのお世話の役目へ移ることになりました。身体を使った奉公が性に合っていると、お楽は下働きのままでいいと頭を下げます。ちょうどおふくが日光から帰ってきて、湯を使うおふくの着替えの支度を命じられ、お楽の主張は相手にしてもらえません。

奥の侍女たちは、お楽は大した出世だともてはやしますが、本人からすれば、おふくや祖心尼の周りで奉公するのは息が詰まりそうだと、ついつい愚痴も吐きたくなります。ただ、どれだけ祖心尼に仕込まれても、おっちょこちょいさは相変わらずのようで、せっかく用意した膳も転んでひっくりかえしてしまいます。

家光の女性に対しての拒絶反応を見ていると、お楽を家光と会わせるのはまだまだ先のことになりそうです。祖心尼は、仕事はいやいやながらきちんとやるようにはなったものの、奥の務めは諦めた方がとおふくに進言します。「上さまのお心を動かすは、紫どのに生き写しのお楽よりほかにおらぬと思うております。これからはわたくしが仕込みます」

家光は、蟄居を命じた忠長に連座した家臣たちを赦すことにしましたが、稲葉正利だけがその赦免を断ってきました。おふくは、亡き主君に殉ずることも許されず、一生を罪に服して生きていくのが正利自身が考えた道だと代弁し、正利への温情だと赦免を取り下げるよう頭を下げます。「母として正利に何もしてやれませなんだ。せめて今、正利の思う通りさせてやるが、ふくの罪滅ぼしにございます」

 

その年も大みそかを迎え、おふくはお楽に年末の憂さ晴らしだからと、他の奥女中たちと楽しんで来るように伝えます。女中たちが持ち芸を披露したりする大騒ぎであり、おふくたちは全く知らないことということは無礼講なのです。ニコニコ顔のお楽ですが、女中たちは必ず芸を披露しなければならないというしきたりをお楽に教えます。「できぬでは済まぬ! 芸がなくば裸踊りじゃ! ハハハ」

予定通り奥の年越しが始まります。いつになく歓声が上がるのに家光が気づき、覗いてくるか、と席を立ちます。そしてその座敷ではお楽が舞台に引きずり出されていました。困惑するお楽は、横にあった太鼓をドドンと叩き、お楽が産まれた在所の浅草桔梗刈萱の麦つき歌を歌います。女中たちからも手拍子が起こり、座が盛り上がります。

その様子をこっそり覗く家光は、輪の中心にお楽が歌い踊っているのを見て、目が釘付けになります。紫──家光が愛した遊女・紫の顔が家光の脳裏をかすめます。「……まさしく紫じゃ!」と駆け寄ろうとするのを、松平信綱らは必死に引き止めます。

お楽の麦つき歌は、おふくの居室にまで聞こえてきています。にぎやかな歌じゃ、と気にする様子もありませんが、祖心尼は家光の居室に聞こえなければいいがと気がかりです。今夜ぐらいはお許しくだされよう、とおふくは笑顔です。
思いがけない家光とお楽の出会いは、ふたりの運命を変えることになります。


原作・脚本:橋田 壽賀子「春日局」
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
大原 麗子 (おふく)
江口 洋介 (徳川家光)
若村 麻由美 (お楽)
岩本 多代 (ミツ)
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中条 きよし (土井利勝)
橋爪 淳 (三条西実条)
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金田 龍之介 (伊達政宗)
伊東 四朗 (七沢作兵衛)
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制作:澁谷 康生
演出:小見山 佳典

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『春日局』
第46回「忘れえぬ面影」

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