大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(05)蔦(つる)に唐丸 因果の蔓(つる) ~唐丸に忍び寄る影~
平賀源内にもらった大判で吉原に来た小田新之助は、好みのうつせみを指名して錦絵を眺めています。うつせみはまだ載ってはおらず、うつせみの美しさが世に知られてもな、と新之助はつぶやきます。うつせみははにかんで喜びます。『雛形若葉』の裏面に『耕書堂』の板元印を見つけた新之助は、これは蔦重のことだとピンときますが、この仕事から外されたとうつせみに教わります。
同業者が集まって作る「株仲間」制度があり、株を持たない者は商いに参入できない仕組みでした。仲間に入らなきゃ商い出来ないなんて当たり前じゃないか! と花の井は蔦屋重三郎を叱ります。新参者を仲間に入れないとは……とぐちぐち言う蔦重に花の井は声を荒げます。「あンただって! 吉原以外取り締まれって言いに行ったじゃないか!」
松葉屋の半左衛門から、若紫が突出(つきだし)になるから『一目千本』の次の改(あらため)で直してくれと依頼がありますが、不貞腐れている蔦重は無反応です。見かねた唐丸が代わってそれを受け取り、松葉屋を後にしますが、途中で唐丸の正体を知る向こう傷の男に絡まれます。その後、蔦屋に戻ってきた唐丸は、明らかに様子が変です。「蔦重……文を預かったんだけど」
秩父の中津川鉱山では、源内が銀堀たちに責められていました。産出方法が悪く、源内が言うとおりにしたら火災事故に発展し負傷者が多数出たのです。そもそもろくに米も獲れない土地で始めた事業でもあり、5年で10倍にしてみせると銀堀たちから集めた金を返せと迫られ、産出した鉄を運ぶ船を造った代金も船頭に求められ、平秩東作(へづつ・とうさく)を人質にされてしまいます。
蔦重は、鱗形屋孫兵衛からお抱えの改になれと書状が届きます。自分がどれだけ駆け回っても、鱗形屋の本として発行されるのが不満なのです。そこに傷の男がやって来ました。一瞬見てわけありだと察知した蔦重でしたが、自分がやると唐丸は浪人者を接客します。そして源内も蔦重を訪ねてきました。なにも食ってない源内を連れて蔦重は店を後にしますが、傷の男の視線の先にはかぎの開いた金庫が……。
源内によると返金しなければならないのは1,000両ほど、とても返せる額ではありません。なので源内は、鉄を作るのに必要な炭を作る窯を生かして、大量の炭を売りたいと蔦重に炭屋の株が欲しいと泣きついたのです。炭屋の株を売りたい人がいないか、次郎兵衛は親父たちに聞いてみると動くことにします。夜遅く戻ってきた蔦重は、金庫が開いているのに気づき、不用心なと鍵を閉めて収納します。
次郎兵衛は銭が少なくなっていることに気づきますが、さほど気にする様子はありません。傷の男が唐丸のところに来て、博打ですったからもう一度とニヤリとしますが、奉行所に言うよ! と唐丸はきっぱりと断ります。しかし傷の男は、唐丸が“あの日何をしたか”を言うと脅し、そうすれば唐丸も死罪になると迫ります。「蔦重や次郎兵衛も死罪遠島、累が及ぶだろうなぁ。とっくに詰んでんだよお前は」
儲け話を考え人を集め金を集め、蔦重は源内が誰かに仕えることを提案しますが、源内を召し抱えないよう元の仕官先が通達していて無理な話です。それは交流ある田沼意次も同様らしく、わがままを通しているからきついのは仕方ないと源内はつぶやきます。蔦重は源内の話を聞き、本屋の株を買いたいから誰かを紹介してほしいと頼み込みます。源内は目の前にある書物問屋・須原屋に乗り込みます。
主の市兵衛に、書物問屋ではなく地本問屋の株が欲しいと相談する蔦重ですが、地本問屋は株仲間には入ってないと教えてくれます。書物問屋とは違い、地本問屋のいう「仲間」は同じ商いのお仲間という意味で、株を求めても意味がなさそうです。源内もそのからくりを知っていたようで苦笑いです。市兵衛はどこかの本屋に奉公に上がることを提案します。「うちだってな、のれん分けしてできた店なんだよ」
源内の姿は田沼屋敷にありました。500両の都合を申し入れたのです。意次は親しい医師の千賀道有を通じて金を流しておくと約束します。平伏する源内に、礼を言うのはこっちだと意次はつぶやきます。山で稼いで土地の者が金を得る、水路を開いて商いが盛んになる、宿場町が出来て民が潤う、幕府には運上冥加が入る。幕府が旗振りをしてもおかしくないのに、源内が代わってやってくれているのです。
源内は、いっそ開国を進言します。日本中の港を開き、誰でもどこでも外国と取引が出来れば、物の値打ちなどいろいろなことがはっきり分かると説明します。あくまで外国が取引したいのは金銀銅であり、先祖が偉いとまくしたてても通じないわけです。源内と意次はそうなったときの日本を想像して楽しそうですが、二人して大きくため息をつきます。「国を開けば、あっという間に属国とされて終わりましょう」
夜遅く帰宅した蔦重に、次郎兵衛は銭箱が軽くなったような気がすると打ち明けます。心当たりのない蔦重は、次郎兵衛が何か買ったのでは? と笑いますが、これまた心当たりのない次郎兵衛は、何か買ったかなぁ……と首をかしげながら、ポッピンを鳴らしながら帰っていきます。その間、唐丸は無反応で仕事をこなしています。
蔦重は鱗形屋抱えの改になる話を受けることにしました。市兵衛の助言に従って、改になって孫兵衛に認めてもらい、鱗形屋からののれん分けをしてもらうのが一番の近道なのかもしれません。もちろん唐丸を絵師にすることも忘れてはいません。唐丸の錦絵を鱗形屋から出し、作風を変えて市中を驚かせ、唐丸を売っていく戦法です。「でな、お前なんか隠してねえか? 困ってることがあんなら言え」
翌朝、起きると唐丸の姿がありません。そして銭箱もなくなっていました。蔦重は次郎兵衛に留守番を頼み、唐丸を探して回ります。唐丸は銭箱を持って傷の男のところに出向いていました。銭箱を持ちだしたということは、唐丸はもう二度と蔦屋には戻れません。ヘヘヘと笑って銭箱を開けようとする傷の男を唐丸は突き飛ばし、二人とも川に転落してしまいます。
そうとは知らず蔦重は、いろいろな人に尋ねながら唐丸を探して回ります。そして夜、蔦重が蔦屋に戻ると、同心が来ていました。川から土左衛門(水死体)が上がり、盗人一味の傷の男が所持していた蔦屋の本からここに来たようです。吉原は罪人を突き出す役目も負っていて、駿河屋市衛門は蔦重への聞き取りを任せてもらえないかと頼み、同心を帰します。
男とともに子どもも落ちたらしいという話も上がっているらしく、市右衛門は唐丸がなにか絡んでいるとすれば、めんどくさいことにもなりかねません。これ以上は騒がないように市右衛門は口止めしますが、唐丸が銭箱を持って姿を消したことは瞬く間に吉原中に知れ渡り、蔦重は唐丸が描いた錦絵を見つめて落ち込みます。
花の井はそっと蔦重に寄り添い、話を聞きます。実は蔦重は唐丸が絵がうまいということしか知らず、火事の時になぜ家の前で立ち尽くしていたのかも聞き出せずにいたわけです。もうこの世にはいないかもしれないと思うと、涙があふれてきます。花の井は親元に帰ったと思ってると告げます。「まことのことが分からないならできるだけ楽しいことを考える。それがわっちらの流儀だろ?」
秩父の中津川鉱山に戻った源内は、炭の売り出しについて銀掘たちや船頭たちを説得します。源内の説明に納得した銀掘は、東作を縛りあげていた縄を切って解放します。そして蔦重は孫兵衛に改になる話を受けると伝えに行きます。蔦重が鱗形屋の改として前に進み始めたころ、尾張熱田ではある男が一冊の古本『早引節用集』を手にし、プルプル震えていました。
作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦谷重三郎)
安田 顕 (平賀源内)
小芝 風花 (花の井)
井之脇 海 (小田新之助)
小野 花梨 (うつせみ)
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中村 蒼 (次郎兵衛)
正名 僕蔵 (松葉屋半左衛門)
六平 直政 (半次郎)
かたせ 梨乃 (きく)
尾美 としのり (平沢常富)
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片岡 愛之助 (鱗形屋孫兵衛)
高橋 克実 (駿河屋市右衛門)
里見 浩太朗 (須原屋市兵衛)
渡辺 謙 (田沼意次)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・藤原 敬久
演出:大原 拓
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第6回「鱗剥がれた『節用集』」
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