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2025年2月16日 (日)

大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(07)好機到来『籬(まがき)の花』

牢獄につながれている鱗形屋の孫兵衛は、捕らえられた瞬間のことを思い返していました。「おい蔦重! このままで済むと思うな! 必ず後悔させてやるからな!」 そして戸が閉められた鱗形屋の前に立つ蔦屋重三郎は、孫兵衛を捕らえた長谷川平蔵に「せいぜいありがたく頂いとけ。それが粟餅落としたやつへの手向け」と言われ、そうだよな、と粟餅をほおばります。

地本問屋会所では、店主を失った鱗形屋のことも話題に上がります。西村屋与八によれば、訴えた大坂の板元・柏原屋が厳しい裁きを望んでいるらしく、奉行所まで出てくるとはと意外でもありますが、鱗形屋には3,000ほどの偽板があったわけです。偽板づくりにしてはずいぶん派手にやらかしたわけで、奥村屋源六や村田屋治郎兵衛は納得します。「鱗はもう……終(しま)いかもしれねぇな」

キセルをふかしていた鶴屋喜右衛門は灰をカチッと叩き落とし、場がピリリと凍りつきます。喜右衛門は、鱗形屋に代わって細見を出そうと考えている人を募りますが、儲ける話とあって、源六や松村屋弥兵衛が名乗りを上げ、与八は最近細見を出した蔦重を見知っていると胸を張ります。喜右衛門はニヤリとしますが、ちょうどいいところに蔦重が現れます。

与八は自分が細見を出し、蔦重は改(あらため)を続けられるようにすると言いますが、蔦重はそれを断ります。しかも蔦重自身が板元になって細見を出すと言い出し、面々の反発を食らいます。しかし蔦重は、自分に任せればこれまでの倍売れる細見を出して見せると意気込み、そうなればみなさんも儲かりますよねと食い下がります。喜右衛門は、細見が倍売れるのを見せてくれれば、蔦重を仲間にすると提案します。

面々は舌打ちしたり、ここに吉原者を入れるのはごめんだと言い出したりしますが、喜右衛門はそもそも倍売れるわけがないと考えた上での提案です。さらに喜右衛門は、蔦重の作った細見が“さほど売れない”ように、ライバル本として新たな細見を出してみる方法を提案し、与八を見据えます。

蔦重はその足で駿河屋に向かい、2階に集まっている親父たちに、細見を倍買い取ってほしいと願い出ます。勝手なことを! と大文字屋の市兵衛は蔦重を殴りつけますが、蔦重が板元になることで吉原内に板元を持てば、吉原を市中に売り込み放題というわけで、親父たちは珍しく蔦重の話に乗ってきます。

 

孫兵衛は、小島松平家の家老からの依頼で偽板を摺ったと弁明しますが、商人が武士に罪を擦り付けるのかと暴行を受けます。その間、鱗形屋に与八の姿がありました。妻のりんに、鱗形屋が持つ細見の板木を買い取ると迫っています。りんは、主人の不在中にと難色を示します。与八は大判を2枚、3枚、3枚と増して出していきますが、次男万次郎がやって来て大判を突き返します。

孫兵衛はこのままいけば「身上半減(財産を半分に減らされる)」「島流し」ではないかという噂が立ちます。しかし蔦重にはさほど驚きはありません。孫兵衛が偽板を作っているのもいろいろ探られているのも知っていたわけで、孫兵衛をはめたとも言えますが、今の蔦重はそのはめたに見合うだけのいい細見を作るだけ、と割り切っているのです。

蔦重は、細見を倍売るためには半値で作れないかと考えます。策士だねぇ! と次郎兵衛や半次郎は身を乗り出しますが、そのまま半値で売れば儲けは出ないため、作る“かかり”も半分にしなければなりません。「そこは、2人に手伝ってもらいやす」と肩をポンと叩き、次郎兵衛と半次郎はたちまち表情が固まります。

二文字屋のきくは、細見の使いにくいところ、こうなってたらいいなどを客に聞き出します。半次郎も自店のつるべ蕎麦で、どんな細見なら欲しい? と客に聞いて回ります。次郎兵衛も客に助言を求めますが、その細見を持っていれば吉原の揚代が半値になるという方式を聞き出します。

細見に載っている女郎は大見世ばかりで、手の届く女郎が載ってないという声もあります。蔦重の姿を見て追いかけて来た 大文字屋の秘蔵っ子・かをりは、細見を持ってきた“男前”はタダにすると触れ込めば、男はこぞって細見を買うし、男前の客がどっと増えるのでは? と提案します。抱きついて離れないかをりに、やり手の志げが追いかけてきます。「離れないと、蔦重の顔に傷がつくよ!」

蔦屋には小田新之助が待っていました。今の細見のような厚さでは、懐に入れた時にかさばるから、薄くならないか? と意見を持ってきたのです。薄くなれば細見片手に吉原を歩けるようになる。これだ! と蔦重はひらめきます。昔は一枚摺りで持ち歩きながら物色していたし、“かかり”も半値にできそうです。蔦重は細見をばらし、省くところを探します。吉原の町の並びどおりにページを並べていきます。

 

与八が細見の板木にこだわっている理由は、蔦重が板元として地本問屋の仲間に入れば、吉原がらみの本を一切出せなくなると危惧するからなのです。その分、西村屋が板木を持てば、吉原を西村屋だけが扱う場にできるという絶好の機会なのです。手代の忠七は、細見を出している男がもう一人いると思い出します。与八が慌てて細見をあさると、浅草の小泉忠五郎という名が出て来ました。

蔦重が親父たちに呼ばれて駿河屋の2階に足を踏み入れると、そこには与八と摺物屋の忠五郎がいました。忠五郎の細見を西村屋の後ろ盾で出すという話に、蔦重は噛みつきます。蔦重は「定」があるから許されないと拒絶されたのに、忠五郎は仲間内のたっての願いで許されたとは……。そうなれば西村屋の細見をみんな仕入れるし、蔦重に細見を倍売らせる話も雲行きが怪しくなってきます。

忠五郎は蔦重に、一緒に「改」をやらないか? と誘いますが、蔦重は即座に断ります。与八と忠五郎が帰ると、蔦重の細見を買い入れた女郎屋の女郎を『雛形若菜』には使わないと与八は脅してきたようです。与八の狙いは吉原の入銀であり、その本で吉原を盛り立てようという考えは一切ない。「女郎の血と涙がにじんだ金を預かるなら、女郎に客が群がるようにしてやりてえじゃねえっすか! そのためにはよそに任せちゃいけねえんです」

そんなふうに蔦重が親父たちを説得していたと、松葉屋に戻った半左衛門はいねに報告します。“花魁たちに胸を張らせてやんのが、忘八のたった一つの心意気”、グッときたと笑う半左衛門は、西村屋という敵が現れた蔦重に、細見を倍売らせるために自分たちも手だてを考えてみることにします。話を聞いていた花の井も身を乗り出し、半左衛門の誘いに喜んで乗ります。

蔦重の野望はとどまるところを知らず、大見世だけではなく河岸見世まですべて細見に盛り込もうとします。しかも薄さは変えないとなると、あとは文字の大きさを小さくするしかありませんが、蔦重は諦めません。新之助は蔦重に協力しようとやる気を出しますが、次郎兵衛は「え~」と大きくため息をつきます。

それから数日、蔦重はそれまで細見に載っていなかった小さな河岸見世の女郎屋にも一軒一軒足を運び、吉原のすべての見世と女郎を載せるために毎日毎日女郎屋を訪問して回ります。そして情報が増えるとその度に書き直しをさせられて、新之助は自棄を起こします。その繰り返しで出来上がったものを彫師に彫らせますが、今度は彫師が爆発してノミを蔦重に投げつけます。

頭を抱える半左衛門といねですが、細見がバカ売れすることを思いつきます。それはズバリ有名な名跡の襲名が決まった時です。その時の細見はどれもこれも売れていた気がします。染衣(そめぎぬ)が四代目瀬川の名跡を継いだ時もそうでした。とにかくこうして完成を迎え、蔦重は稲荷社に倍売れるように祈願します。

そこに花の井が来て、女郎の入れ替えがあったからと書き直してほしいと蔦重に頼みます。しかしもう細見は綴じてしまい、蔦重はへなへなと座り込んでしまいますが、その手渡した紙には“花の井改め 瀬川”とありました。「名跡襲名の時の細見は売れるって言うし、しかも20年近く空いてた名跡が蘇るんだ。直す値打ちはあるんじゃないかい?」

 

このころの地本問屋は、一般的な買い付けのほか、自前の本を交換して仕入れ合う習慣があり。西村屋が作った『新吉原細見』は、表紙に小川紙という高級紙を使い、贈答用にも仕えそうな出来上がりです。蔦重が作るであろう本よりは数倍素晴らしい出来栄えに、与八も忠五郎も胸を張ります。

そこに自前の細見を持ち込んだ蔦重は、1冊を喜右衛門に手渡します。問屋たちは薄っぺらく下品な見立てに軽蔑の笑みを浮かべますが、本を開いてみれば──女郎すべてを盛り込み、名跡瀬川を載せる最新版。しかも半値! 西村屋の細見はその情報が未掲載で、与八と忠五郎は顔を見合わせます。「まぁ仕方中橋! 吉原の外にいる方に応じろというのも難しいでしょう」

岩戸屋源八の100部所望を皮切りに、地本問屋たちは蔦重の周りに集まりだします。与八は目を泳がせ、喜右衛門は眼光鋭く「(倍)売れるかもしれませんが……」と声を絞り出します。

鱗形屋の戸が開き、須原屋市兵衛に抱きかかえられて満身創痍の孫兵衛が帰ってきました。

 

作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦谷重三郎)
小芝 風花 (花の井)
中村 隼人 (長谷川平蔵宣以)
井之脇 海 (小田新之助)
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中村 蒼 (次郎兵衛)
正名 僕蔵 (松葉屋半左衛門)
伊藤 淳史 (大文字屋市兵衛)
山路 和弘 (扇屋宇右衛門)
六平 直政 (半次郎)

安達 祐実 (りつ)
山村 紅葉 (志げ)
水野 美紀 (いね)
飯島 直子 (ふじ)
かたせ 梨乃 (きく)

尾美 としのり (平沢常富)
風間 俊介 (鶴屋喜右衛門)
西村 まさ彦 (西村屋与八)
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片岡 愛之助 (鱗形屋孫兵衛)
高橋 克実 (駿河屋市右衛門)
里見 浩太朗 (須原屋市兵衛)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・藤原 敬久
演出:深川 貴志

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第8回「逆襲の『金々先生』」

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