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2025年5月18日 (日)

大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(19)鱗(うろこ)の置き土産

将軍徳川家治と田沼意次が対面し、和気あいあいと会話しているところへ、側室知保の方が西の丸で毒をあおったと知らせが飛び込みます。京から亡き御台所に瓜二つの中臈(ちゅうろう)を迎えたこともあり、仮にお世継ぎが生まれたとしても養育に携わることはもうなく、自分は徳川には無用の者と先行きを悲観しての服毒でした。

大奥総取締の高岳(たかおか)の元には、田安徳川家初代の正室・宝蓮院と、白河松平家を相続した松平定信から書状が届いていました。家基の御台所となるはずだった種姫の処遇はどうなるのかという問い合わせです。その手際の良さと、知保の方の回復の早さに、高岳は女たちが仕組んだ狂言ではないかと疑います。

要は、家治の鶴子への執心が、知保の方や種姫に対してどれだけひどい仕打ちなのかを分からせるためのものだったのです。幸い服毒した量も少なく、その道に詳しい者のおかげで解毒も上手くいき、知保の方に大事はありませんでしたが、寵愛を失っていく者の最後の悪あがきともとれるものです。

 

そのころ、店をたたむことを決めた鱗形屋では、跡取りの長兵衛が細見を西村屋与八に譲ります。主の孫兵衛はすっかり気落ちし、そんな中でこんな大事な話を進めることに与八は躊躇します。長兵衛は、西村屋に細見と次男万次郎のことを託し、そして鶴屋の喜右衛門にはお抱えの恋川春町の今後をお願いすることにします。

鱗形屋を訪れた蔦屋重三郎(蔦重)は、西村屋が買い取った額の3倍で買うと長兵衛に伝えます。今の鱗形屋には金が一番入り用だとつけこんでの話に、与八や長兵衛は反発します。帰ろうとする春町に蔦重は、ウチでも一作どうですか、と気さくに声をかけますが、春町は目も合わさず、寄るな と牽制します。「お前のような盗人と話すことなど何もない!」

とぼとぼと耕書堂に帰ってきた蔦重ですが、駿河屋の市右衛門が来ていました。“カボチャ”(大文字屋の市兵衛)が亡くなったのです。日本橋の高級料亭「百川」の重箱には豪華な品がたくさん入っていて、親父たちは“カボチャ”にも食べさせてやりたかったと悔やみます。そんなことよりも、と口を開いたりつは、鱗形屋の細見が西村屋に渡り、西村屋版の細見が出てしまったことを残念がります。

『雛形若菜』も、今人気の鳥居清長が描くとあって女郎たちも女郎屋も載りたがり、吉原内でも西村屋の細見を仕入れる者が出始めたわけです。青本は鶴屋が推す芝 全交という作者が人気で朋誠堂喜三二が居続けで書いたものはパッとせず。春町を引き込むことをりつが提案し、親父たちも全力でもてなすと力が入りますが、真面目な方なんでと蔦重は丁重に断ります。

鶴屋の仙鶴堂では、3ヶ月経っても案思(あんじ=作の構想)が出なかった春町に、喜右衛門は『金々先生』を書き直そうと提案します。同じことをやるのは好きではないと難色を示す春町ですが、どんなに手あかがついていないネタでも古い謡曲を元ネタに持って来られて、読み手はついてこれないとバッサリ。「今の流行りは、知識はなくともくすりと笑えるおかしなやり取り、気の利いた文句なんですよ」

不貞腐れた春町は、だったら自分ではなく他の人に、全交に書かせればいいとへそを曲げます。しかし喜右衛門は手を緩めず、“ハッキリ言って春町の作風は古い”と指摘し、さすがの春町も怒りに震えます。“粋で洒落た春町” “新しい『金々先生』”という評判を目指すのも悪くない、と喜右衛門に言われては、春町は怒りをぶつける場所もありません。

蔦重は、春町を鶴屋からかっさらう手だてを須原屋の市兵衛に相談します。蔦重は春町に嫌われていて難しいかもしれませんが、今ならいけるかもしれないとつぶやきます。「鶴屋さんから出てくる春町先生、まるでな、葬式みてえな顔していたぜ。ありゃよほどソリが合わねえんじゃねえのか? 力のある者同士がぶつかっちまうとな、お互いが潰し合う。こういうこともあるんだよ」

考えてみまさ! と出ていく蔦重と入れ替わりに、藤八が入ってきました。藤八は鱗形屋の細見が西村屋に移ったことを伝え、今後も変わらぬご贔屓をと頭を下げますが、それを頼まれても……と市兵衛は困惑しています。

板木を整理していた孫兵衛のところに、春町が草稿を持ち込んで孫兵衛に読んでもらいます。誰もやってないことをやりたい気持ちを理解しつつ、能書き(優れた点を並べ立て、自慢や喧伝する言葉)ばかりと率直な感想を口にします。「やはり鶴屋は正しいのだな」と、自分に才能なんかなかったと卑屈になります。もうひと踏ん張りしてみる と言って、春町は肩を落として鱗形屋を出ていきます。

藤八に案内されて鱗形屋を訪れた市兵衛は、鱗形屋から仕入れていた細見は、実は蔦重に頼まれていたのだと打ち明けます。返せと言われても商いは返せないため、せめてもの孫兵衛への償いとしてです。昔のやり取りを思い出し、ハッと気が付く孫兵衛に、市兵衛は出立前の孫兵衛が何か償っておくものはないかと尋ねます。

 

蔦重は、春町と仲の良い喜三二に、耕書堂で書いてもらうために春町への土産は何がいいか相談します。「お前さんと春町は無理じゃねえかな」と即答する喜三二ですが、春町が今度鶴屋と組むと聞いて目を見開きます。万事洒落ている喜右衛門に、あの春町が応じられるとは思えないわけです。

長兵衛は孫兵衛の手紙を持って耕書堂を訪ねます。鶴屋から春町をかっさらってほしい──。春町の草稿を読んだ孫兵衛は、このままでは春町は潰れてしまうと危惧していたのです。かっさらうのはお手のもんだろ? と皮肉も効き、蔦重なら誰も思いつかない案思があるはずと長兵衛が口にすると、ああ! と喜三二が声を上げます。「案思を土産に……春町ってのはな、誰もやってねえことをやりたがんのよ」

春町が食いつく案思を一番理解しているのは孫兵衛だろうと、蔦重は返答します。しかしその答えで俄然やる気になった孫兵衛です。喜三二と蔦重、その案思を孫兵衛に伝える。あるいはきくやりつ、志水燕十(北川豊章)も巻き込んで案思づくりに没頭します。しかしいろいろな本を確認してみると、すでにあちこちで使われたネタだったりして、浮かんでは消え、浮かんでは消えの繰り返しです。

これだけ青本が流行って世に出ていれば、誰もやっていない案思なんかもうなんと悲観する一同ですが、喜多川歌麿はいっそ絵から考えてみることを提案します。「青本は文と絵があるわけで、行き詰ってんなら、こんな絵見てみてえなって考えてみるとか?」 それだ! と蔦重は、みんなが見たことない、見てみたい絵を考えます。西洋の化け物、赤子だらけの賭場、100年先の髷(まげ)……。

喜三二に呼び出された春町は蔦重と対面させられ、聞くまでもないとすぐに出ていこうとしますが、「誰も見たことのない100年先の江戸」を書きませんかと蔦重に提案されます。春町の頭の中に、一瞬にしていろいろなものが浮かび上がります。しかも蔦重は、先生のそれが見れればいいのでと、鶴屋で描くことを勧めます。「どうぞ、使ってくだせえ」

しかし人の案思でよそで描くのは、実直な春町には盗人にしか思えず乗り気ではありません。過去に春町作『辞闘戦(ことばたたかい)』を読んでうなった経験を持つ蔦重は、奇天烈だけど膝を打つ春町にしか書けない“100年先の江戸”を見たいと説得します。古臭いぞ俺は、と春町は卑下しますが、蔦重には関係ありません。「古い? 新しい? んな鼻くそでしょ。先生が描くのは、100年先の江戸ですよ?」

今まで黙って聞いていた喜三二は、煮え切らない春町の態度に「ああ……もう……」と思いを抑えつつ、春町を抱えていた孫兵衛も見てみたいのでは? と説得に回ります。「きっと、誰よりも見てえと思うよ」と言われて、春町はうつむきいろいろ考えているようです。

 

知保の方の思いを知ると、家治は鶴子と子作りに励むこともできず、実子誕生を諦めかけています。家治の血を受けない者が跡継ぎとなってもいいのかと意次は迫りますが、父の9代家重は身体が利かず、家治の子もみな体が弱いわけで、血をつなぐ怖さもあります。「ふたを開けてみれば、後を継げるような男子はあの家しかおらぬ」と、家治は一橋家のことを言っているのです。

8代吉宗が体の利かない次男家重に後を継がせ、秀でた三男宗武と五男宗尹(※放送では「次男三男」と表現)を選ばなかったという遺恨が、今のような異様な有り様を作り出しているのは果たして偶然か? 自分の思い込みか? 家治は「血筋は譲ろう。しかし知恵は、考えは、譲りたくない」と、意次を守り切ることを宣言します。主殿(とのも=意次)がおらねば今日の繁栄はなかったと認めているのです。

春町は西村屋の与八に、すまぬが不義理をする! 耕書堂で書く! と土下座し、与八は大激怒です。一方、孫兵衛は蔦重にこれまでのことを詫び、蔦重と和解します。そして蔦重には『塩売文太物語』の板木をプレゼントします。鱗形屋の絵草紙のはじまりのようなものです。鱗形屋が青本を作ったのは蔦重がきっかけであり、この板木は蔦重に持っていてほしいわけです。

蔦重にとって『塩売文太物語』は、初めて市右衛門にもらったお年玉で初めて買った思い入れのある本で、こんなお宝はありません。「これ以上ねえお宝を……ありがとうございます!」と涙ぐみます。それは孫兵衛も同じで、ウチの本を読んだ子どもが今や本屋になるとは、思いもよらなかったことでしょう。横で聞いていた歌麿も、とても嬉しそうです。

孫兵衛は長兵衛とともに喜右衛門と与八の前に現れ、春町の不義理を詫びます。ただ与八は怒りが収まらないらしく、仇はとるからね! とつぶやきます。こうして鱗形屋は日本橋を後にします。

蔦重は九郎助稲荷で、孫兵衛の店もうまくいきますようにと手を合わせます。その背後で誰袖(たがそで)は、蔦重と自分の恋もうまくいきますようにとぴったりと寄り添います。わっちら夫婦になりんしたゆえ、と懐から紙を取り出します。『誰袖は蔦屋重三郎に五百両にて身請けを許すこととす 大文字屋市兵衛』 その実は、今わの際に市兵衛に筆を執らせ、書かせたものでした。

耕書堂に帰ってきた蔦重は、次郎兵衛とりつから『菊寿草』という本を受け取ります。今年出た青本の番付で、そこには『極上上吉 見徳一炊夢 蔦や座』とありました。つまり蔦重が出した『見徳一炊夢』が第一位、“極上上吉”との評価なのです。青本すべてを読み比べて書いたのは四方山人、大田南畝のことです。平賀源内に才能を激賞されたかつての天才少年です。

うれしくなって、蔦重はたまたまそこを通りかかった喜三二と春町にそれを見せ、みんなで大喜びします。『見徳一炊夢』、腎虚の恐怖と闘いながら喜三二が筆を振るった一作でした。

 

作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦屋重三郎)
染谷 将太 (喜多川歌麿)
福原 遥 (誰袖)
高梨 臨 (知保の方)
奥 智哉 (徳川家基(回想))
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中村 蒼 (次郎兵衛)
本宮 泰風 (若木屋与八)
正名 僕蔵 (松葉屋半左衛門)
伊藤 淳史 (大文字屋市兵衛)
山路 和弘 (扇屋宇右衛門)

安達 祐実 (りつ)
山村 紅葉 (志げ)
かたせ 梨乃 (きく)

古川 雄大 (北尾政演)
岡山 天音 (恋川春町)
尾美 としのり (朋誠堂喜三二)

徳井 優 (藤八)
風間 俊介 (鶴屋喜右衛門)
西村 まさ彦 (西村屋与八)

映美 くらら (大崎)
冨永 愛 (高岳)
花總 まり (宝蓮院)
眞島 秀和 (徳川家治)
生田 斗真 (一橋治済)

石坂 浩二 (松平武元(回想))
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片岡 愛之助 (鱗形屋孫兵衛)
高橋 克実 (駿河屋市右衛門)
里見 浩太朗 (須原屋市兵衛)
渡辺 謙 (田沼意次)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・廣瀬 温子
演出:大嶋 慧介

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第20回「寝惚(ぼ)けて候」

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