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2024年11月27日 (水)

プレイバック春日局・(46)忘れえぬ面影

【アヴァン・タイトル】

ここは『春日局』でおなじみのコンピュータ・グラフィックス映像を作っている部屋です。今日はこのコンピュータを使って、江戸城の大奥を探検してみることにしましょう。「よろしくお願いします」「はい」

大奥で最も特徴のある建物、長局(ながつぼね)。ここは大奥に勤める女性たちの住まいで、中は同じような間取りの住居が何軒も並んだ、長屋のようになっています。一軒の間取りは、まず右側が炊事・洗濯など水回りのスペースです。ここは台所。廊下を渡ってここはお手洗い。その隣、壁の向こうは風呂場です。ここから奥は居間や応接の間などが続きます。ある程度の身分の女性はこうした住居をもらい、下働きの者とともに暮らしました。

多い時には数百人が住んだという長局。そこはまさに女性ばかりの集合住宅だったのです──。


寛永13(1636)年12月。大晦日の夜遅くで位牌に手を合わせていたおふくは、突然徳川家光から召し出されます。あれはまさしく紫じゃと家光はつぶやき、もちろんおふくは、それがお楽のことだと気づきますが、どこの女子じゃ、と問われてもそれには答えず、将軍のそばに上がるにはそれ相応の器量を持たなければならないと諭します。「何とぞ今しばらくご猶予いただきまするよう。奥には奥のけじめがございます」

おふくが何と言っても、将軍にしきたりは無用と家光は反論します。今すぐ会うという家光と、会わせぬというおふくの攻防があるころ、お楽は同じ長局で暮らす女中たちと酒と肴で盛り上がります。そこに祖心尼が現れ、くつろいでいるところすまぬと断ったうえで、お楽を呼び出します。結局はおふくが折れたようです。

お楽は、家光の待つ居室へおふくとともに現れます。おふくはもう用なしとばかりに下がるよう命じられますが、おふくは断固として拒否します。しかし結局は従わざるを得ず、お楽に「粗相のないように、頼みましたぞ」と言い残して部屋を出ていきます。お楽は何のことか全く分からないまま、家光のみがいる居室に残されてしまいます。

帰ろうとするお楽を引き止める家光は、そなたに巡り合うのを待っていたとお楽を抱きしめようとします。突然のことで動揺したお楽は家光を平手打ちし、次の間に控えていた松平信綱らが飛び込んできます。「上さまだか将軍さまだか知らないが、何でも勝手にできると思うは大間違いじゃ! 何ゆえこのような……」と涙ながらに訴えます。

今日限り暇(いとま)をいただくと部屋を出ていくお楽を、捕らえようとする信綱ですが、家光がそれを止めます。わしが悪かった、許せ、と家光が詫びると、お楽は座り直して頭を下げ、部屋を後にします。「まこと紫に生き写しじゃった……暇を取りたくば取らせてやってくれ……わしの詫びの気持ちじゃ」

 

城を出る決意を固めたお楽と、おふくは単独で対面します。お楽を部屋子として預かったのはいつか家光の側室に上げるためだったと打ち明け、家光の紫との顛末を聞かせます。上野の花見でお楽を見かけたおふくでさえ、紫に生き写しだと思ったのです。家光の子を産んでくれる女子はお楽をおいて他にはいないと、おふくが諦めては徳川の世継ぎの望みは全くなくなってしまいます。

家光の心の傷を癒せるのはお楽しかいないと、願いを聞き届けてほしいとお楽に手をついて懇願します。はじめは「わたくしには関わりのないこと、これ以上お話を伺うても」と拒絶するお楽は、たとえ貧しくても両親とともに暮らし、額に汗かく男の女房となって肩を寄せ合って生きていくのが自分の願いと主張します。

自分の父が磔にされたこと、つくづく戦に嫌気が差し家族と肩を寄せ合って生きていきたいと願ったことは、お楽と全く同じです。浪々の身となった夫の仕官が叶うかもという望みで江戸城に上がり、今に至ります。「上さまにお子がおありなさらぬのでは、今まで上さまにお仕えしてきたふくの苦労も水の泡じゃ。その焦りがつい、そなたに身勝手な無理強いをさせることに……許してくだされ」

お楽の心を大事に思った家光も、暇が欲しければ取らせるようにとおふくに伝えたようです。おふくは「父上と母上を大切に。よいお人と夫婦になってくだされ」と優しく言葉をかけ、この2年の辛抱を労わり、礼を言います。涙を流してじっと聞いていたお楽は大泣きし、おふくはそばに寄ってお楽の肩をさすります。

 

寛永14(1637)年2月、おふくはお楽を付き添って鷹司孝子の居室に入り、お楽を“将軍付の中臈”として紹介します。常盤は、家光には女に興味がなく、お楽が一生を奥で無駄に過ごすことを承知でとおふくに皮肉を放ちます。孝子は自分が家光に相手にされておらず、妻としての役割をお楽に頼むことにします。

続けて家光とも対面しますが、すでに暇を取ったと思っていた家光はとても驚きます。おふくの説得に心を打たれたというお楽に、おふくの言いなりになったということか、と暇を取らせるよう求める家光です。「上さまのお言葉心外にございます。今度のことは私が選び、私が決めたこと。私のような女子のことを大事に思うてくだされた上さま……ただお世話をさせたいただきとうて」

中臈とはいえ、家光が奥で休息するときに役割があるだけで、それ以外はお楽は厨に出て下働きの女中たちと調理に携わります。女中たちは中臈の暮らしに興味津々ですが、お楽は未だにお手がつかず、そもそも家光は奥に渡ることがないらしい(常盤談)ので、特にこれといって支障はなさそうです。ただ心に傷を負った家光のことをいたわしいと感じる気持ちが、お楽に芽生え始めていました。

お楽が中臈に上がったと文で知らされ、七沢作兵衛はようやくおふくの思惑に気づきます。おふくに初めからそうするつもりでなければ、たかが部屋子に上がるだけで家をもらい、目の治療もさせてもらえる理由がないわけです。春日局という女子、許せぬと怒りを露わにする作兵衛と、お楽にはお楽の思いがあって受けた話だと、あくまでお楽を信じるというミツです。

家光とお楽が対面して1か月、ようやく家光が奥に泊まると申し越しがあり、お楽を召し出してきました。「改めて何も言うことはない。上さまの仰せの通りに。末永う上さまに愛おしんでいただけるよう」とおふくはお楽を送り出し、白装束姿のお楽はおきくの先導で暗い廊下を進んでいきます。

「何じゃその装束は」と家光は驚きます。お楽は「楽という女子を愛おしんでいただけるのなら女子の冥利、紫どのの代わりにしかなれぬのなら、このままお暇をいただきとうございます」と告げます。家光にはお楽に夜伽(よとぎ)を務めさせるために呼んだわけではなく、お楽のことをよく知るために語り明かしたいと呼んだわけです。

家光はお楽とざっくばらんに語り明かして、だんだんと冷たい心が癒されているような感覚になります。この日から家光はたびたび奥に泊まるようになり、その時はお楽が必ず召し出されるようになりました。春日局の部屋子に将軍のお手がついたといううわさは、江戸城内にとどまらず諸大名の間にも広がり、将軍寵愛の部屋子を出したことでおふくの権勢はますます強くなっていきます。

 

おふくの権勢は老中たちを凌ぐものになり、諸大名からの寄進も莫大なものになっています。それを良からずと判断した老中たちは、奥への進物を一切禁止と決めますが、金品をもらうのは長年の習わしによるもので、奥に勤める者へ相応に分配しているとおふくは反論します。進物禁止により女中たちからの仕送りが止まり、飢饉が続いて年貢米も滞り、旗本たちの暮らしがたちゆかなくなるのです。

私情におぼれていては悪弊を絶てないと堀田正盛は言い張りますが、おふくは「黙らっしゃい!」と一喝します。しかしおふくの権勢を見過ごせない信綱は、幕府の法度として決めたことであり、おふくにも従ってもらうと引きません。幼少のころからおふくの子と同様に育てられた信綱ら若手老職の面々の裏切りに、おふくは大きな衝撃を受けます。古いものを捨て新しい秩序を求めていました。


原作・脚本:橋田 壽賀子「春日局」
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
大原 麗子 (おふく)
江口 洋介 (徳川家光)
若村 麻由美 (お楽)
岩本 多代 (ミツ)
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中田 喜子 (鷹司孝子)
伊東 四朗 (七沢作兵衛)
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制作:澁谷 康生
演出:一井 久司

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『春日局』
第47回「反逆の理由」

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