大河ドラマ光る君へ・(48)物語の先に [終] ~まひろ 道長との絆は永遠に~
大宰府の旅で心配をかけた太皇太后彰子や北の方源 倫子に挨拶のため、藤式部(まひろ)は土御門殿に向かいますが、そこで太閤藤原道長と再会します。言葉を交わすことなく近づく二人ですが、そこで運悪く倫子に呼ばれてしまいます。藤式部は道長のことを気にしながら倫子のところへ向かいます。
寛仁4(1020)年。対面に来た藤式部に倫子は道長との関係性を直球で尋ねます。かつての友であった本名で「まひろさん。殿の妾(しょう)になっていただけない?」と頼みます。まひろが妾になってくれたら、少しは道長も力をつけてくれるかもしれないという一縷の望みからの言葉なのです。いつごろからそういう仲になったの? と問われ、藤式部はぽつりぽつりと道長との関わりを話し出します。
初めて会ったのはまひろが9歳の時で、小鳥を逃がして泣いていたまひろに優しくしてくれた三郎(道長)ですが、再会を約した日に母が殺され会えずじまい。しかし母を殺した相手は三郎の兄であり、散楽の男が亡くなって二人で葬るなど、悲しみを分かち合えるのがお互いしかいなかったわけです。
彰子は知っているの? あなたはどういう気持ちであの子のそばにいたの? あなたは本心を隠したままあの子の心に分け入り、私からあの子を奪っていったのね。私たち、あなたの手のひらの上で転がされていたのかしら……。慌てて否定する藤式部ですが、賢子が道長の子であることまでは伝えられませんでした。倫子は藤式部を見据えます。「このことは死ぬまで、胸にしまったまま生きてください」
道長が囲碁を打っているところに倫子が来ました。何の話をしていたのか気になる道長ですが、昔語りをしていたと微笑みます。倫子は話を変えて、裳着の儀の済んだ嬉子(よしこ)はいつでも東宮に奉れると藤原頼通に頼むと道長に伝えますが、その様子がおかしいと道長は気づきます。東宮は道長家の孫ですが、次の帝もその次の帝も我が家から出そうというのが倫子の野望です。
帰宅したまひろは母ちやはの琵琶を弾いていますが、心が乱れている様子は、きぬの目から見ても明らかです。まひろは琵琶を少し乱暴に弾いて、弦が1本切れてしまいます。
陣定で居眠りばかりする左大臣・藤原顕光は、頼通に叱責され辞表を書かされます。そのことを喜々として道長に報告する藤原道綱は、25年もの間 大納言だったのだから、大臣になれないかな? とニヤけながら頼通への口添えを頼みます。ただ25年も大納言であったということは、大臣など所詮は無理な証だと道長は取り合いません。「ちょっとだけでいいよ。すぐ辞めるから。ふたつきや みつきで!」
5年後の万寿2(1025)年。東宮の后となった道長と倫子の4番目の娘・嬉子は、皇子を産んだ。しかしその2日後、わずか19歳で世を去った。皇子を産みこれからだという時の嬉子の死は、道長をどん底に落とし、倫子を激しく悲しませます。さらに2年後の万寿4(1027)年。後一条天皇のもと、道長時代の公卿は実資・斉信・行成だけとなり、道長の息子たちが政の中心を占めるようになっていた。
源 俊賢は、道長と明子の子(藤原頼宗・能信)が立派になった姿に目を細めます。道長からは冷遇された彼らも、頼通のおかげで公卿になれたという側面もあり、俊賢は明子に道長を恨まないようにたしなめます。よくよく考えれば俊賢も明子のおかげで公卿になれたわけで、礼を言うと頭を下げますが、「何を今さら」とわざと睨みつけて頼宗らを笑わせます。
亡き妹・嬉子の皇子・親仁(ちかひと)を引き取った彰子は、2人目の女院となった。賢子は、高貴な姫たちを差し置いて御乳母(おんめのと)に任じられた。幼い親仁を“高い高い”して遊ぶ越後弁(賢子)を、道長は「危ないではないか」とたしなめますが、藤式部の娘だから万事はっきりしていると彰子の信頼の高さが伺え、それを耳にした道長も納得せざるを得ません。
そんな越後弁ですが、廊を歩く頼宗を無人の局に引きずり込みます。越後弁は頼宗のみならず、藤原定頼や源 朝任とも歌を交わすなど、複数の男たちにアプローチしていますが、それを頼宗に指摘されると越後弁は、私は“光るおんな君”ですもの、とニヤリとします。
倫子の依頼を受けて道長の栄華物語を執筆する赤染衛門ですが、嬉子崩御のくだりを読み聞かせると、倫子は涙をぬぐっています。衛門はやめておいたほうがと進言しますが、そのままでいいとの倫子の返事です。そもそも衛門は『枕草子』『源氏の物語』のように世に受け入れられるか不安ですが、倫子は衛門を激励します。「自信を持ちなさい。見事にやってくれています。あなたは私の誇りだわ」
まひろの屋敷で『源氏の物語』について批評する娘・ちぐさがいます。この娘は菅原孝標(すがわらのたかすえ)の娘で、後に『更級(さらしな)日記』の作者となる。目の前にいるまひろがその作者であることを知ってか知らずか、この作品についてあれこれと推測し、まひろを喜ばせます。「つまり光る君とは女を照らし出す光だったのです!」
ちぐさと入れ替わりにききょうが遊びに来ました。ただ座るだけでも膝が悲鳴を上げ、あたたたたと情けない声をあげるききょうです。ききょうが仕える脩子(ながこ)内親王もお健やかに過ごしているようです。道長が左大臣の時代にさんざんひどい目に遭ったことを思えば今は夢のよう、と毒舌ぶりも相変わらずです。
お暇そうだけど、もうお書きにならないの? と尋ねるききょうは、亡き定子のように自分の心を書き立てる人物もおらず、もう書く気も熱意もありません。とはいえ、『枕草子』も『源氏の物語』も一条天皇の心を揺り動かし、政さえも動かした実績があります。「まひろさまも私も大したことを成し遂げたと思いません?」「このような自慢話、誰かに聞かれたら一大事ですわ」と二人は笑い合います。
嬉子に続き、顕信と妍子(きよこ)も亡くした道長は、11月になって病が重くなり、自ら建立した法成寺(ほうじょうじ)に身を移した。屋敷でゆっくり過ごすまひろを、隆家が訪ねてきました。隆家は道長の具合が悪いことを伝えます。道長とまひろの関係を知らない隆家ですが、大宰府に来たまひろの面倒を見てやれということから推察したようです。
嬉子や妍子を立て続けに亡くし、「我が子を道具のように使うた因果だ」と考える隆家ですが、その点では自分は偉くならなくてよかったと思っています。隆家はすでに帥(そち)でもないし、先ごろ中納言の位も返上しました。内裏での空しい話し合いなどに出席しなくてもよくなり清々した心持ちで、隆家らしいとまひろは笑います。
横たわる道長の前で、たくさんの僧たちによる祈祷が行われます。倫子はその傍ら、まひろを呼び出します。祈祷はもういらないと、生きる望みすら失っている道長のために、自分は最後に何ができるかを考えていたら、まひろの顔が浮かんだそうです。「殿に会ってやっておくれ。頼みます。どうか殿の魂をつなぎ止めておくれ」
病の床に臥せる道長のもとを訪れたまひろは、道長との関わりをすべて倫子に話したと打ち明けます。道長は弱々しく手を伸ばし、先に逝くぞとつぶやくと、その手をしっかりと握るまひろの目から大粒の涙がこぼれます。「光る君が死ぬ姿を描かなかったのは、幻がいつまでも続いてほしいと願ったゆえ……私が知らないところでお亡くなりになってしまったら、私は幻を追い続けて狂っていたやもしれませぬ」
都を干ばつが襲い、引退した安倍晴明に雨乞いの祈祷をさせる際に「私の寿命を10年やろう」と言ったことを、やらねばよかったと道長は何度も悔やんでいたそうですが、「俺の寿命は……ここまでなのだ」と悟ります。
この世は何も変わっておらず、自分は今まで何をやってきたのかと自分を責める道長ですが、戦のない泰平の世を守り抜く見事な治世だったし、何より道長がいなければ源氏の物語は生まれなかったのです。物語は書いていないというまひろに、道長は新しい物語があれば生きられるやもしれぬと微笑みます。「では今日から考えますゆえ、道長さまは生きて私の物語を世に広めてくださいませ」
翌日、道長に授けられた扇を持参したまひろは、口頭で物語を紡ぎます。「『昔、あるところに三郎という男子(おのこ)がおりました。兄が二人おりましたが、貧しい暮らしに耐えられず、二人とも家を飛び出してしまいました。父はすでに死んでおり、母一人、子一人で暮らしていました』……続きは、また明日」
「『三郎はこれまでに味わったことのない喜びを感じていました。散楽の者たちは都を出ていくことに決めました』……続きは、また明日」
ある日、道長は無気力で「生きることは……もうよい」とつぶやきます。その言葉にまひろは涙を浮かべつつ、物語の続きを語り始めます。「『川のほとりで出会った娘は、名を名乗らずに去っていきました。三郎がそっと手を差し出すと、なんとその鳥が手のひらに乗ってきたのです』……続きは、また明日」 道長はそっと目を開き、まひろは少し安堵します。
雪がしずしずと降る夜遅く、倫子が道長の病床に入ると、衾(きん=掛け布団)から手が出ていることに気づきます。倫子がその手に触れ、悟ったように衾の中に差し入れます。道長に向かって深々と頭を下げる倫子です。
長年、道長に仕えてきた行成も昏倒し、そのまま息を引き取ります。公任や斉信は、同じ日に亡くなるとは 行成は心底道長に惚れていたんだな、と笑いますが、一方で道長によく尽くしたと評価します。
見し人の
亡くなりゆくを 聞くままに
いとど深山ぞ さびしかりける
消え残る
頭の雪を 払ひつつ
さびしき山を 思いやるかな
公任と斉信は、道長や行成に追悼の意を込めて献杯します。
長元元(1028)年。未だ皇子が生まれない帝のために、頼通は新たに女御を立てることを彰子に提案します。帝は申し訳なさそうにしていますが、彰子は「ならぬ」と一蹴します。他家を外戚とし、その女御が皇子を産めば、道長家を凌ぐことになり、皇統が2つに割れてしまう危険性をはらみます。帝の后も東宮の后も彰子の妹であり、皇統は後一条の帝ひとりで十分なはずなのです。
自分が鳥になって見知らぬ土地へ羽ばたこうと考えるまひろに、乙丸は子どものように「姫さま、私を置いていかないで」と訴えます。いとは乙丸の“姫さま”呼びが影響したのか、若さま(惟規)の姿を探していますが、まひろは為時を指さします。為時も特に指摘することなく、今日は休みなのだと笑います。
まひろは、土御門殿から里下がりしてきた賢子に、自分の歌を集めた冊子を託します。
めぐりあひて
見しやそれとも 分かぬ間に
雲隠れにし 夜半(よわ)の月かな
幼馴染のことを詠んだ歌ですが、母にも友がいたならよかったわ、と賢子は笑います。
頭に白いものが混じりだすまひろですが、結局はよぼよぼの乙丸を連れて旅に出ます。実にゆっくりした旅で、小休止している間にもまひろは筆を執り歌を詠みます。再び歩を進めるまひろたちですが、馬上の武士の一団がまひろたちを追い抜いていきます。かと思えば、そのうちのひとりが戻って来ました。よく見ると双寿丸です。
東国で戦が始まったらしく、双寿丸たちも朝廷軍に加わるべく先を急いでいたのです。そっちこそ気をつけてね、と送り出すまひろは、双寿丸たちの後ろ姿をずっと見つめていました。「道長さま……嵐がくるわ」
──完──
作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
テーマ音楽指揮:広上 淳一
テーマハーブ演奏:朝川 朋之
テーマピアノ演奏:反田 恭平
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
タイトルバック映像:市耒 健太郎
題字・書道指導:根本 知
時代考証:倉本一宏
風俗考証:佐多 芳彦
芸能考証:友吉 鶴心
建築考証:三浦 正幸
平安料理考証:井関 脩智
所作指導:花柳 寿楽
衣装デザイン:諌山 恵実
平安文学考証:高野 晴代
殺陣指導:鎌田 栄治
馬術指導:田中 光法
仏事指導:張堂 興昭
囲碁指導:甲田 明子
助産指導:三宅 はつえ
資料提供:黒須 友里江
[出演]
吉高 由里子 (まひろ/藤式部)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
南 沙良 (藤原賢子)
瀧内 公美 (源 明子)
金田 哲 (藤原斉信)
本田 大輔 (源 俊賢)
宮川 一朗太 (藤原顕光)
鳳稀 かなめ (赤染衛門)
渡邊 圭祐 (藤原頼通)
信川 清順 (いと)
矢部 太郎 (乙丸)
本多 力 (百舌彦)
上村 海成 (藤原頼宗)
吉柳 咲良 (ちぐさ/菅原孝標の娘)
伊藤 健太郎 (双寿丸)
見上 愛 (藤原彰子)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
姫子松 柾 (藤原教通)
木村 拓彰 (藤原公季)
蔵下 穂波 (きぬ)
瀧 七海 (藤原嬉子)
篠田 諒 (藤原資平)
古舘 佑太郎 (藤原通任)
植木 祥平 (源 道方)
秋元 龍太朗 (藤原能信)
豊田 雄大 (藤原長家)
高野 陽向 (後一条天皇)
林 観照
塩入 亮乗
松岡 広泰
御園生 亮敬
テアトルアカデミー
劇団東俳
劇団ひまわり
MIRAI
リバティー
麗タレントプロモーション
クロキプロ
ユニコンスター
撮影協力:岩手県 奥州市
:宮内庁京都事務所
:静岡県 富士宮市
岸谷 五朗 (藤原為時)
制作統括:内田 ゆき
:松園 武大
プロデューサー:大越 大士
:川口 俊介
美術:山内 浩幹
技術:平野 拓也
音響効果:柴田 なつみ
撮影:星 竜太
照明:内藤 宏
音声:和田 厚
音楽録音:伊藤 文王
映像技術:仲間 祐華子
カラーグレーディング:上田 達也
VFXコーディネーター:西垣 友貴
VFXディレクター:深瀬 雄介
VFXプロデューサー:結城 崇史
特殊メイク:江川 悦子
編集:石川 真紀子
記録:佐藤 由子
助監督:桜井 善悟
制作担当:豊田 周平
取材:加納 ひろみ
美術進行:山口 百合子
装置:舟橋 輝
装飾:大角 啓太郎
衣装:竹林 正人
メイク:永冨 美穂
かつら:宇津木 恵
演出:中島 由貴
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