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2025年1月 7日 (火)

プレイバック花へんろ -風の昭和日記- (連続七回)・第二回

──昭和とは どんな眺めぞ 花遍路──

昭和2(1927)年3月3日、富井勝二と東山静子の結婚式が、劇場・大正座で行われます。晴天にして風強し。舞台で手をつき頭を下げている勝二と静子ですが、升屋に促されて勝二が頭を上げたところ、舞台が突然回り始めて大騒ぎになります。ウメは升屋にどうなっているのかと声を上げますが、升屋も何がどうなっているのか状況が分からず困惑しきりです。

大正座は風早町にあるたった一つの劇場で町の文化の中心、大正12(1923)年に建てられました。興行がある日は朝7時に触れ太鼓が鳴り響きます。叩くのは靴病院の花井院長で、芝居のある時は裏方を務め、本業?は富屋の向かいの靴屋で修理を担っていました。ある日、誰かに追われて逃げて来たおこうという女郎が、下駄が割れて駆けこんできます。

そこに立川巡査部長が、わしの靴できたかね? と入ってきます。立川は呑気に俳句を詠みますが、花井はおこうに台所へ行くよう仕向け、立川を追い出そうとしますが、そこに追ってきたヤクザ風の男がおこうを見つけます。無理やり連れ戻そうとする男に、花井は立川に助けてやったらどうだと声を荒げますが、立川は事情を聞くや、それなら仕方ないとみすみすおこうを連れていかれてしまいます。

花井の怒りはそのまま立川に向きますが、立川が言うにはおこうは逃亡の常習犯だそうで、遠く広島にまで行ったこともあるそうです。沖合の島に停泊する船に「おじょろ」(たらい舟)で向かって相手をする遊郭があり、逃げ出した女郎はすぐに連れ戻され、激しい折檻を受けていました。しかしおこうは遊郭からの逃亡を図ったわけです。

升屋が慌てて入ってきます。この靴屋も大正座ももう潰れる! と言い出した升屋に、花井も立川も頭の中は「???」ですが、話をよく聞けば、今治商業銀行が潰れてしまったわけです。昭和2年1月31日、金融恐慌の始まりでした。預金者が押し寄せ、支払い不能となって次々と休業し閉鎖。すべてを銀行に預けていた升屋は、すでになすすべなく……。

話を一通り聞いた花井は、日本の資本主義が行き詰っていると感じます。升屋は大正座が潰れれば花井も食っていけなくなると無気力につぶやき、泥棒が増えると危機感を覚えた立川は慌てて靴病院を後にします。たまたま来たお遍路さんに乞食行なら富屋勧商場をと進める花井に、升屋は思いついたように立ち上がります。「そうじゃ、富屋じゃ。富屋のおウメさんに頼むしかない」

富屋のウメの部屋では商品分けの家族会議です。照一は逃げ出そうとしてウメにたしなめられます。下駄、ランドセル、筆などの文房具一切、かるた、本なども勝二の店に置くことになりそうです。静子はレコードも置いてほしいとウメに頼み込みます。照一はこっそり下駄をはいて出ていこうとしますが、あと少しのところでウメに話しかけられ、体操をしてごまかしています。

そこに升屋が飛び込んできました。事情を聴いたウメですが、富屋は勧商場を建てる際に銀行に預けたお金を全て下ろしていたようで、心配は必要なさそうです。大正座を助けろと言っても……と困惑するウメに、静子は勧商場の中に劇場を造ることを提案します。サポートは45年の実績がある升屋が請け負うことにし、ウメはフッとほほ笑みます。「大正座……これも分家の扱い」

忍び足で出ていくところをフサ子にとがめられた照一ですが、結局は瀬戸屋で芸者遊びです。芸のできない芸者は川で泳げと提案するも、蝶子が泳げないと知った照一は、蝶子に畳で腹ばいにさせ泳法を教えます。そこに慌てて入ってきた和江は、勝二の結婚式をなぜ瀬戸屋の座敷でやってくれないのかと問い詰めますが、もっと広い大正座で、その完成披露も兼ねてやることになっていると照一は胸を張ります。

3月3日、世にも珍しい劇場での結婚式。仲人は桜田小学校校長、以下町のお歴々が出席しますが、和江と蝶子は出席しませんでした。触れ太鼓を叩く花井は、裸足で逃げるおこうを見つけ、劇場の裏手から舞台の下に連れ込んで身を隠します。ゲタは靴病院で預かったままなのです。追ってきたヤクザ風の男は、床に点々とついた血の跡を見つけ、それをたどっていきます。

そうしているうち、勝二と静子の結婚式が始まります。舞台の下では息をひそめるおこうと花井ですが、男が静かに舞台の下に下りてきます。おこうの手ぬぐいを見つけた男は、居場所がここだと目星をつけてゆっくりと近づいてきます。花井は男を十分引きつけておいて、回り舞台の力棒を突然押し始めます。

男は状況を掴めないままおこうを追いかけつつ、後ろから迫ってきた力棒を避けるには一緒になってぐるぐる回るしかありません。そのころ舞台上では勝二と静子の挨拶が終わったところで、回り舞台がぐるぐる回り始めたというわけです。慌てた勝二は静子の胸に倒れ込みパニックですが、静子はこれからの富屋での暮らしは面白そうだと感じています。

 

3月5日、勝二と静子の店が開店します。ウメは親兄弟も含め誰にも教えてはならないと約束したうえで、値引きの際の金額の暗号を教えます。「カ ン ショ バ ハ ト ミ ヤ ナ リ」の位置を数字に置き換える──つまり「トリ」なら「60(銭)」というわけです。それを教えている間にも、ウメは「キケ……キケ」と勝二を促します。ひとりの男が慌てて店を出ていきます。

──キケは 万引きのことぞ 春うらら──


作:早坂 暁

語り:渥美 清

音楽:桑原 研郎
演奏:東京室内楽協会
時代考証:小野 一成

[出演]

桃井 かおり (静子)

河原崎 長一郎 (勝二)

中条 静夫 (照一)

森本 レオ (幸三)
殿山 泰司 (升屋)

谷村 昌彦 (立川巡査部長)
田武 謙三 (留三)

下條 正巳 (源太郎)

小林 亜星 (井原院長)

永島 暎子 (おこう)

磯野 洋子 (蝶子)
イッセー 尾形 (花井靴院長)

高品 正宏 (藤松)
中西 敦子 (花奴)
鯨岡 きよみ (千鳥)

小杉 治 (船員)
三輪 明子 (女郎)
宮村 栄一 (ヤクザ風の男)
斉藤 洋介 (番頭)

白岩 久尚 (座員)
大塩 武 (座員)
山脇 登美子 (女中)
香山 エリ (女中)
寺井 恵美 (女中)

梅津 秀行 (番頭)
鷹取 順雅 (番頭)
角川 真一 (小僧)
大塚 良平 (小僧)
峯田 智代 (かつぎ屋の女)

平塚 奈々 (女郎)
春名 登代子 (女郎)
浅沼 典子 (女郎)
市来 まさみ (女郎)
松田 真知子 (女郎)

鳳プロ
愛媛県
 北条市の皆さん
 松山市の皆さん
資料提供:愛媛新聞社

方言指導:天野 陽子
    :佐伯 赫哉
三味線指導:本條 秀太郎
太鼓指導:田中 伝兵衛

加藤 治子 (和江)

藤村 志保 (フサ子)

沢村 貞子 (ウメ)

 

制作:岡田 勝

美術:越智 和夫
技術:森野 文治
効果:山本 浩
編集:高室 晃三郎

照明:斉藤 幸夫
カメラ:大内山 正則
音声:太田 進潑
記録:松田 和子

演出:深町 幸男

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