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2025年5月11日 (日)

大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(18)歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢(いっすいのゆめ) ~いよいよ歌麿登場~

蔦屋重三郎(蔦重)は、たくさんの女郎絵を、勝川春章風、礒田湖龍斎風などに描き分ける“北川豊章”という絵師のことが気になり、うーんと腕組みする蔦重は、豊章とは唐丸のことだと気がつきます。パッと明るい表情になる蔦重です。さっそく賭場の豊章に会いに来た蔦重ですが、眼光鋭いその表情からは唐丸の面影は少しも感じられません。見込み違いだったか、と大きくため息をつきます。

蔦重を訪ねた朋誠堂喜三二に、蔦重は次の青本の新作を十作出したいと依頼します。一人で十作なんて無理よ! と断る喜三二は、三作ぐらいなら書けそうです。そこで蔦重は“居続け”という条件を出します。居続けとは女郎屋から帰らず連泊することです。これは限られた上客にだけ許された特別サービスで、蔦重はさらに一作書くごとに女郎屋を変えられると話を持ち掛けます。「まあさん……十作書けます!」

松葉屋で気分よく執筆する喜三二は、松の井花魁にところてんを食べさせてもらい、満足です。ちなみに居続けのお代は青本のもうけで支払うつもりですが、りつはそこまでやる必要があるのかと疑問です。青本は正月の縁起物で、蔦重なりのこだわりなのかもしれません。次の俄(にわか)で「二人羽織のそば早食い」を催すつもりのつるべ蕎麦・半次郎は、次郎兵衛と練習中です。

まさか、賭場で見かけた豊章が唐丸に絵を描かせているのではないか──と推察した蔦重は豊章に会いに行きますが、出てきたのは捨吉でした。懐かしさあまりに馴れ馴れしく声をかける蔦重ですが、捨吉は表情を固まらせ、どちらさまで? と困惑します。そこに馴染みの寂蓮が来て、捨吉にさっさと戸を閉められてしまいます。

夜明け前に寂蓮が帰っていき、1枚の絵を見た捨吉は思わず「あの時のか……」とつぶやきますが、それを蔦重が見過ごすはずもありません。家に上がり込まれて、豊章の代わりに絵を描いていたとバレてしまいます。蔦重は豊章に内緒でウチで仕事しないかと誘いますが、捨吉はかたくなに拒絶します。仕方なく、また来ると言って静かに戸を閉めます。

長屋の前で煙草を吸っていた男によると、捨吉は男も女も相手するようで、豊章に世話される代わりに商いをさせてもらっているらしいのです。ただ「あいつ人別もねえだろうしよォ」との言葉が蔦重には気になります。人別とは今の戸籍・住民票のようなもので、誰かにすがらなければ生きていけない捨吉の状況を考えると、蔦重も胸が苦しくなります。

耕書堂に戻ると松葉屋の半左衛門が来ていました。居続けをする喜三二の筆が止まってしまったというのです。書けなくなったのかと心配する蔦重ですが、その筆ではなく、腎虚になってしまったのです。男性特有の病で、倦怠感、精力減退、性欲低下……かの小林一茶も恐れるほどです。喜三二はこの世の終わりのような顔をしているようです。

蔦重は喜三二を医者に見せますが、しばらく控えていれば大したことはなさそうです。喜三二のために処方した薬も、80の爺さんも元気にしたと蔦重に煽られれば何とかぐぐっと飲み干し、松の井に連れられて部屋を出ていきます。ただ実際にはこの薬は眠り薬で、休めば治ると医者は笑います。「これで治らなきゃまことの腎虚、どうにもなりませんわな。はは」

蔦重は、好きでこの“地獄商い”をする人がいるのか疑問です。根っからの好色、男が身を売る……。身体を売る暮らしが好きだという人はいるのだろうかと、蔦重はいねに疑問をぶつけます。「いないとは言い切れないけど、たまにいるのは罰を受けたい子だねぇ。自分のせいで色が死んだり親が死んだり、“自分はひどい目に遭って当然”だから、この稼業も好きだ、ありがたいって言い出すのはいたよ」

眠りから目覚めた喜三二ですが、松の井の艶っぽい仕草に、喜三二の欲がむくむくと大蛇になっていきます。医者曰く、類いまれなる好色の気が化け物を作っているから、気の元から断ち切るしかない──。それは男にはできないと、いねが刀を抜き大蛇に立ち向かいます。ふざけんじゃねえ! やめてくれぇ! と喜三二が叫ぶのも聞かず、いねは大蛇の首を切り落とします。

喜三二はひどい夢を見ていました。自分の股間を見て、これも夢だったりしねぇかなぁと嘆きますが、夢枕、夢から覚めてもまた夢、とつぶやいた喜三二は、何かをひらめいたようですぐさま文机に向かい、筆を取ります。

 

「あンたはどうしたって死なない。鬼の子だからね!」と母に言われたことを、捨吉は思い出していました。燃え上がる家、その家の前に立ち尽くす自分……。戸を叩く音がして、その夜も捨吉は男を相手にします。

夜明け前、おじゃま山~! と戸を開ける蔦重は、気を失っている捨吉を発見します。いねに教えられたこともあり、こんなことをしているのは死にたいからかと疑問をぶつけます。唐丸を匿い、ともに過ごしてきた蔦重は、いなくなる前にどうしてしつこく聞かなかったのかと、唐丸がいなくなってから後悔していたのです。そんな蔦重の思いを知り、捨吉はぽつりぽつりと自分の過去を話し始めます。

母は夜鷹(下等の売春婦)で捨吉を身ごもり、どうしても下りなかったらしく、幼いころから“なんで産まれてきたんだ” “食ってくのもやっとなのに”と言われながら育ちました。7歳になり人に売られ、さんざんだったけど金を稼げば母の機嫌がよく。ヤス(向こう傷の男・母のヒモ=第5話参照)が自分の稼いだ金でよその女を買ったと当たられ、額に大きなたんこぶを作ったのです。

その時出合った絵を描くじいさんが鳥山石燕先生だったのです。地面に木の枝で妖(あやか)し絵を描き出し、捨吉は仕方なく石燕の絵を真似て描くわけですが、見て写して見て写してがとても楽しく。石燕にウチに来いと勧められますが、母が許すはずもありません。そんな時に吉原の町の火事になるわけです。

「あンたはどうしたって死なない! 人の命を吸い取る子だからね! 鬼の子だからね!」つぶれた家から身を乗り出して、母は捨吉の足を掴んで離しません。このままじゃ母に殺される、そう思った捨吉は母を振り切って逃げだしたわけです。それどころじゃなかったというのは言い訳に過ぎず、本心は母から逃げ出したかったのです。

ただ、自分がやったことが怖くなり、何もかも終わりにしたくなって、そもそも産まれてきたのが間違いだったと強く思うようになってしまいました。蔦重と吉原で過ごした日々は夢のようでしたが、ヤスに見つかってしまい、ヤスを川へ突き落して自分も身投げ──。「俺を助けてえって言ってたけど、助けちゃいけねえんだよ、俺みたいなゴミは。さっさとこの世から消えちまったほうがいいンだ」

蔦重は、捨吉を助けられないと感じました。しかし捨吉が生きたいなら手を貸すことはできます。俺は死んで償いたいのに、業突(ごうつく)な本屋に無理やり絵を描かされているという言い訳にはなれそうです。蔦重は、死んだ奴らには悪いが、捨吉が生きててよかったとしか思えないわけです。「俺の役目はお前を助ける。俺はお前を助ける」 蔦重はそっと筆入れを捨吉に握らせます。

蔦重と捨吉は肩を並べて並木道を駆けていきます。むかし、家が燃えて母を見捨てたあの日、祠を背負う蔦重に手を引かれて一緒に逃げたように──。

 

駿河屋の階下でところてんをおいしそうに口にするふじは、階段から突き落とされる音が聞こえてもさほどは驚きません。捨吉を市右衛門の養子として、捨吉の人別があればいいと食い下がる蔦重です。あんな訳ありを戻せるかよ!? と激怒する市右衛門ですが、ふじは1枚の書状を蔦重に手渡します。それは、四郎兵衛という養子がいたときの、四郎兵衛の人別です。

だめだだめだ! と市右衛門は拒絶しますが、ふじはドン! と足を叩きつけ、すごい剣幕で市右衛門を睨みつけます。「重三郎はあの子をずっと待ってたんだよ! そんな大事な子なんだから、何があっても何とかするんじゃないかね!」 その凄味に意気消沈する市右衛門ですが、蔦重も吉原も大事に思うからこそだというのは、ふじもよく分かっています。

蔦重が耕書堂に戻ると、豊章が捨吉を連れ戻しに来ているところでした。蔦重は、捨吉を義理の弟「勇助」だと言い出します。死んでしまった女郎玉野の子で、駿河屋の養子にいた子だと言われれば、いた気がする! と次郎兵衛も乗ってきます。豊章はその話を信じませんが、蔦重に勇助の人別を見せられれば何も言えません。「しかとは思い出せねえんですけど、勇助って言われたら何だか懐かしい心持ちが」

蔦重は、これまで“勇助”が世話になったことへの感謝に豊章に頭を下げます。そこで反抗するかと思いきや、豊章は仕事くれ! と言い出します。耕書堂の表に貼ってあった“青本 洒落本 求作者”という張り紙のことです。書けんすか? とニヤリとする蔦重ですが、そこは俺に賭けてみようぜ、と胸を張ります。

迷惑をかけたと小さくなる勇助ですが、作者を探していたのは本当なわけで、うまくいけば『飛んで火にいる夏の武士』ってところです。蔦重は勇助の画号として『歌麿』を提案します。歌丸ではなく歌麿……お公家さんの出だとうわさが立ち、京の偉い絵師の落とし胤(たね)ということになって、お内裏に絵を描くことになった……まあそんなにうまくいくことはなさそうですが(笑)。

蔦重自身、勇助だけではなく、瀬川花魁、平賀源内と、誰も助けられなかったという悔しい思いがあります。結局のところ勇助を助けて救われるのは自分自身なわけです。「歌麿……あの時の約束、守らせてくれ。お前を当代一の絵師にする。だから死ぬな。俺のために生きてくれ」 勇助は、義弟が義兄に逆らうわけにはいかないと涙ぐみます。

吉原の仲の町通りを進むのは花魁誰袖(たがそで)です。その後方から志げもついてきています。その美しさに通りを行き交う人たちから歓声が上がります。そのころ蔦重は、喜三二が書き上げた『見徳一炊夢』を読んで高評価です。息子のおかげだと自分の股間を見て笑う喜三二ですが、病の方はめっきり“やんちゃ”になってしまったと大笑いです。そう、誰袖を指名したのは喜三二だったのです。

 

蔦重が着々と耕書堂を支える仲間を増やしていたころ、田沼意次もまた、着々と派閥を固めていました。意次が老中格などの人事案を披露する中、鶴子と夜更かしをしてしまったためあくびが止まらない将軍徳川家治に、意次は大笑いです。そこに、西の丸の知保の方が毒をあおったと知らせが舞い込みます。

ついに鱗形屋が店をたたむことになったそうです。細見の板木も売ってしまって、これでまた江戸生まれの本屋がなくなってしまうことに、須原屋市兵衛は寂しそうです。

 

作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦屋重三郎)
染谷 将太 (捨吉)
福原 遥 (誰袖)
久保田 紗友 (松の井)
加藤 虎之介 (北川豊章)
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安田 顕 (平賀源内(回想))
小芝 風花 (瀬川(回想))

中村 蒼 (次郎兵衛)
正名 僕蔵 (松葉屋半左衛門)
六平 直政 (半次郎)

安達 祐実 (りつ)
山村 紅葉 (志げ)
水野 美紀 (いね)
飯島 直子 (ふじ)

尾美 としのり (朋誠堂喜三二)
眞島 秀和 (徳川家治)
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片岡 鶴太郎 (鳥山石燕)
高橋 克実 (駿河屋市右衛門)
里見 浩太朗 (須原屋市兵衛)
渡辺 謙 (田沼意次)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・積田 有希
演出:小谷 高義

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第19回「鱗(うろこ)の置き土産」

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