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2025年6月 1日 (日)

大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(21)蝦夷桜上野屁音(えぞのさくら うえののへおと)

三浦庄司は田沼意次に“蝦夷に興味はないか”と話を持ち掛けます。蝦夷地とはざっくり言えば北海道のことで、そこを天領(幕府領)にしないかという話です。築地の梁山泊と噂される伊達家家老の工藤平助屋敷を訪ね、『赤蝦夷風説考』を読んだのです。赤蝦夷とはざっくりロシアのことで、庄司は城を築いて日本に攻め込むのかと驚愕しますが、ロシアは単に交易をしたいだけと平助は笑って否定します。

ロシアが交易を!? と意次は身を乗り出します。蝦夷は松前家の領地ですが、津軽から海を隔てたすぐ、蝦夷の南側にポツンとあり、隣には蝦夷の民が住む蝦夷地が広がっているそうです。そこには数多(あまた)の金銀銅山が眠っているとニヤリとする庄司に、平賀源内もそんなことを言っていたと意次は思い出します。庄司は松前から蝦夷地を召し上げて天領とし、長崎のように港を開いて交易で大儲けすることを提案します。

しかし、横で話を聞いていた田沼意知は、領地を召し上げる「上知(あげち)」をするにはそれ相応の理由が必要だと待ったをかけます。以前も急いで上知をした秋田の銅山も結局は返す羽目になってしまったのです。急がば回れ、意知は奏者番のお務めの傍ら、上知の理由に使えそうなものを調べてみることにします。

そのころ蔦屋重三郎(蔦重)は狂歌を広めるべく、吉原で狂歌の勉強会です。花魁の誰袖(たがそで)は『狂歌よみ 蔦の兄さん 儲かれば わっちの身請けも 近づきんす』と詠み上げますが、歌じゃないと蔦重はバッサリ。『誰(た)が袖の からまる蔦や 商ひの 伸びる葉末(はまつ)に 黄金花(こがねばな)咲く』と詠む二代目大文字屋市兵衛に、蔦重は真顔で返します。「お上手ですけど……叱んなくていいんですか!?」

耕書堂に戻って来ました。『雛形若葉』の試し刷りが仕上がったようで、蔦重はその出来栄えに感嘆の声を上げます。次郎兵衛は、なぜ『雛形若菜』を作っているのか疑問ですが、『雛形若菜』に取って代わって西村屋を吉原から追い出し、喜多川歌麿の名を売って、錦絵でも耕書堂の名を上げようという思惑なのです。蔦重に肩を抱かれてニッコリ微笑む歌麿です。

しかし、西村屋の『雛形若菜』は売れに売れ、二番煎じの『雛形若葉』はさっぱりです。出資した呉服屋もおかんむりで、蔦重はたちまち親父たちに囲まれます。りつは鶴屋の『御存(ごぞんじの)商売物』を叩きつけ、絵師・北尾政演に戯作を書ける能力に気づけなかった不始末? を責め立てます。市兵衛の狂歌に悪ノリする蔦重は、案の定 駿河屋市右衛門に2階から突き落とされます。

絵師・北尾重政は、弟子が蔦重に不義理を働いたと政演を連れて詫びに来ますが、政演に悪びれる様子はありません。責めるに責められない蔦重に、絵はこちらで書くんで! と飛んで跳ねて帰っていく政演です。歌麿は、錦絵の色の出を重政に尋ねますが、絵師と本屋が摺師にきちんと指図を出せるかどうかで仕上がりは変わると助言します。「やっぱりすげえんですね、西村屋って」と歌麿はため息をつきます。

 

耕書堂に立ち寄った大田南畝は、これから“土山宗次郎主催の花見の会”とと言いつつ、みんなで向かったのは吉原の駿河屋です。宗次郎の指名で呼ばれたのは敵娼(あいかた)・誰袖で、桜の化身のような美しさにみな驚きの声を上げます。懐から取り出した紙入れの中身がすっからかんと誰袖が開いて見せると、欲深なやつめ、と宗次郎は紙花(チップ=1枚2万円程度)をどさりと紙入れに乗せます。

誰袖は、末席にいる意知に目を奪われます。宗次郎に求められて“袖に寄する恋”と題材を決め、みな好き好きに歌を詠みますが、その間もずっと誰袖は意知を見つめます。しかし意知は隣に座った湊 源左衛門と蝦夷地について話し合っています。「蝦夷地を松前より召し上げてくれるなら……松前道廣は北辺にすくう鬼!」

桜の木に粗相をした家臣の妻をしばりつけ、頭の上に乗せた皿を銃で撃ち砕きます。妻は恐怖におののき、気絶してしまいます。銃で撃ったのは松前家当主の道廣、その様子をじっと見つめる意次や一橋治済です。治済は意次にも勧めますが、武芸のたしなみが浅いから的を殺めてしまうと断ります。道廣は、的は当家からいくらでも出すと愉快そうに笑います。

治済が外様大名と仲が良いというのは有名な話で、将軍徳川家治もさほど気にしていません。そこで意次は、蝦夷地を天領にする計画を家治に打ち明けるのですが、その企みを知った道廣は治済に頼み、治済が止めに入るという筋書きを家治は瞬時に理解します。やはりよしましょう、と計画を引っ込める意次に、家治はやるべきだと背中を押します。「どんな者が将軍となろうと揺るぎない幕府を作る。そのために入り用なことであれば」

吉原からの朝帰り、泥酔の南畝と朱楽菅江(あけらかんこう)、元木網(もとのもくあみ)は耕書堂に立ち寄ります。口からぽんぽんと狂歌が出てくる南畝に、狂歌集を出しましょうと提案する蔦重ですが、すでに南畝のところにはその依頼が殺到していて、狂歌でも出遅れたと蔦重は力を落とします。

蔦重は最近、老舗本屋との力の差を感じずにはいられないのです。南畝は老舗には出せないものを蔦重は出せるではないかと助言します。お前には“そうきたか”がお似合い──。そう言われた蔦重は、南畝に青本を書いてほしいと依頼します。「狂歌集が出りゃ、来年は間違いなく四方赤良(よものあから)の年になりまさ。そこに先生が書いた青本をあえて当てる。こりゃ間違いなく“そうきたか!”ってなりません?」

 

蔦重はさっそく『雛形若葉』の錦絵版を作るべく親父たちに諮りますが、絵師が歌麿では金を出せないと渋られます。今回は仕方なく、歌麿ではなく政演でいくことになり、やる気になっている歌麿に「此度は外れてくれ、ここまでやってもらったのに」と詫びます。大仕事を任された政演の代わりをやるよ、と笑みを浮かべる歌麿に、蔦重は何度も何度も礼を言います。

源内の片腕・平秩東作、東作から蝦夷通と紹介された宗次郎、宗次郎たちの仲立ちで源左衛門(松前家の元勘定奉行)から密かに話を聞き出した意知は、道廣は北辺の地をよいことにやりたい放題で、家中を恐怖で従わせ、蝦夷の民にはひどい仕打ち、とどめにはご法度の抜け荷(密貿易)も行う。松前はロシアとの抜け荷で莫大な利益を得ていることを掴みます。これを召し上げの理由にしてはどうかと意次に提案します。

道廣が“白天狗”(治済)と昵懇であることから、意次は彼らに気づかれないように事を進め、抜け荷の確かな証を突きつけなければならないとつぶやきます。源左衛門が松前にいたころ、出回るとまずいと“抜け荷の取引の場を記した絵図”を方々探し回ったそうで、意知はそれが証にならないかと意次に提案します。意次は治済が関係するこの件から手を引くよう意知に告げますが、うまくやりますよと意次を見据えます。

九郎助稲荷で手を合わせる誰袖は、宗次郎を通じて意知に文を送ります。「折り入ってお話ししたきことが……えぞの桜につきんして」 意知は、誰袖は松前とつながりはないながら、なかなか強(したた)か者ゆえ、事情を嗅ぎつければ強請(ゆす)ってくるかもしれないと宗次郎は答えます。うーむと考え込む意知です。

さっそく吉原を訪れる意知ですが、誰袖によれば 吉原には松前家の家来や蝦夷の物産を扱う商人の出入りがあり、抜け荷の証を探している意知の力になれるのではないかと呼び出したわけです。間者の褒美に金をせびろうとする誰袖の思惑に気づいた意知ですが、誰袖は意知を見据えます。「金よりもっと欲しいものがありんす……花雲助さま、わっちを身請けしておくんなんし」

 

蔦重は「うた麿大明神の会」を開きます。戯作者、絵師、狂歌師、そしてそれらを志す人ならだれでもどうぞという宴会であり、墨摺りから錦絵、春信風、湖龍斎風、石燕風、清長風、あらゆる絵を描き分ける歌麿の絵の力を宣伝するために催された会です。お前の顔を売るためだぞと歌麿の尻を叩きつつ、『御存商売物』で名を上げた政演のことが引っ掛かって荒れている恋川春町がいます。

自身の『辞闘戦』を下敷きにされ、人の褌(ふんどし)で相撲を取られたと政演を睨みつける春町ですが、そんなことも知らず政演は南畝たちと大盛り上がりです。こいつぁいけねえと蔦重と朋誠堂喜三二は春町を囲んで酒の相手をしますが、“うちの大看板”と春町を持ち上げておきながら、政演が蔦重のところで女絵をやるのかと南畝が大げさに驚いて見せたものだから、春町は余計に不貞腐れてしまいます。

そしてあろうことか、褒められすぎて浮かれる政演が春町のところに来てしまいました。戯作者も狂歌詠めるところを見せてくださいよ! とニヤニヤする政演をたしなめる蔦重ですが、春町は「いや、詠む」と立ち上がります。
今日出んと(京伝と) 女にもてぬと 焦りける 人の褌 ちょいと拝借
四方(よも)の赤 酔った目利きが 品定め 岡目八目 囲碁に謝れ
気散じと(喜三二と) 名乗らばまずは 根詰めろ 詰めるも散らすも 吉原の閨(ねや)
と一気に詠んでさんざんに場を荒らします。

てめえらなんかなぁ! と春町が叫んだところで、次郎兵衛がブッと屁をこいて場は一気になごみますが、春町は「これにて御免」と、筆を折って帰っていってしまいます。ああっ! と喜三二が叫び、肩を落とす歌麿です。蔦重は折られた筆を拾い上げ、寂しそうな背中の春町を見つめます。

 

作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦谷重三郎)
染谷 将太 (喜多川歌麿)
福原 遥 (誰袖)
桐谷 健太 (大田南畝)
宮沢 氷魚 (田沼意知)
木村 了 (平秩東作)
栁 俊太郎 (土山宗次郎)
───────────
中村 蒼 (次郎兵衛)
本宮 泰風 (若木屋与八)
正名 僕蔵 (松葉屋半左衛門)
伊藤 淳史 (大文字屋市兵衛)

安達 祐実 (りつ)
山村 紅葉 (志げ)
飯島 直子 (ふじ)

橋本 淳 (北尾重政)
古川 雄大 (北尾政演)
岡山 天音 (恋川春町)
尾美 としのり (朋誠堂喜三二)
西村 まさ彦 (西村屋与八)

えなり かずき (松前道廣)
眞島 秀和 (徳川家治)
生田 斗真 (一橋治済)
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原田 泰造 (三浦庄司)
高橋 克実 (駿河屋市右衛門)
渡辺 謙 (田沼意次)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・藤原 敬久
演出:大原 拓

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第22回「小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて」

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