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2025年2月23日 (日)

大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(08)逆襲の『金々先生』

花の井改め“瀬川”は、蔦屋重三郎が出した吉原細見がうまくいきますように! と手を合わせます。そこに蔦重がやって来て、風呂敷を広げます。「風呂敷の中身は? 何もねえ。売り切れだ! 評判よくってよお、みんなどんどん仕入れてえって」 瀬川は深いため息をつきます。本屋が仕入れてくれたというだけで、客に売れたわけではないのです。ただ、瀬川も細見売りの助太刀をするつもりではいます。

蔦重が蔦屋に戻ってくると、駿河屋の市右衛門が来ていました。細見すべて捌けたと聞いても特に驚くわけでもなく、鱗形屋の話は出なかったかと聞いて帰っていきます。奉公人の留四郎は、鱗形屋のお裁きが出て心配していたのではと推察します。偽の節用集の板木と摺本2,800冊を召し上げられただけで終わったらしく、蔦重は「ああ……」とため息をつきます。

実のところ孫兵衛は、須原屋の市兵衛のおかげでずいぶん軽い処分で済んだのです。対面した鶴屋の喜右衛門は、蔦重が出版した細見を孫兵衛に見せます。「あれは吉原の引き札屋です。とても本屋なんてものじゃない」 孫兵衛は、蔦重への怒りがにじみ出て、細見を握りわなわな震えます。

西村屋もキレイどころの女を使って『新吉原細見』の販売促進です。こっちだって負けちゃいねえのさ、とニヤリとする与八ですが、その横で蔦重は、新吉原細見1冊の値で2冊買える! と大声で宣伝していきます。蔦重の細見『籬(まがき)の花』は評判も良く、宣言通り2倍以上を売り上げ。吉原の仲の町通りに現れた瀬川を見て、客はその美しさに息をのみます。蔦重が細見を売り、瀬川が客を引き寄せる。2人は吉原繁盛の立役者となったのです。

蔦屋の表に掲げる『耕書堂』ののぼりに、蔦重は思いを新たにします。そして吉原の親父たちの会合に参加が認められます。ケツの穴がむずむずする思いですが、いっぱしの本屋なのだからと扇屋の宇右衛門は叱咤します。市右衛門から酒を注がれた蔦重は、大きな盃を一気に空けます。女将のふじも吉原で地本問屋を持てたことを喜んでいます。「これからはせいぜい頼りにするといいよ」

 

活気づく吉原の客は、けっこう瀬川目当てで来ています。瀬川と寝ただの、俺に首ったけだの、ホントかウソか分からないような話まで持ち上がって、蔦重はあっけにとられます。平賀源内も瀬川目当ての一人ですが、瀬川は花の井であると明かすと、花の井に会ったことのある源内はニヤリとします。

細見のおかげ? 細見のせい? か、瀬川は超多忙な毎日です。座敷を抜け出し、大槌屋(おおつちや)の若旦那がいる座敷に顔を出し、抜けてきた座敷に戻って送り出しをする。その後で若旦那の座敷に戻って……と松葉屋のいねは瀬川に予定を告げます。化粧直しをして衣装も整える瀬川は、予定を聞きながら半ばうんざりしているようにも見えます。

どうもお座敷が詰まりすぎてるようで、と蔦重は源内と小田新之助に説明します。会えねえの? と源内は残念がりますが、ただ新之助イチオシのうつせみは、ぜひ会いたいと言っているようで座敷に案内しようとします。ただ他の客と掛け持ちになると知り、肌が合わぬから、と新之助は遠慮することにします。

吉原が活気づいているのは花の井が瀬川を背負ってくれたからで、何をすれば瀬川に報えるのか蔦重は考えています。以前花の井から“どの子も可愛や誰にも惚れぬ”と聞かされていた源内は、蔦重に身請けを勧めます。身請けは女郎が客に身の上を引き受けてもらうことで、多くの場合その後は身請け人の妻や妾になります。「女郎の幸せっていやぁ、そりゃ身請けだろうよ」

蔦重によればどんなに安くても100~200両は必要で、瀬川という名跡であれば1,000両は下回らないかもしれません。できるわけねえでしょう、と蔦重は渋柿を食ったような表情ですが、かといって蔦重が惚れた女は……いないというより、考えたことがなかったと言った方が正しいかもしれません。虚しい話だねぇ、と源内はつぶやき蔦重は相槌を打ちますが、「おめえさんじゃねえよ」と源内は目をそらします。

 

田沼屋敷を訪問した源内ですが、日光社参に向けて準備を着々と進める様子に感心します。“白眉毛”松平武元に言われて武具や馬具を揃えた田沼意次ですが、持つだけの弓槍にくだらん、と吐き捨てます。源内は、吉原には名跡瀬川で大繁盛することを話し、社参の道中も民にはいい見ものでは? と提案します。「社参を見世物にして金を得る場にせよ、と?」

大いびきをかく強蔵(つよぞう)男の横で、めちゃくちゃしやがって と起きだす瀬川ですが、傍らに置いてあった細見を見て仕方ないという表情です。疲れ果て、朝になっても眠る瀬川に、蔦重はそんな客をつけないでと半左衛門に訴えますが、松の井は、瀬川でなければいいのかと蔦重に食って掛かります。慌てて止めに入るうつせみですが、その首元にも傷があり、蔦重は衝撃を受けます。

客が来れば誰かが相手をせねばならないわけで、自ら名乗りを上げた瀬川がきついのは自業自得だと松の井は吐き捨てます。瀬川目当てで来た客を他の女郎たちが“捌いて”いる現状で、なじみ客のいる女郎まで掛け持ちする羽目になってしまっています。客がいないのも困るが、来たら来たで困るわけです。いったい女郎はどうやれば報われるのか、と蔦重は頭を抱えます。

幼いころ、あざみ(=瀬川)が宝物にしていた根付を井戸に落としてしまい、拾い上げようと悪戦苦闘する柯理(からまる=蔦重)です。しかし結局拾い上げることが出来ず、その手打ちとして柯理が大事にしていた『塩売文太物語』をもらいます。間夫(まぶ=遊女が真情を捧げる男)のいなさそうな瀬川は、その物語を読んでフッと微笑みますが、蔦中への思いに浸る暇のないまま昼間の客のために準備に取り掛かります。

『金々先生栄花夢』を手にした喜右衛門は、あえて少なくばらまいて本好きの飢えを煽り、一気に売り出して、やはり青本は鱗形屋さんだと評判を高める方法を取ります。“少なくばらまく”ことに、そんなに売れそうもないのかとガッカリする孫兵衛でしたが、大事にすべきは鱗形屋で、吉原の引き札屋ではないのだという喜右衛門の思いに嬉しさがこみ上げます。

こっそりと鱗形屋の様子をうかがう蔦重は、須原屋を訪ねます。孫兵衛は、手を組んでいた侍の裏切りで全ての罪をかぶせられたわけで、“これ以上やると偽板訴え返すぞ”と市兵衛は上方の本屋を怒鳴りつけてケリをつけたのです。江戸で生まれた本屋は須原屋と鱗形屋だけで、市兵衛の立場としては孫兵衛を助けないわけにはいかなかったのです。そんな市兵衛に、蔦重は女郎に贈る本の相談をします。

 

瀬川は、今日の相手は鳥山検校と聞かされます。盲(めしい)の大親分で金持ち──この当時、幕府や朝廷の手厚い庇護を受け、生業として高利貸しをして巨万の富を築いていたのです。やたら威張る者も多く忌み嫌われる側面もあったそうですが、検校は盲の頂点に立つ人物であり、いねは瀬川に、粗相がないように頼むと送り出します。

瀬川は検校の隣に座りますが、いきなり「驚かせてすまぬ」と検校に謝られます。瀬川が息を呑んだ音を聞き取ったそうで、声や足音、衣擦れの音だけで大抵のことは分かると検校は微笑みます。そして検校が持参した贈り物の中に数冊の本もありました。「初会は花魁は座っておるだけ。さぞ退屈であろう。幸いわしは盲、気にせず皆で楽しむがよい」

初会は会話をしないしきたりではありますが、それは花魁の姿を目で楽しむわけで、瀬川は検校が持参した本を読み上げて、その声を楽しんでもらおうと提案します。いねの許しを得た瀬川は、その中の『金々先生栄花夢』を手に取ります。一方そのころ、本を読んでケラケラ笑う次郎兵衛に、蔦重はその本に興味を持ちます。見せてもらうと、こちらも『金々先生栄花夢』でした。

──文に曰く、浮世(ふせい)は夢の如し。歓(よろこび)をなすこといくばくぞやと誠にしかり。金々先生の一生の栄花も邯鄲(かんたん)のまくらの夢も、ともに粟粒一炊(ぞくりゅういっすい)のごとし。金々先生は何人ということを知らず──。ある田舎者の若者が、うたたねする間に見た夢のお話で、描かれた人の言葉や風俗はとてもリアルで、画期的な読み物に仕上がっていました。

次郎兵衛は色町のトンチキなど見てきたようだと出来栄えに満足げですが、実際に見て来た話なんだから と蔦重はそっけないです。これらは次郎兵衛らから聞いたエピソードを蔦重が集め、鱗形屋が面白い本にしたわけです。ため息をつく蔦重ですが、これで蔦重の仲間入りの話は……。

朝を迎え、『金々先生栄花夢』をまじまじと見つめる瀬川ですが、コツンと小石を投げられる音がします。稲荷社に駆けつけると、蔦重が待っていました。2人ともあっという間に読破して、鱗形屋の復活を見せつけられた形になってしまいました。瀬川の心配は、蔦重の仲間入りの約束が果たせるかどうかですが、蔦重はすでに吉原の親父たちに相談していました。

吉原と本屋が手を組んでいけば双方にうまい話になると市右衛門や宇右衛門は答え、いろいろと妙案を提供してくれたわけです。忘八は味方になれば頼りになるよねと瀬川は引きつります。「よかったねぇ。吉原を何とかしたいと思ってんのは、もうわっちら2人きりじゃなくなったってことだね」と瀬川は寂しそうにつぶやきます。蔦中は感謝の気持ちをこめて『女重寶記』を手渡します。

蔦重は瀬川に、身請けされて名のある武家の奥方や商家のお内儀になり、とびきり幸せになってほしいと思いを伝えます。女郎は世間知らずで苦労すると聞いているのです。「重三にとって……わっちは女郎なんだね」 吉原にたくさんいる女郎のひとりに過ぎない。そう気づかされた瀬川は、馬鹿らしゅうありんす と吐き捨てて戻っていきます。残念ながら蔦重は、瀬川がなぜ怒っていたのか理解していません。

 

地本問屋の主たちが吉原に押しかけてきました。先手を打って蔦重の地本問屋への仲間入りを断りに来たようです。宇右衛門は酒でもてなそうとしますが、遊びではないからと喜右衛門はキッパリ断ります。喜右衛門はさっそく、『金々先生栄花夢』を出した鱗形屋を支えていきたいと仲間内で話し合い、耕書堂の仲間入りの話をなかったことにしたいと切り出します。

蔦重は、自分が出すのは吉原に関する本だけであり、鱗形屋が手掛ける青本や芝居絵本、往来物語には一切手を出さず、本の増えすぎによる共倒れは防げると食い下がります。細見についてはこちらが作り、タダで譲る形をとると蔦重は主張します。だったら考えないでもないと態度を軟化させる問屋たちをギロリと睨みつける喜右衛門は、一人で話を進めると他の主たちに席を外してもらいます。

喜右衛門は、“卑しい外道”吉原者を市中に加えるのはどうかと主張する人たちがいて、親父たちの反発を食らいます。喜右衛門たちがのさばる日本橋は、もともと吉原のあった場所だと大文字屋の市兵衛は怒りをにじませますが、“私もそう言ったんですが”と断った上で、いかがわしい吉原は市中から追い出されたのだと喜右衛門は言ってのけます。

蔦重は、吉原を毛嫌いしている旦那たちと話をさせてほしいと提案します。分かってもらうために話し合い、親しみを持ってもらうしかないようです。しかし喜右衛門は、“私もそうしませんかと申し上げてみたんですが”と言いつつ、寂しそうな表情を浮かべます。「吉原の方々とは同じ座敷にもいたくないってな具合で」

フフッと笑う市右衛門は喜右衛門に掴みかかり、嘘くせえんだわ! と2階の階段から喜右衛門を突き落とします。ふじも、心配する蔦重の手を引いて止めます。「悪いけど、俺だってあんたらとおんなじ座敷にいたかねえんだわ」「出入り禁止な、あんたら」「ってことは、もうみなさんは吉原の本は作れない!」「あらまぁ。じゃ今後は、重三しか作れないってことんなるねえ」

2階から軽蔑した目で見下ろす市右衛門たち、1階から気まずそうに見上げるる喜右衛門や与八、孫兵衛たち。蔦重は顔面蒼白です。

 

作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦屋重三郎)
安田 顕 (平賀源内)
小芝 風花 (瀬川)
宮沢 氷魚 (田沼意知)
井之脇 海 (小田新之助)
小野 花梨 (うつせみ)
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市原 隼人 (鳥山検校)

中村 蒼 (次郎兵衛)
正名 僕蔵 (松葉屋半左衛門)
伊藤 淳史 (大文字屋市兵衛)
山路 和弘 (扇屋宇右衛門)
六平 直政 (半次郎)

安達 祐実 (りつ)
水野 美紀 (いね)
飯島 直子 (ふじ)

尾美 としのり (平沢常富(回想))
風間 俊介 (鶴屋喜右衛門)
西村 まさ彦 (西村屋与八)
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原田 泰造 (三浦庄司)
片岡 愛之助 (鱗形屋孫兵衛)
高橋 克実 (駿河屋市右衛門)
里見 浩太朗 (須原屋市兵衛)
渡辺 謙 (田沼意次)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・積田 有希
演出:新田 真三

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第9回「玉菊燈籠恋の地獄」

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