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2025年7月27日 (日)

大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(28)佐野世直大明神

「覚えがあろう……覚えがあろう!」と佐野政言は田沼意知に斬りかかります。意知は肩を斬られ尻もちをつきますが、政言は意知に向かって刀を振り上げ、とどめを刺します。

日本橋の耕書堂を、小田新之助とふく(うつせみ)が訪ねてきました。ひげ面の風貌の新之助に、ふくもやつれた姿で、一瞬では蔦屋重三郎(蔦重)は彼らとは気づきません。蔦重は慌てて二人を屋敷に招き入れ、ていとともに飯を用意します。飯を口にして二人顔を見合わせ、涙を浮かべて食べ続けます。

吉原を足抜けした後、新之助とふくは浅間山の近くで細々と暮らしていました。噴火で降り積もった灰をせっせと撤去し、1年かけてようやく田畑に戻したのですが、所詮は江戸からの流れ者で、地元民に出て行けと追い出されてしまい、江戸に戻ってきたというわけです。足抜けか! とつよは納得し、蔦重もていに説明しようとしますが、さすがのていも足抜けの意味ぐらいは知っています。

真に好き合った客と女郎が、手に手を取り合い駆け落ちする──。新之助とふくは、ここで雇ってもらえないかと土下座します。喜多川歌麿は、かつて吉原細見を作った時に世話になったと蔦重に聞いたことがあります。蔦重は新之助に、またうちで筆耕してくださいよと誘います。「世話になったお方を打ち捨てるなど、人としてお話にもなるまい。まぁあるお方の受け売りなんですけどね」

その“あるお方”の意知は、田沼屋敷に運ばれていました。土山宗次郎に預けた身請け女郎(=誰袖(たがそで))のことを田沼意次に頼む意知ですが、意次は励ますため、尻ぬぐいは俺はやらん! と断ります。次第に力を失っていく意知は、目を閉じ反応しなくなっていきます。意次は息子の死に絶叫します。「目を開けろ……父のいうことが聞けぬのか! なぜだ……なぜお前なんだ……なぜ俺じゃないんだ!」

意知の死に一橋治済は、人の恨みを買ったのは意次が天狗になりすぎたと批判します。意次の甥にあたる田沼意致(おきむね)は、希望ある意知を亡くして号泣します。目の前には徳川家斉が、カステラをおいしそうにほおばります。高齢の意次は長くはなく、嫡男を亡き者にすることで田沼の力を削ぐことになるという治済の田沼批判は、政言がそう考えたのかもしれないとやんわり中和します。

 

意知の野辺送りで多くの人に見送られ、蔦重はその人垣の中に魂が抜けたようなかをり(誰袖)の姿を見つけます。物乞いが騒ぎ出した途端、田沼を恨む民が意次の駕籠に向けて石を投げつけます。かをりは棺桶に駆け寄って石から意知を守ろうとします。蔦重と大文字屋市兵衛はかをりを引っ張り人混みから出ますが、かをりは悔しさでいっぱいです。「何をしんしたあの方が……仇を討っておくんなんし!」

意知を斬った政言は切腹を命じられ、刑が執行されます。蔦重は、死人を相手に敵を討つ方法を考え始めます。幽霊に仇討ちといっても折伏(しゃくぶく)では成仏されて楽になるだけで、仇討ちにはなりそうもありません。唐来三和は、仇を討ちたい男が死人が集う村に行く話を持ち出し、結局は幽霊に仇なんて討てないということになるわけで、蔦重は飯をほおばりながらうーんと考え込みます。

意知の死と政言の切腹は世の政への不満となり、いやさの善左(佐野善左衛門政言)て 血はさんさというはやり歌が流れるほどです。それどころか、政言の死により米の値が下がり、「佐野さま佐野さま、佐野福の神さま!」と民が手を合わせ始める事態に。新之助とふくに長屋の世話をしながら、蔦重は複雑な思いです。

どちらかというと蔦重は田沼びいきかもしれません。蔦重は若い時分から意次と意知に世話になっていたし、平賀源内も意次に近い人物でした。意次が聖人君子とは思わないし、政道の良し悪しは蔦重には分かりませんが、斬られた方が石を投げられて、斬ったほうが拝まれる風潮に蔦重は戸惑っています。新之助は『忠臣蔵』だってそうだった、ともっともらしく説明します。

明日をも知れぬ身、ひもじい思いをしてきた新之助とふくにとれば、米の値が下がるならいくらでも佐野を拝むわけで、蔦重はふくにそれを聞いてそれが世の中の心持ちなのかと気づかされます。その帰り道、蔦重は笠を目深にかぶった、幟(のぼり)を抱えて歩いていく浪人者とすれ違います。蔦重はその風貌に見覚えがありました。野辺送りの際に棺桶に石を投げつけた大工風の男です。

蔦重が男の後をつけていくと、寺の入口で男は幟を開きます。幟には“佐野世直し大明神墓所”とあります。男は目立たないように立ち去り、幟に気づいた町娘たちが拝もうと寺に入っていきます。これからは佐野大明神と拝まれるのか──。「その鬼畜の所業に気づいたる男がいた。その名も七ツ星の龍。しかし悪党も大したもの、なんとその龍こそ人殺しに仕立て上げる」 仕立て上げられてる! と蔦重は目を見開きます。

蔦重は田沼屋敷を訪れます。かをりのことは取り計らった意次ですが、蔦重はかをりに仇を討ってほしいと頼まれたこと、怪しい男を見かけたことを意次に打ち明けます。男は石を投げ、今日は寺に幟を立てた。蔦重は、裏で糸を引いている者がいる可能性を示唆します。「だとすれば、討つべき仇はまだこの世に」 しかし意次は、自分のせがれだから斬られたと、仇を討つなら俺を討てと言って涙ぐみます。

横で聞いていた三浦庄司は、意次は最後には怒ったフリをして遠ざけてしまうが、何だかんだ言っても蔦重のことが大好きだと呆れますが、意次は先のある若者が命を散らすのを見たくないだけなのです。“ありがた山”の見たのはかつて丈右衛門を名乗った男かもしれないと庄司がつぶやくと、意次に宗次郎を呼ぶよう命じられます。「おそらく、事の起こりは蝦夷だ」

 

蔦重は須原屋市兵衛を耕書堂に招き、刃傷沙汰を黄表紙にしたいと相談します。しかし幕府の出来事は本のネタにしてはいけないという暗黙の了解があり、最悪の場合は捕縛されることもあります。悪役は佐野を考えていますが、世の風潮がこんな状態では作るだけ損だと市兵衛は難色を示します。世の中は善悪を逆にして筋書きを立てたと市兵衛が説明したところで、志げが蔦重を訪ねてきました。

志げとともに土山屋敷に駆けつける蔦重は、かをりが呪詛をかけているのを目撃します。実は意知を追って自害しようとも思ったのですが、死ねませんでした。志げは“人を呪えばわが身に返ってくる”と説得しますが、かをりは呪い返されて死ねればいいと考えています。蔦重もいいことを思いついたからと呪詛を止めますが、すっかり人格まで変わってしまったかをりには、その声は届きません。

蔦重が耕書堂に戻ると、庄司が訪問していました。応対したていによって目の前には黄表紙本が何冊も並べられています。挨拶もそこそこに、庄司は意次からの書状を蔦重に手渡すと、さっさと帰っていきます。蔦重が書状を開くと、そこには『俺は仇を討つことにした』とあります。その意次は、決意を秘めて将軍徳川家治に対面しています。

同じ逆縁(子が親より早く亡くなる)の経験をした家治は、絶望の意次の気持ちが痛いほどわかります。意次は仇を討ちたいと、生前の意知が手掛けてきた米の値や蝦夷のことを見事に成し遂げて、家治の名とともに山城守意知の名を後世に残したいと告げます。「目にものを見せてやりとうございます」

家治の元を辞し、廊下を歩いていると治済がいました。何と痛ましい姿と治済はチクリと刺しますが、意次は治済の言葉をさえぎって、意知は自分の心の中に生きて、毒にも刃にも倒せない者になったと誇らしげです。ではこれにて、と立ち去ろうとした意次は、スッと治済の背後に回り、耳打ちします。「それがしにはやらなければならぬことが山のようにござりますゆえ」

意次の仇の取り方を知り、かをりはこんなことがなければ笑っていたよなと考えています。そこに北尾政演がやって来て、『手拭合(たなぐいあわせ)』という手拭いの柄の本制作に一口乗らないかと誘います。蔦重はその一例の絵を手に取り、こいつならできるかもしんねえ、とつぶやきます。「こいつなら、もう一度あいつを笑わせられるかもしんねえ」

平秩東作らの行方が分からなくなっています。始めは蝦夷を訪ね歩いていて連絡が途絶えていると思っていた宗次郎ですが、これはおかしいと商人村上の元へ使いを出すと、その屋敷は松前家の見張りがついて容易に近づけない状態です。東作の煙草屋も火事で焼け、生きていないかもしれません。そこに、田沼屋敷前で倒れていた男が帳を届けてきました。それを見た意次は表情を一変させます。

 

作:森下 佳子・三谷 昌登
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦屋重三郎)
染谷 将太 (喜多川歌麿)
橋本 愛 (てい)
福原 遥 (誰袖)
宮沢 氷魚 (田沼意知)
井之脇 海 (小田新之助)
小野 花梨 (ふく)
木村 了 (平秩東作)
栁 俊太郎 (土山宗次郎)
中川 翼 (みの吉)
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安田 顕 (平賀源内(回想))

島本 須美 (たか)
伊藤 かずえ (マツ)
高岡 早紀 (つよ)

伊藤 淳史 (大文字屋市兵衛)

山村 紅葉 (志げ)

古川 雄大 (北尾政演)

矢本 悠馬 (佐野政言)
吉見 一豊 (佐野政豊(回想))
眞島 秀和 (徳川家治)
生田 斗真 (一橋治済)
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原田 泰造 (三浦庄司)
里見 浩太朗 (須原屋市兵衛)
渡辺 謙 (田沼意次)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・積田 有希
演出:深川 貴志

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第29回「江戸生蔦屋仇討(えどうまれつたやのあだうち)」

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