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2025年1月19日 (日)

大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(03)千客万来『一目千本』 ~蔦重、本を作る~

蔦屋重三郎(蔦重)が自力で改訂した吉原細見に、唐丸は目を輝かせます。しかし最終のページに蔦重の名が記されています。発行元の鱗形屋孫兵衛には、駿河屋市右衛門に内緒でやっていることは言っておらず、よかれと思って入れてくれたものと思われます。

吉原では細見を一定部数前もって買い取っていて、なじみの客などに贈呈をするのです。発行元にすれば必ず儲かるわけです。引手茶屋の主たちの会合で細見の改めが行われ、あの平賀源内も作成に関わり、これは売れると主たちは絶賛します。しかし蔦重が携わったと知った市右衛門は、吉原に客を呼びたいという思いを訴える蔦重を折檻します。「お前いつから本屋になったんだ? あ?」

正月、田沼屋敷を訪れた源内は“お年玉”と称して吉原細見を納めます。田沼意知は、この本の制作に蔦重が関わっていることに気づき、田沼意次に伝えます。源内は、これで吉原に客がどっさどっさ! と笑顔ですが、正月を過ぎても客足は一向に増えず、あちこちで閑古鳥が鳴いている始末です。客を増やして市右衛門に認めてもらいたい蔦重の思惑は、もろくも崩れ去ります。

白河松平家が、田安家の賢丸(まさまる)を養子に迎えたいと、再度の仲介を意次に依頼してきました。将軍への執念がすごかった田安家の先代・田安宗武は、白河へなどやるか! と一度断ったはずですが、徳川吉宗の血筋を入れて家格をどうしても上げたいという思いで何としてもと考えているわけです。

意次は時の将軍徳川家治に相談してみます。先日の一橋治済(はるさだ)嫡男・豊千代誕生祝いの宴で見せた、意次を一喝する姿は、感服すると同時に、何の役にも立たない部屋住みで朽ち果てるのが憐れに感じたのです。「あの類いまれなる才を発揮する機会は、未来永劫(えいごう)訪れぬのかと」

この話は家治から田安治察(はるあき)に伝えられ、治察は賢丸を白河松平家に入れて領内の仕置きに腕を振るう道を勧めます。母の宝蓮院は、田安を退けたい家治の甘言とバッサリですが、賢丸は自分が田安家を出てしまっては、まさかの折にと不安です。しかしそれは治察も考えたようで、そのまさかの折には賢丸を白河から呼び戻してよいと家治のお墨付きを得ています。「その上でどうする? 賢丸よ」

しかし松平武元(たけちか)は、いかにも意次が将軍家治を丸め込んだように思えて、黙れ黙れ! と反発します。ただ意次も負けてはおらず、自分ごときの発言に将軍が丸め込まれたという趣旨の発言を、家治に取り次ぐと迫って黙らせます。こうして安永3(1774)年3月、賢丸の白河松平家への養子縁組が決まります。

 

細見改の件ですが、孫兵衛は市右衛門と蔦重の3人で話し合いの場を持とうと機会をうかがっています。二文字屋の河岸見世女郎・音羽が吉原を去ることになりました。田舎に売られてしまったのです。二文字屋の女将・きくは、女郎たちも病気がちで、見世をたたんでしまおうと考えますが、蔦重はもう少しだけ耐えてもらいたいと訴えます。「どうにかします! よくします。こんな吉原、よかないんで」

蔦重は花の井に頼み込み、長谷川平蔵に女郎の絵姿を集めた「入銀本(にゅうぎんぼん)」の話を持ち掛けます。入金額で本の並びが決まるとあって、花の井は自分の好かない女郎に30両も入り、何としても本の頭を飾りたいと平蔵の手を握ります。ええっ!? と驚く平蔵ですが、花の井のみならずさくらやあやめ、はなさと、はなぞのにも頼まれては、黙ってはいられません。

蔦重は、入銀本の企画自体をでっちあげて平蔵から金を巻き上げると、得た50両をそのまま二文字屋のきくに唐丸を使って渡させます。さらにでっち上げの企画を、蔦重は玉屋の座敷持花魁の志津山や桐菱屋の座敷持花魁の亀菊を始めとする女郎たちに声掛けして回ります。こうしてかなりの入銀を確保し、吉原の親父たちに持ち掛けます。「長谷川さまから配り物の絵本を作ってほしいと頼まれまして」

親父たちは、自分たちが一文も払わなくていいと分かった瞬間に、この話に賛同します。ただ一人市右衛門だけが、蔦重の本文は茶屋だろうがと怒り心頭ですが、別に茶屋を怠けているわけではないと他の親父たちは蔦重の肩を持ちます。立ち上がった市右衛門は、蔦重の襟をつかんで階下に突き落とすつもりが、足を滑らせて自分がゴロゴロと転がり落ちてしまいます。「……出てけ!」

援助してもらった金で河岸の炊き出しを行うきくは、出ていけと追い出された蔦重を二文字屋のひと部屋に迎え入れます。さっそく蔦重は絵師選びを始めますが、唐丸は本作りを続けることが気がかりです。しかし蔦重は、市右衛門の機嫌より河岸の方が大事だと、決意は揺るぎません。本屋に並ばないことを逆手にとり、吉原の馴染み客にならなければ手に入らない貴重な本に仕立てたいのです。

蔦重は、選び出した絵師のうちの一人、北尾重政の作業場を訪ねます。蔦重に大まかな完成形を聞く重政ですが、1枚絵ならまだしも、本であれば似たような絵が続くだけだと指摘します。蔦重は花瓶に生けてある花を見て、女郎を花に見立てることを提案します。つーんとした女郎はわさび、夜さえないのは昼顔、無口はくちなし、文ばかり書くかきつばたなどアイデアがポンポン浮かびます。

絵師が花の絵を描き、それを元に彫師が木彫りして、摺師(すりし)がバレン(摺具)で紙に写し取る木版印刷です。それを蔦重が二文字屋に持ち帰り、蔦重や唐丸、きくや手の空いた女郎たちで製本化していきます。最後に蔦重が『一目千本 華すまひ 西』の外題を貼り付けて完成です。「なんだかめっぽう粋じゃないかぁ!」ときくも大絶賛です。

 

蔦重は、出来上がった本を手に市右衛門のところに赴きます。駿河屋に置いてほしいと本を差し出しますが、険しい顔の市右衛門は「いらねえよ」と拒絶します。去ってゆく市右衛門の背中に「気が向いたらでいいんで。見てくだせえ!」と声をかけた蔦重は、縁側にそっと本を置きます。

それから蔦重と唐丸は、松葉屋や湯屋に見本を配って回ります。「吉原の馴染みになったらもらえるんで、欲しい方がいたら吉原行けって」と蔦重が説明すると、主人たちはなるほどと頷きます。それだけにとどまらず、髪結い床、茶店、居酒屋など、蔦重は市中のありとあらゆる男がたむろしそうなところに見本を配りまわります。今でいう「サンプルプロモーション」です。

女郎屋の扇屋宇右衛門は市右衛門に、蔦重とのくだらない喧嘩をまだ続けるのかと問いかけます。宇右衛門は、蔦重は目端(めはし)が利いて知恵が回って度胸もあると評価する蔦重が、本業も疎かにせずにその片手間に本を作るぐらいいいじゃないかと主張するのです。「忘八なら忘八らしく、ひとつ損得ずくで頼むわ」 店には置いた方がいいと思うぜ、と宇右衛門は見本を置いて帰ります。

あたりを見回し、市右衛門は見本を手に取ります。亀菊がわさび──つんつんしてやがるもんなぁ、とフッと笑います。その後ろで大笑いするふじは、本を開いて市右衛門に差し出します。常盤木がとりかぶと──男が食らうと死ぬってか。常盤木がどのような女郎であるかを知っているからこそ、市右衛門とふじは大笑いです。「誰よりも、この町を見てんだね。あの子は」

半月後、吉原に活気が戻って来ました。つるべ蕎麦の半次郎も、盛況ぶりに大興奮です。仲の町通りも大勢の人が行き交い、蔦重は思わず涙を浮かべます。大喜びする蔦重の背中をど突くのは市右衛門です。「わめいてんじゃねえよ! べらぼうが! とっとと戻れ! ……志津山のくず、最高だった。まあせいぜい、吉原のために気張ってくれ」

 

花の井によると、親の遺した貯えを食いつぶしたからもう来られない、と平蔵から文が届いたそうです。平蔵をだまして50両を得た蔦重なので、いずれは返さないといけませんが、平蔵なら本当のことを知れば案外返さなくてもいいと言うかもしれません。「50両で吉原の河岸救った男なんて、粋の極みじゃないかい?」

明るい光のさし始めた吉原、しかしその裏側で暗い情念が……のそりのそりと。暗闇の中で眼光鋭く睨みつけるのは、出版を生業とする孫兵衛──。そして田安邸では、床に就きながらも咳き込む治察に近づく黒い影が──。治済が操っていた操り人形の江戸糸が切れ、人形が床に落ちます。そのころ治察は絶命していました。胸にはかきむしった痕が──。

 

作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦谷重三郎)
安田 顕 (平賀源内)
小芝 風花 (花の井)
宮沢 氷魚 (田沼意知)
中村 隼人 (長谷川平蔵宣以)
小野 花梨 (うつせみ)
寺田 心 (田安賢丸)
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中村 蒼 (次郎兵衛)
正名 僕蔵 (松葉屋半左衛門)
伊藤 淳史 (大文字屋市兵衛)
山路 和弘 (扇屋宇右衛門)
六平 直政 (半次郎)

安達 祐実 (りつ)
水野 美紀 (いね)
飯島 直子 (ふじ)
かたせ 梨乃 (きく)

橋本 淳 (北尾重政)
尾美 としのり (平沢常富)

花總 まり (宝蓮院)
生田 斗真 (一橋治済)

相島 一之 (松平康福)
眞島 秀和 (徳川家治)
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原田 泰造 (三浦庄司)
片岡 愛之助 (鱗形屋孫兵衛)
高橋 克実 (駿河屋市右衛門)
石坂 浩二 (松平武元)
渡辺 謙 (田沼意次)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・藤原 敬久
演出:大原 拓

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第4回「『雛形若葉』の甘い罠」

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