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2024年12月 1日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(46)刀伊の入寇 ~異人の急襲 まひろと周明は~

大宰府に着いて市場を見て回るまひろは、その中に越前で出会った周明の姿を発見します。顔を見て固まった周明はまひろに、自分のことを恨んでいないのかと尋ねます。20年前、宋と交易をするためにまひろを利用していたことがばれ、壺の破片で脅したのです。まひろは20年前のことだし当時は周明も苦しかったのだろうと慮ります。「無事でよかった」

あれから朱 仁聡は博多から宋に帰り、周明は対馬に帰りますが、周明のことを知る者は誰一人としておらず、再び大宰府に戻って来たわけです。通詞として働いていたら宋から目の名医・恵清が来て、薬師としてもう一度やり直すことにしたそうです。ここには居場所があるのだとまひろは安心します。

周明の案内で大宰府政庁に向かいます。越前よりも立派な作りにまひろは感心します。中には博多津からご機嫌伺いに大宰府に来ている宋の商人たちも数名いて、片隅では男たちが剣の稽古をしています。まひろはその中に双寿丸の姿を発見し、声をかけます。今のところは手柄なしの双寿丸ですが、女房として宮中に上がった賢子のことを聞いて、大人になったのかなと笑います。

稽古中の武者たちに酒が振舞われますが、持ってきたのは大宰権帥の藤原隆家です。周明の横にいるまひろを見て、隅に置けないなとニヤリとしますが、まひろが太皇太后彰子の女房・藤式部であることに気づきます。隆家は太閤藤原道長から、旅の安全をはかり丁重にもてなせとのお達しがあり、隆家はまひろと周明を屋敷に招きます。

出された初めての宋の茶を飲むまひろは、その味に目を白黒させます。隆家は周明の師・恵清に目を治してもらったわけですが、再び見えるようになって、内裏の狭い世界で位を争っていた日々をくだらないと思うようになりました。隆家は有力者からの賄賂も受け取らず、私財を投げうつ身ぎれいな人物で、武者たちはそこにほれ込んでいるようです。「富なぞいらぬ。仲間がおれば」

まひろは隆家から、道長が出家したことを聞かされ絶句します。都を出る時はまだ出家していなかったのです。父・藤原道隆も、兄・藤原伊周も病で亡くしている隆家は、栄華を極めても病には勝てないというのが、もしかしたら宿命なのかもしれないと考えています。隆家はまひろのために宿舎も用意してくれ、一緒に泊まるか? と周明をからかいます。

夜にはまひろの歓迎の宴が開かれます。周明や恵清にとっては何の踊りなのかは分かりませんが、楽しげです。隆家は、いくら亡き夫がいた場所だからと大宰府に来る女は尋常ではないと、まひろに何らかの理由があるのだろうと推測します。ドキッと固まるまひろですが、大宰府にいたいだけいろと声をかけると、隆家は踊りの輪の中に入って楽しみます。

まひろは風に当たりに宴を抜け、月を見上げます。そこに現れた周明は、“太閤さま”とは誰なのかと尋ねます。太閤さまの具合が悪いと聞いてまひろの顔色が変わり絶句したのを見ていたのです。まひろは、かつて周明が会わせろとまひろを脅した(当時の)左大臣であるとは説明せず、自分が仕えていた太皇太后さまの父君と回りくどく説明します。

続いて周明は、源氏の物語についても質問します。隆家たちを追いやったらしいという情報だけが周明の耳に届いているのです。まひろにはそういうつもりで書いた物語ではないと否定しますが、物語が人を動かすこともあるかもしれないと考えもします。ただ実際に人を動かしたのかと言われれば、うーんと考え込んでしまいます。まひろは雲にかかった月を見上げます。

そのころ道長も、雲にかかる月を見上げていました。源 倫子は、道長の出家を強く止めはしましたが、今の様子を見ているとこれでよかったのだと感じずにはいられません。道長は穏やかな表情で、心配をかけたな、と倫子を労わります。倫子はフッとほほ笑んで、首を横に振ります。

 

あくる日、まひろはけが人の手当てをする周明の様子をこっそり伺います。その後周明と大宰府政庁を歩くまひろですが、従者乙丸は「あの!」と呼び止めます。どうやら京で待っているきぬに土産を買いたいようです。周明とまひろが見守る中、乙丸はいろいろ品定めをして、きぬに似合いそうな口紅を買っています。

まひろは、そろそろ大宰府を出発しようかと考えています。友であったさわが亡くなった松浦(まつら)を見に行くのです。ただ陸路はいろいろと危険があるようで、松浦に行くには船がよいと周明は提案します。松浦に行ける船越の津まで送ると言い、まひろもありがたくその好意を受け入れます。

まひろたちは、船越の津に向かって大宰府を発った。しかしそのころ。大宰府政庁には、片足を引きずりながら歩く島分寺の常覚が現れ、隆家に対面を求めます。3月末に壱岐に賊が襲来し、子どもや年寄りは全て殺され、他の者は連れ去られると訴えます。しかも作物も牛馬も食い尽くされ、僧たちもみんな殺されてしまったそうです。

常覚は命からがら小舟でたどり着き、大宰府に来たというわけです。壱岐の国守も殺されたと聞いて隆家は青ざめます。高麗が攻めてきたのかもしれない……。ともかく、博多を攻められてはまずいことになると、隆家は警固所に向かうことにします。さらに筑前・筑後・豊前・肥前の国守に兵を集めるよう命じます。刀伊(とい)の入寇(にゅうこう)の始まりである。

じき兵たちが集められ、隆家を先頭に博多の警固所に進軍します。その中に双寿丸の姿もあります。夕方、隆家軍が博多警固所に到着した時には、賊は能古島(のこのしま)に向かったとのことで、志摩の文屋忠光(ふんやのただみつ)が、賊のひとりの首を隆家に持参します。隆家は忠光を労(ねぎら)いますが、対馬から壱岐、能古島と次第に博多に近づいているのは確かです。

賊の船が動き出したと聞き、隆家は警固所の櫓(やぐら)に登ります。能古島の島影から無数の船がじわじわとこちらに向かって来ているのが見えます。しかし各地の国守に求めた兵たちが来ません。出陣する、と隆家は立ち上がります。「小勢でも今我らが討って出て食い止めねば、陸(おか)に上がられては無辜(むこ=何の罪もない)の民に害が及ぶ」

無数の小舟が博多の浜にたどり着き、賊たちが次々と降りて陸に上がってきます。丘の上からその様子を見ていた隆家は、弓を引き絞って矢を放ちます。ヒューッと風を切る音が賊の間近で聞こえ、うろたえた賊たちはあたりを見回します。鏑矢(かぶらや)に慄(おのの)いていると見た隆家軍は矢を射続け、一斉に攻撃をかけます。陸地で斬り合い、浜と海とで矢の射かけ合いです。

銅鑼(どら)の音が鳴り響き、男たちの雄叫びが上がる中、賊が斬られ、隆家軍の兵たちが矢を射られ、倒れていきます。双寿丸は果敢にも敵に斬りかかり、何人も倒していきます。

 

赤染衛門に命じていた道長についての物語が出来上がりますが、道長の栄華の物語を望んでいたはずが、倫子が思い描くような出来栄えではなかったようです。藤原について書くなら大化の改新から書きたいと考えていた衛門は、それでも全ては書ききれないと思い直し、宇多天皇の時代から書き始めたようです。倫子は、道長が生まれた時の村上天皇の時代からでよいのでは? と提案します。

『枕草子』が亡き皇后定子の明るく朗らかな姿を描き、『源氏物語』が人の世の哀れを大胆に描いたのなら、衛門に課せられた使命は、歴史書を書くことだと解釈したのです。かな文字で描く史書はこの世にまだ存在しておらず、それだけに後世に語り継がれるものになるのは必定なのです。衛門の必死の説得に、ポカンとした表情を浮かべる倫子は、「もう……衛門の好きにしてよいわ」とうつむきます。

賊を能古島に追い返し、隆家が家臣たちを労っているころ、ようやく財部弘延(たからべのひろのぶ)と大神守宮(おおがのもりみや)が兵を率いて到着しました。遅い! といらだつ家臣たちを横目に、よく来てくれたと隆家は歓迎します。能古島からさらに追い払うには戦船が必要で、弘延はその用意を承諾します。かつての大宰権帥であった菅原道真の御霊(みたま)の助けも借りるため、祈祷もさせます。

志摩、博多を攻められないとすると、賊が次に攻めてくるのは船越の津あたりと思われます。その船越の津にたどり着いていたまひろと周明は、雨に降られて小屋で雨宿りしていました。博多に来て20年、当時の左大臣が今の太閤であるとすると、なぜ思い人の妻になれなかったのかと周明には疑問です。まひろはそれには答えず、物語を書くことで自分が自分である意味を与えてくれたと説明します。

そんなまひろが都を出たのは、若いころは道長に、偉くなって世を変えてほしいと言ったのに、いざ偉くなってみたらそれがむなしく感じられたのです。そう思う自分にも嫌気が差し、道長から離れたくて都を出たのでした。「それだけ慕っていたのだな。捨てたか捨てられたかも分からないのか。そんなことしてたら、俺みたいな本当の独りぼっちになってしまうぞ」

まひろの本音は、これ以上道長の役に立つことは何もないし、都には自分の居場所もなく、何かを書く気力も湧きません。私はもう終わってしまった。終わってしまったのに、それを認められない──。涙ぐむまひろに周明は、まだ命はあるのだからこれから違う生き方もできると励まします。「お前がこれまでやってきたことを書き残すのはどうだ? そういうのを書いてる間に、何かよい物語が思い浮かぶかもしれない」

翌朝。船が集まり、隆家は源 為賢に能古島に向けて船を出して賊を追い払うよう命じます。ただし、対馬から先には進まないようくぎを刺します。対馬から先は高麗の海であり、行き過ぎてはこちらから異国に戦を仕掛けることになってしまうわけです。

船越の浜辺を歩くまひろと周明、そして乙丸です。あと少しで港というところで、周明はまひろに、松浦に行って思いを果たしたら必ず大宰府に戻って来いと送り出します。その時に話したいことがある、と伝えたところで、人々の悲鳴が聞こえます。振り返ると民たちが必死に逃げてきます。周明はまひろの手を取ってかばいますが、目の前で民が射殺されてしまいます。

草むらから出てきたのは、賊の一味でした。まひろたちは追い詰められます。前には賊、後ろは海、逃げ場所はありません。周明はまひろを守っていますが、それもついに……という瞬間、双寿丸たち為賢の軍勢が賊を倒しに駆けつけます。斬り合いの中を周明はまひろの手を取って逃げ出しますが、岩に足を取られ倒れたまひろに手を差し出した時、周明の胸を矢が貫きます。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ/藤式部)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
竜星 涼 (藤原隆家)
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松下 洸平 (周明)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:葛西 勇也・高橋 優香子
演出:中島 由貴

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第47回「哀しくとも」

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