プレイバック炎 立つ・第三部 黄金楽土 (34)泰衡の覚悟
文治3(1187)年10月29日、藤原秀衡が志半ばでこの世を去り、平泉の命運は泰衡に託されることになりました。泰衡は中尊寺金色堂で手を合わせ、平泉の平穏無事を祈り続けます。秀衡の生前、兄弟で争うことなく義経を主君とする起請文に署名し、神酒で飲み干したことを思い出す泰衡は、これからの平泉に不安を感じずにはいられません。
泰衡は鎌倉の頼朝に対面を求めます。しばらく待たされた後、宴会の席に呼ばれる泰衡は義経を赦免してほしいと頭を下げます。頼朝は泰衡に座興を求めますが、泰衡はかつて安倍頼時が戦を避けたいがために源 頼義に蝦漉舎人(えびすきとねり)の踊りを披露したにも関わらず、前九年の合戦に至ったことを持ち出します。踊りも披露するし恥もかくから、戦はしないと約束してくれるかと頼朝を見据えます。
そのころ義経は、国衡や忠衡、弁慶と酒を呑んでいます。義経が前に立てた鎌倉攻撃の軍略は、自分の強みを生かしたものだと胸を張ります。そこにふらりと現れたのは藤原基成です。基成は頼朝に反感を持つ刑部卿藤原頼経らを紹介し、頼朝の裏をかいて京で一旗揚げる策を提案します。国衡や忠衡は基成に反抗しますが、平泉と泰衡を守るためと、京に向かうことを義経に迫ります。
夜、義経が奏でる笛の音に誘われて、薫子がやってきます。今日は気分良く吹けたと満足げな義経に、もう一度と薫子は所望します。泰衡は半月ほどで鎌倉を後にし、平泉への帰路につきます。そして後白河法皇の院御所には、金と馬を献上しに橘似が来ていました。頼朝に強気に出られるために、義経を早く捕らえるなり追い払うなりするよう泰衡に伝えさせます。
文治5(1189)年2月。頼朝は、父祖頼義に倣って9月10日に厨川柵に到着するため、7月10日までに鎌倉に参着するよう全国の御家人に通達します。頼朝にはもはや義経のことなどどうでもよく、義経追討に歯向かう泰衡こそ追討すべきと、目標を泰衡に変えて追討の宣旨をいただけるよう手配します。
泰衡追討の宣旨など出せるはずがない! と法皇は大激怒です。しかも義経に味方する公卿らの官位もはく奪するよう求められ、それでは自分の近臣はいなくなってしまうと、法皇は聞く耳を持ちません。九条兼実は白けた顔で「ではそのように」と下がっていき、法皇は心からイヤな男だと吐き捨てます。頼朝は3月も4月も泰衡追討の宣旨を要求しますが、法皇は無視し続けます。
「全国の御家人に動員を!?」と泰衡の顔色が変わります。法皇がそれを認めないはずと泰衡は考えますが、奥州に義経がいる限り、法皇もどこまで頼朝の要求をはねつけ続けられるか分かりません。橘似は義経の身柄を自分に預けてほしいと申し出ます。その上で義経は逃げたと公言するよう勧めます。泰衡は基成に相談してみることにします。
頼朝が奥州に軍を進める覚悟を決めたことに、基成は大きくため息をつきます。15年前、義経を鞍馬山から引き取るように秀衡に勧めたのは誰あろう基成でして、その責任は痛感するところです。都の腐りきった政を、義経を使って覆したかったとはいえ、その決着は基成自身でつけねばならないと、橘似を見据えます。
頼朝が攻めてきたら、泰衡がどう寝返るか忠衡は気がかりでなりません。国衡は、義経と泰衡と神の前で誓いを立てた間柄であり、そうはさせないと忠衡をなだめますが、忠衡の泰衡への疑いは増す一方です。黙って聞いていた義経は急に声を荒げます。「よせ! そのような話はもう聞きとうない! 俺は自分で自分の始末はつける!」
薫子の夫・河田次郎守継は、薫子と義経が好き合っていると知った上で結婚しました。夫婦になって3年は夢のような暮らしでしたが、義経が平泉に戻ってきてからは地獄の日日です。藤原隆実は、男の面目にかけて義経を殺したいと思わないか? とけしかけ、守継の表情が一変します。基成は守継を見つめます。
義経は、肌身離さず大事に所有していた常盤御前ゆかりの笛を、薫子に贈ります。薫子は笛を指でなでながら大喜びですが、なぜ今になって? と疑問に感じています。笛のほかには思い出になるようなものは何もないし、何かあった場合にと無理に笑顔を見せる義経に、薫子は彼が何を企てているのかと不安になり、義経の後ろから抱きつきます。
泰衡は義経の屋敷を訪れ、京に行くという基成の提案には乗るなと注意します。義経には、たかがそんなことだけで泰衡が朝から晩まで義経を待ち続けたのは信じがたいですが、泰衡は立ち去りながら言いにくそうにつぶやきます。「死んではくださらぬか? 別の名で別の人間として生きてはくださらぬか?」 義経は戦ってこそ自分だと、泰衡の提案を受け入れません。
その帰路、泰衡は向かいから松明を持った数名を認めます。止まって様子をうかがっていると、その数名が斬り込んできました。先頭の武者は忠衡です。血迷ったか忠衡! と泰衡は忠衡と刀を合わせ、斬り倒してしまいます。傷を負った忠衡を急いで屋敷に運び込みますが、その甲斐もなく忠衡は命を落とします。泰衡は弥五郎に、基成や橘似、国衡らを呼び出させます。
義経と弁慶も駆けつけ、忠衡の変わり果てた姿に絶句します。忠衡のほうから襲撃してきたとはいえ、実兄が実弟を斬ったことに国衡は怒りを隠せませんが、泰衡は忠衡の死を無駄にしないために、義経の身代わりとして“死んだ”ことにして、義経本人は生かす道を探ります。「これは九郎どのの亡骸じゃ。鎌倉にも朝廷にも、九郎どのは死んだ、自害なされたと伝えまする」
脚本:中島 丈博
高橋 克彦 作 「炎立つ」より
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
渡辺 謙 (藤原泰衡)
野村 宏伸 (源 義経(九郎))
時任 三郎 (弁慶)
中嶋 朋子 (薫子)
三浦 浩一 (藤原国衡)
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渡瀬 恒彦 (藤原秀衡(回想))
紺野 美沙子 (橘似)
本郷 功次郎 (北条時政)
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長塚 京三 (源 頼朝)
中尾 彬 (後白河法皇)
林 隆三 (藤原基成)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:村山 昭紀
:NHKアート
:NHKテクニカルサービス
演出:吉村 芳之
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第35回「楽土・平泉」(最終回)
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