大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(16)さらば源内、見立は蓬莱(ほうらい)
暗殺された松平武元の屋敷を訪れた三浦庄司は、武元が預かっていた手袋を形見にいただきたいと涙ながらに訴えます。しかしあるはずの手袋がなく、誰かが持ち去った可能性があります。弱みとなる品がどこにあるのか分からないのは相当気持ち悪いですが、田沼意次は下手に動けば自分が危ないと感じ始めます。
意次が危惧していた通り、武元が暗殺された前夜に意次に会っていた事実から、殺害したのは意次ではないかという噂が立ち、手袋に毒を仕込んだのも意次という噂も持ち上がって、窮地に陥ります。将軍徳川家治からも手袋の件で詰問されますが、意次は知らないと返答し、お手打ちされることも覚悟していると家治を見据えます。
結局、家基暗殺の下手人探しは中止となりました。平賀源内はこのままでは意次が毒を仕込んだと思われてしまうと、手袋を調べさせてほしいと意次に食い下がりますが、この件は終わったのだと源内を突き放します。意次は源内に、この件は忘れろと金を与えますが、源内の知恵で意次は老中に、しかし源内は山師どころかイカサマ師、手柄を分捕っているのだからこの程度では足りないと震えます。
さまざましくじったのはお前の力不足だろ! と意次は主張します。薬草、鉱山、エレキテル……意次も源内に懸けて、さまざまな案に身銭を切って後押ししてきました。源内は小判を掴むと畳に叩きつけます。「こんなはした金で、俺の口に戸は立てられませぬぜ」と睨みつけると、源内は怒って出て行ってしまいます。
長屋に戻ってきた源内ですが、平秩東作は五郎蔵に手袋のことをカマかけてみると、意次からの依頼で急いで作ったことを認めます。厳しい表情の源内は、なんだそういうことかい、と不気味に笑います。そこに意次を訪ねて町人久五郎が現れます。「あの……平賀源内先生ってのはあなたさまですかい?」
舞台では『新薄雪物語』と浄瑠璃『歌枕恋初旅』が上演されます。富本豊前太夫と名見崎徳治の舞台です。客席に座る蔦屋重三郎(蔦重)は充分に堪能できたようで、舞台後の茶屋で座元が軽快に話していた挨拶を何かに使えないかと考えを巡らせます。横に座るりつが手招きして入ってきたのは浄瑠璃作者の烏亭焉馬(えんば)です。りつの旦那の知り合いで、大工の棟梁をやっています。
今度の芝居を手伝うことになった焉馬は、吉原が話に出てくるのでいろいろ取材したいというのです。蔦重はお安い御用と話を受けますが、お芝居の筋に邪魔にならない程度で、耕書堂の名を出してもらいたいと交換条件を出します。
徳治は、耕書堂の名も広まると大絶賛です。豊前太夫も、自分用の浄瑠璃を書いてほしいと蔦重に伝えてもらいます。蔦重は鬼外先生(=源内)に頼んでみては? と提案しますが、徳治も豊前太夫も黙ってしまいます。鬼外先生はイカれちまって、近ごろでは“不吉の家”に住み始めたらしいとあまり関わりたくなさそうです。“不吉の家”とはちょっと前まで神山検校が住んでいた屋敷です。
さっそくその屋敷を訪問した蔦重は、源内がこの“不吉の家”にタダで住まわせてもらっていると知って驚きます。今や旗本屋敷の図面を引いたり、意次の肝いりで仕事を請け負っています。そこで蔦重は、耕書堂に何か作品を書いてほしいとお願いをします。店先にズラッと作品を並べ、その中に源内作品があれば華やかになると説得します。源内は、“死を呼ぶ手袋”はどうかと考え始めます。
蔦重は蔦重で作品を練っていまして、それを朋誠堂喜三二は高く評価します。ともに考えてくれた人(=瀬以)もきっと喜んでくれると太鼓判です。喜三二が直し絵師北尾政演(まさのぶ)が描いた草稿を、浮世絵師北尾重政に提出します。大量に重政は、これは全部自分がやるのかと腰が引けますが、礼は格別大きく弾むと蔦重に言われれば、受けるしか選択肢はありません。
源内が引いた図面に、依頼した丈右衛門はこれなら費用が3分の1で済むと出来上がりに満足です。主から源内に依頼せよと言われ話ではありますが、源内は最近特にお疲れらしいと聞いていて、心配していたのです。エレキテルが効かないというのも、効かないのは弥七の作ったものであり、医者が否定するのはヤブだからだと震えだします。久五郎が作った煙草をふかしてようやく落ち着きを取り戻す源内です。
“エレキテルってイカサマなの?”と子どもが尋ねる声が聞こえてきました。女の“平賀源内なんてね、偉そうなこと言ってるけど、その実なに一つ成し遂げちゃいないんだよ”という声も、“しくじりばかりでさ!” “やることなすこと薄っぺら!” 源内はそんな声を断ち切るように障子を乱暴に開け、叫びます。「どこだ! お前ら! 出てきやがれ!」 源内の眼からは大量の涙がこぼれ落ちていました。
源内は部屋中の書類といい図面といいことごとくひっくり返します。そこに戻ってきた久五郎を弥七と見間違えた源内は、エレキテルの図面を返せといって掴みかかります。その直後、後ろから丈右衛門に刀で叩きつけられ、源内は気を失って倒れます。久五郎が作って出した煙草がうまく作用したようです。「あとは自害に見せかけるだけにございますね」と笑う久五郎は、丈右衛門に斬られて絶命します。
明け方、ようやく目を覚ました源内ですが、目の前の惨状に腰を抜かします。刀には血がべっとりとつき、久五郎が斬られて死んでいる──。あああああああああ!! と源内は絶叫します。
源内が人を殺めたらしいと、庄司は意次に慌てて報告します。別ルートからその情報を知った蔦重は源内の屋敷に急行し、依頼していた戯曲の草稿を探したいと申し出ます。奉行所の役人は1枚だけ蔦重に手渡し、もう少しあると思うのですがと蔦重は食い下がりますが、役人は面倒くさそうに屋敷に戻っていきます。
意次は源内が捕らえられている牢まで出向きます。源内は、意次なら当然知っているであろう丈右衛門の名を出しますが、意次は丈右衛門という男は知らないし、屋敷普請のことも頼んだ覚えはありません。意次は源内に詳細を聞き取ろうとしますが、源内はたちまち弱気になります。「いなかったのかもしれません。俺には分かんねえんですよ。俺ゃもう、何が夢で何が現(うつつ)だか……」
戻った意次は庄司に調べさせ、松本秀持の用人に丈右衛門という男がいることを突き止めます。誰かが丈右衛門の名を騙り、偽りの普請を源内に依頼したということのようです。意次は松本を呼んで奉行所に申し出ることにしますが、田沼意知は今度は松本を巻き込み、松本の命がかかることになると反対を唱えます。「ここで手を出せば、再び幕は開いてしまうと申し上げております!」
蔦重は須原屋市兵衛と田沼屋敷を訪れます。戯曲の草稿が1枚を除いて持ち去られたことから、あの場に誰かがいたという証だと蔦重は訴えます。そのほかにも、源内は刀は売りに出していて、腰のものは竹光であったのは巷では有名な話なのです。酒に酔っての凶行というのも、下戸である源内に当てはめるにはおかしな話です。意次は、奉行所には回しておくと約束しますが、証となるかどうかは別の問題です。
下戸の源内が酒に酔い、竹光を刀に持ち替えて人を殺めた……そんなことは不可能だと意次もどこかでそう感じながら、今の源内ならやりかねないと言わざるを得ません。そこに源内が獄死したと知らせが舞い込みます。蔦重は、意次は源内に死んでほしかったのではないかと反発しますが、意次は源内との間に漏れてはまずい話は山ほどある、と打ち明けます。「何を口走るか分からぬキツネ憑きは恐ろしいからな」
近頃お江戸に流れしは、死を呼ぶ手袋の噂。そこに目をつけたるは稀代(きだい)の悪党。その噂を使いあちらこちらで人殺し。だがその鬼畜の所業に気づいたる男がいた。その名も七ツ星の龍。しかし悪党も大したもの。なんとその龍こそを人殺しに仕立て上げる。危うしの七ツ星。そこに現れたるは古き友なる源内軒。これより幕を開けたるは、そんな二人の痛快なる敵討ち──。
意次は暴れる蔦重を置いて廊下に出、追いかけてきた庄司に戯曲の草稿を焼き捨てるよう手渡します。「源内……言うたではないか。お前のために、忘れよ、と……」 そのころ一橋治済(はるさだ)は、薩摩の芋を食っています。その一橋家の庭では、源内の屋敷から持ち出したありとあらゆる書類が焼かれています。源内は、毒が仕込まれた手袋について詳細に調べようとして、殺されてしまったのです。
源内の死が受け入れられない蔦重は、罪人の骸(むくろ)は引き渡されないことを逆手に、死んだことにしてトンヅラしたと考えるようにします。市兵衛も源内の本を出し続けることで、ずっとずっと源内を生き延びさせると笑います。蔦重は突っ伏して悲しみにくれ、市兵衛は蔦重の背中にそっと手を添えて慰めます。「伝えていかなきゃな。どこにも収まらねえ男がいたっていうことをよ!」
おめえさんはさ、これから板元として書をもって世を耕し、この日の本をもっともっと豊かな国にすんだよ。耕書堂の名付け親・平賀源内先生。蔦重は「俺も伝えてかねえとなぁ。もらった名とその意味を」と、吉原で夜空を見上げます。粉雪が舞い、蔦重が差し出した手に乗って解けていきます。
これよりは次の幕を開けますところ、正月の新版、名題(なだい)をご覧に入れたく──と蔦重が差し出した手の方には、桜の木と、それに結ばれた短冊がありました。子年(ねどし)の新版です。安永9年正月、蔦重は青本ほか10冊もの新作を一挙刊行します。耕書堂の新たなる幕開けです。「ぜひ吉原耕書堂へお立ち寄りくだせえ!」
作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦屋重三郎)
安田 顕 (平賀源内)
宮沢 氷魚 (田沼意知)
高梨 臨 (知保の方)
寛一郎 (富本豊前太夫)
木村 了 (平秩東作)
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安達 祐実 (りつ)
橋本 淳 (北尾重政)
古川 雄大 (北尾政演)
尾美 としのり (朋誠堂喜三二)
映美 くらら (大崎)
冨永 愛 (高岳)
相島 一之 (松平康福)
眞島 秀和 (徳川家治)
生田 斗真 (一橋治済)
石坂 浩二 (松平武元)
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原田 泰造 (三浦庄司)
里見 浩太朗 (須原屋市兵衛)
渡辺 謙 (田沼意次)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・美濃 里亜
演出:大原 拓
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第17回「乱れ咲き往来の桜」
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