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2025年1月12日 (日)

大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(02)吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸』 ~平賀源内を探せ!~

蔦重こと蔦屋重三郎は、吉原の細見(ガイドブック)を使って客を呼びこもうと考えます。年に二度発行されている吉原細見には、吉原の絵図、引立茶屋一覧、女郎屋、女郎一覧が載っていますが、冒頭『序』の部分を使って何かできないか……。この冊子を作っている“鱗(うろこ)の旦那”鱗形屋孫兵衛とは付き合いがあるのです。そこに長谷川平蔵がいつもの供回りを連れて来店します。

蔦重が駿河屋に案内する間、今日は初回なので花魁は口を聞かないしきたりながら、一時でも笑みを見せれば落ちたも同然、と平蔵をけしかけます。いざ花の井を迎えて宴を楽しむ平蔵ですが、ちらりと花の井を見ると大あくびです。焦りに焦る平蔵は、蔦重が教えてくれた“落ちるツボ”、紙花(チップ=1枚2万円程度)を大バラマキします。振り返った花の井はニヤリとし、平蔵は歓喜します。

いつものように松葉屋に貸本を持ち込む蔦重ですが、平蔵がホントに花紙を撒いたことを花の井から聞きます。「馴染みになるまで金もつのかねえ」と花の井は内心バカにします。蔦重は、小間物を売りたい場合には誰に頼むか花の井に聞いてみますが、そりゃあの人しかいないだろ、とほほ笑みかけます。『歯磨き嗽石香(そうせきこう)』の広告を打った、あの人物です。「だよな、あの人だよな」

嗽石香とは当時飛ぶように売れた歯磨き粉で、品質よりも引き札(広告)で流行した商品でした。ぶっちゃけ過ぎた宣伝文句を考えたその人物は、平賀源内でした。蔦重は、細見の序に源内の宣伝文句を入れたら……と孫兵衛に提案し、まあいいぜ、と許可をもらいますが、条件がありました。「ただし、おめえさんが「序」をもらって来れたらだ。俺はつてがねえからよ」

しかし、あちこち探すも、肝心の源内がなかなか見つかりません。花魁うつせみの助言で、源内が出入りしているらしい田沼屋敷を訪問してみますが、どうやら門前払いを食らってしまったようです。蔦重は、河岸の救済を意次に訴えてみては? と助言した厠の男に、源内を知らないか尋ねます。「いいよ! 会わせてやるよ。平賀源内先生に。けどまあさすがに、タダで会わせるってわけにゃあいかねえな」

自分のことを“貧家銭内(ひんか・ぜにない)”と名乗る厠の男は山師だそうで、金銀銅鉄を掘り当てる仕事をしています。鎖国をして相場が分からなくなり、幕府は金銀を低価でオランダに吸い上げられてしまうという失態をしでかしました。そこで意次は、南鐐(なんりょう)二朱銀を作って金の手綱を握り直したいと、銅で銀を買い戻し、採掘に精を出しているのです。

もはやこの世は全て金──。武家の実入りが未だに年貢では換金の必要があるわけで、札差(ふださし)たちに買いたたかれてしまっては、武士や百姓は貧しくなるばかりです。意次は、新しい金を作り金の手綱を武士が握り直すために、金貨や銀貨を凌駕(りょうが)し、南鐐二朱銀に統一するのが第一歩と、銀を採掘させています。

意次の考えを聞いて、なるほど! と松平康福が頷く横で、松平武元は「分からぬ!」と大声を出します。そんなことをせずとも、米を高く買うと商人に命じれば済む話と軽蔑した目を向けます。力ある商人は武士の言うことを聞かないと説明したところで、口を開けば商人のように金、金、金という田沼老中の言うことには賛同できない武元です。

 

蔦重とともに吉原にたどり着いた銭内、浪人小田新之助の2人ですが、奥の方に案内しようとする蔦重に「俺ぁ松葉屋ってとこ行きてえんだけど?」と希望を伝えます。松葉屋で、名跡瀬川の名を出す銭内ですが、不幸があって誰も継がず空席です。じゃあもう誰でもいいや、と銭内は座敷に上がっていきます。

蔦重としては、一刻も早く源内に会わせてほしいわけですが、このままでは源内はいいところを見つけられずに序を書けないのでは? と銭内は見据えます。よその岡場所に比べて吉原の良いところを蔦重に尋ね、蔦重は女が綺麗で芸者も確か、膳も華やかと説明しますが、銭内に鼻で笑われます。銭内は、3,000人といる吉原で、自分好みの女を連れてきてよ、と蔦重に要求します。

指名の入っていない花の井は今日は“お茶挽き”役で、『硯(すずり)に向かえば涙が先立ち、気も狂おしう会いとうて、主さんと真っ赤に燃える紅葉が見とうおす』と文をしたためています。その横で蔦重は、どうやら銭内に一杯食わされたと思ったようで、今回のお代を主の半左衛門に店でつけてほしいと懇願しますが、半左衛門は駿河屋でつけとくと返答し、ああ~と蔦重は頭を抱えます。

その時、銭内のいる座敷で「源内先生! その節はお世話になりまして!」と声が聞こえます。そこで蔦重は、銭内が源内その人であることに気づきます。源内は、あまりに蔦重が一生懸命だったのでからかってみたくなったと弁明します。もう書けますよね? と迫る蔦重に、序を書くのは自分じゃない方がいいと、あまり乗り気ではありません。「あのさ、俺、男ひと筋なのよ?」

実は源内は、以前にも序を書いたことがあるのですが、気持ちが入らずつまらない出来だったのです。蔦重は、あの男ひと筋の平賀源内をも虜にする吉原! と源内を持ち上げて乗せますが、虜になるような女がいない源内にはどう考えても書けません。「お前さんさあ……お前さん、改めてみると、相当いい男だね?」と、源内は蔦重に花魁の格好を求めます。

そこに入ってきたのは、男装をした花の井です。“吉原はあの平賀源内をも夢幻に誘った”と言われたいわけです。源内が「ここ“にも”瀬川はいないのか」という言葉の裏には、源内にとっての愛しいひとは、女形として名を馳せた二代目瀬川菊之丞だったのではないかと考えたのです。「今の松葉屋に瀬川はおりんせん。けんど、わっちでよければ、どうぞ瀬川とお呼びくださんし」

源内は、蔦重が花の井に惚れているのかと尋ねます。花の井は、「どの子も可愛(かわい)や誰にも惚れぬ」(誰かに惚れることなんかあるのか)とクスクス笑っていますが、そのことに蔦重本人は気づいていなさそうだと寂しそうでもあります。花の井を見つめる源内は、頼みがあると言い出します。「ひとつ舞っちゃくれねえかい」

 

翌朝、蔦重が店の戸を開けると、文がパサッと落ちます。ん? と気づいた蔦重が拾い上げて見てみると、“瀬川にわたせり 銭内”とあります。さっそく蔦重は神社で花の井から文章をもらい受けます。昨日源内をお相手して、男ひと筋だけあって求めが変わっていたらしく、稽古のように舞ってくれと言ってきました。花の井は求められるまま鼻歌を歌いながら舞い、源内は楽しそうに見つめています。

源内の胸に去来するのは、同じように稽古している瀬川菊之丞の姿だったのでしょう。その後、風に当たってくると言って出ていき、戻って来たら「序」を書いてくれたわけです。昨晩は“あいつに助けられちまった”と不貞腐れていた蔦重でしたが、改めて思うと花魁はとてもすごいとため息が出るほどです。「花の井! ……ありがとな。助かったわ」

──女衒(ぜげん)、女を見るに法あり。一に目、二に鼻筋、三に口、四にはえぎわ。ついで肌は、歯は……となるそうで、吉原に女を、そりゃ念入りに選べます。とはいえ牙あるものは角なく、柳の緑には花なく、知恵のあるは醜く、美しいのに馬鹿あり。静かな者は張りがなく、賑やかな者はおきゃんだ。何もかも揃った女なんて、ま、いない。それどころかとんでもねえのもいやがんだ。骨太に毛むくじゃら、猪首(いくび)、獅子鼻、棚尻(たなっちり)の虫食い栗。ところがよ。引け四つ木戸の閉まる頃、これがみな誰かのいい人ってな、摩訶不思議。世間ってなぁ、まあ広い。繁盛繁盛、ああお江戸──

「しかしまぁ、よく書いてもらえたもんだな!」と、言い出しっぺであるはずの孫兵衛はびっくりします。さすがに蔦重が勝手にやったことであるので、お代はいただけませんでしたが、潰れた店が黒く塗りつぶしてあると行く気がそがれるし、すでにいない女郎の名が未だに書かれてあったりと不備はあちこちあるので、きちんと改めてほしいと要望します。「おめえさんがやるってんなら、俺ぁ全然構わねえよ」

 

蔦重がごまかしつつ密かに改めの作業を続けていたころ、将軍家治のいとこにあたる一橋治済(はるさだ)に嫡男豊千代が誕生します。その祝いの席でも、豊千代は乳母大崎の胸に抱かれてすやすや眠っています。この宴の出席者は、家治のいとこ田安治察(はるあき)、家治の弟清水重好(しげよし)、意次とともに席を外している治済も含め、いわゆる『徳川御三卿』です。

御三卿とは、将軍家の血筋が絶えそうになった折に跡継ぎを差し出すことが役目です。その治済と意次は、能舞台『二人三番叟』で江戸糸で人形を操っていたのです。家臣たちがあまりに褒めそやし、いっそ傀儡師にでもなるか? と笑っていたところ、「恥を知れ!」と出てきたのは治察の弟・賢丸(まさまる)です。

全てにおいてきっちりしている賢丸には、あまりにふざけすぎた治済の発言にかなり立腹しているらしく、座を蹴って出ていってしまいます。治察は慌てて謝罪し、重好も“まさかのことが起こらぬ限り我々の出番はございませぬ”と気にする様子はありません。「まさかのこと……など起きてはなりませんしなぁ」

賢丸も遊びを覚えたほうがいいとつぶやく治済に、意次は歌会や能、鷹狩りなどを提案しますが、それ以前に武士は賢丸に見習うべきと感服しているのが武元です。意次は右近将監(武元)の言葉こそ感服したと土下座します。白々しいという表情で睨みつける武元ですが、そんな二人を見比べて、ニヤリとする治済です。

ついに新しい吉原細見が完成しました。改めて手に取り、満足げの蔦重です。

 

作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦谷重三郎)
安田 顕 (平賀源内)
小芝 風花 (花の井)
中村 隼人 (長谷川平蔵宣以)
井之脇 海 (小田新之助)
小野 花梨 (うつせみ)
寺田 心 (田安賢丸)
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中村 蒼 (次郎兵衛)
正名 僕蔵 (松葉屋半左衛門)
水野 美紀 (いね)

徳井 優 (藤八)
尾美 としのり (平沢常富)

映美 くらら (大崎)
相島 一之 (松平康福)
生田 斗真 (一橋治済)
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片岡 愛之助 (鱗形屋孫兵衛)
高橋 克実 (駿河屋市右衛門)
石坂 浩二 (松平武元)
渡辺 謙 (田沼意次)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・積田 有希
演出:大原 拓

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第3回「千客万来『一目千本』」

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