大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(46)曽我祭の変
ていの説得に応じ、喜多川歌麿が蔦屋に戻ってきてくれました。好きな人の役に立ちたい一心で自分を投げ打つ人がいると、歌麿は「何べんもおていさんに同じことさせんなよ!」と、珍しく蔦屋重三郎(蔦重)を説教します。その上で、二人で組んだ絵が見たいとていが説得に来たことを蔦重に伝えます。
その時持ってきていた、歌麿を思って蔦重が作らせた女絵は、彫も摺も歌麿の思惑通りの仕上がりでした。よその本屋は歌麿に妙に優しく、それが歌麿には楽しくなかったわけです。蔦重はさっそく、かつて『十躰』の時に 人相をあからさまに描きすぎてボツにした絵のように、目立つところを際立たせた役者絵を注文します。「その絵は源内先生が描いたんだ。源内先生は生きてるって思わせてえ」
捜索していた長谷川平蔵らによって尼寺に潜んでいた大崎が見つかり、松平定信のもとに連れ出されます。大崎は許しを請いますが、地獄に百度落とされても足らぬ所業と定信は許すつもりはありません。それでも食い下がる大崎に、定信は自分たちの間者となる気はないかと優しく言葉をかけます。柴野栗山が襖を開けると、そこには……。
将軍徳川家斉は、月満たず子が流れ、亡き徳川家基の祟りを疑って法要を行いたいと一橋治済に相談します。家基が亡くならなければ家斉が将軍家を継ぐこともなかったわけですが、治済は家基が病弱の9代家重の家系であることを考えれば、一橋の流れを汲む家斉にはよく後を継いでくれたと感謝すると思うといって、法要のことには賛成をしません。
蔦重がイメージする画が掴めず、衝突することもあった北尾重政は、歌麿が試しに描いてみせた絵を見て即座に納得します。北尾政演や朋誠堂喜三二の絵も本人の特徴を捉えてとてもうまいです。源内作というテイストは後々考えるとして、元になる役者の似絵を50図作ろうと考えているわけです。その分費用が心配ですが、いつもの倍は弾むと蔦重はニヤリとします。
おおお! と盛り上がる絵師たちですが、持ち上げられた歌麿自身、役者にはとんと詳しくありません。舞台を見て描くのか、稽古を見て描くのか。稽古を見て描かなければ50には追いつきませんが、それだと歌麿が手掛けたことがバレ、源内作にはなりません。
蔦重と鶴屋喜右衛門は、河原崎座や都座、桐座の座元と対面します。役者絵は描かないという歌麿を口説き落としたという喜右衛門に、座元たちは歌麿が役者絵を描いてくれると喜びます。一方で蔦屋も歌麿に負けていられないと、描きたいという絵師たちに稽古を見て描いてもらい、その中から決めようと思っていると告げます。
ただ、これはすべて蔦重の脚本で、金一帯(おび)で喜右衛門はしゃべらされていたわけです。しかも途中で喜右衛門と歌麿は手を引くという流れに、喜右衛門は蔦重が何を考えているのか疑問でなりません。蔦重は、絵師たちとさんざんバカ騒ぎして恋川春町への供養にしたいと思いを打ち明けます。ともかく、詳しいところをそのうち話してくださいよ、と喜右衛門は半ば呆れながら店に戻っていきます。
河原崎座の稽古場には蔦重を先頭にどかどかと中に入っていきます。そして喜右衛門も歌麿に続いて弟子たちが何人も連なり、座主は困惑します。こうして蔦重による「しゃらくせえ案じ」が始まり、戯作者チームは描く役者や場面の選択、絵師チームは役者の印象が重ならないように、人相の描き分けを検討します。パズルのような気の遠くなる作業ですが、歌麿は生き生きと描き続けます。
さらに探してきた勝川春朗に、下絵に源内風の、つまり蘭画を感じさせる工夫を加えさせます。春朗曰く、蘭画の特徴は手前が“ドーン”で奥が“キュッ”らしく、「ドーン、キュッキュッ」としか言わない春朗に、歌麿はなるほどと何度も頷きます。蘭画は縁取りの線がなく、歌麿は墨の色を薄くして、暗い中だとそれが影に見えるとアイデアを出します。こうして歌麿が筆を入れて出来上がった写楽の絵に、戯作者チームも絵師チームも素晴らしすぎて息を呑みます。写楽ってすげえなぁ、と歌麿自身言葉を漏らします。
完成した絵を持って、蔦重が定信に見せに行きます。感嘆した定信は名前に“東洲斎”を加えるよう蔦重に指示します。写楽は東洲の生まれ、つまり江戸っ子であり、これは江戸の誉れとしたいところです。これで画号は「東洲斎写楽」と決まりました。
5月。三座による興行の幕が開き、蔦重は一時的に芝居町に耕書堂の支店を構えます。蔦屋座、写楽の幕が開くと、雲母摺(きらずり)の役者絵がずらりと並んでいます。扮装の途中で飛び込んできた歌舞伎役者の中山富三郎は自分の絵を見て、こんな風に描くとは聞いてないよ! と蔦重に迫りますが、「写楽はグニャ富さんを熱い目で見てたんでごぜえますよ」と言われれば悪い気はしません。
この騒ぎはさっそく話のタネになり、ふざけた絵を描く新しい絵師の出現に、江戸っ子たちは湧き立ち、写楽は実は歌麿説、実は春朗説、重政や政美なども加わって、そこかしこでこの「しゃらくせえ」絵師は何者か、江戸中が当て推量。そこに『写楽は平賀源内』と杉田玄白が言い出しました。江戸城内でもうまい具合に昔を蒸し返してくれていて、定信はニヤリとします。
田沼意次の懐刀である平賀源内は、実は生きていた。将軍家治と意次は最後まで仲が良かった。時を経てみれば得をしたのは一橋──。そんな話が持ち上がる中、大崎は治済に『一人遣傀儡石橋(ひとりづかい くぐつのしゃっきょう)』を見せます。頭と尾で『一橋』。これは? と尋ねる治済に、大崎は治済を見据えます。「この話を書けるのは、平賀源内しかおらぬのではございませんでしょうか」
これは紛れもなく“あの話”の続きでありまして、源内が生き延びた可能性についても、治済は「ない! とは言い切れぬな」と認めます。大崎は治済に、板元蔦重、田沼の残党、高岳あたりに探りを入れて、源内が生きているかどうか確かめさせることを進言します。治済も大崎に人をつけることを約束します。
そのことは、『石橋』無事あの者のもとに至る、と定信から三浦庄司に書状で伝えられ、「かかったか……」と庄司は身が引き締まる思いです。一方市中では、写楽が源内ではないのかと大騒ぎになっています。蔦重は思い描いた通りの展開に、何度も自分の頬をぶちますが、どうやら嘘ではないようです。
源内は潰れた浄瑠璃小屋に潜んでいて、庄司がそこに出入りしていると大崎が情報を持ち込みます。確かにその小屋にはそれらしい年齢の男がひとりいますが、何ぶん源内の顔を見たことがある者がおらず、断定はできません。治済は昔、田沼屋敷で見かけたことがありますが、大崎は密かに確かめてほしいと治済に願い出ます。『曽我祭』があって人でも多く、姿も紛れやすいというのです。
芝居町には座元を先頭に役者たちが揃って行進します。祭りの祝いの饅頭も方々で配られています。蔦屋の売れ行きも好調ですが、そこに治済が大崎とともに姿を現します。治済はグニャ富と男女蔵の役者絵を所望し、大崎が代金を支払……うふりをしながら、蔦重に文も手渡します。蔦重は戸惑いながらそれを受け取ります。
密偵として市中に出ている仙太と磯八は治済の姿を確認し、戻っていきます。戻った先は廃れた浄瑠璃小屋でして、そこには定信や平蔵をはじめ捕り方が多く集結していました。待っている間、仙太が大量に持ち込んだ饅頭をみんなに配って腹ごしらえです。
沿道の行列を楽しむ治済に、人が減らないうちにお確かめをと大崎は焦りつつ勧めますが、治済は「あの『石橋』の字、わしは以前、何度も見た覚えがあってな」と見透かしたように告げます。あれは越中の字だ──そなたともあろう者がそこを見落とす? と治済は大崎を見据えます。「ゆえに三浦が浄瑠璃小屋で匿っている男は、源内ではあるまい。祭りも楽しんだ、このまま戻る」
定信が庄司と組んでいるかもと食い下がる大崎ですが、治済は大崎の進言通り、彼らに会うことにします。しかし、これを食してから行くとするかの、と饅頭を大崎に食わせます。そして待っている捕り方たちはたちまち苦しみ出して倒れていきます。治済は通りをゆっくり歩きながら、口に手を添えて「フフフフフフフフフ……」と笑います。
ラッシュも峠を越え、一休みしようと蔦重が手代たちに声をかけると、女が死んだようだと伝えに来ます。役者を見ていかれちまったんじゃねえかとの噂です。その話を聞いて、饅頭をパクッと食らう蔦重ですが、平蔵が慌てて駆けつけます。「食うな! それは毒だ!」
その時、蔦屋の前の通りを、筵をかけられた死骸が運ばれていました。平蔵は死骸を改め、それが大崎であると認めます。蔦重も、先ほど絵を買ってくれたばかりなので、顔に見覚えがありました。平蔵はあとは自分が聞くと告げます。何が何だか分からない蔦重に、平蔵は説明します。蔦重が見た鼻が立派な侍は傀儡好き、そして死んだ女が大崎。恐らく傀儡好きに毒饅頭を食わされた……。
ウチも狙われた!? と驚愕する蔦重を、平蔵は歌舞伎小屋に連れていきます。傀儡好きをおびき寄せて討ち取る計画だったが、見抜かれてしまったと企てを打ち明けます。座元や役者が祝儀の饅頭を配っていましたが、治済はその中に饅頭配りを紛れ込ませ、毒饅頭を配っていたわけです。饅頭を包む袋に名前がないのが毒饅頭、ということになります。
毒饅頭は関わりのある者にしか配られておらず、配られた先には「知っておるぞ」と治済が遠回しに言っているわけです。蔦屋は写楽が源内であるということを餌におびき寄せたので、治済側からそう見なされたのかもしれません。平蔵は蔦重に謝罪しますが、そのことを隠して仲間に入れさせられた蔦重は怒りに震えます。「すまぬじゃねえですよ! 俺たちゃどうやって身守れってんですか!」
やかましい! と間に入ってきたのは定信です。定信があごで平蔵に指示すると、柴野栗山とともに姿を現したのは、蔦屋の店先で見た、あの鼻の立派なお侍でした。
作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦屋重三郎)
染谷 将太 (喜多川歌麿)
橋本 愛 (てい)
桐谷 健太 (大田南畝)
中村 隼人 (長谷川平蔵宣以)
城 桧吏 (徳川家斉)
中川 翼 (みの吉)
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峰 竜太 (熊野屋)
不破 万作 (都座座元)
モロ 師岡 (河原崎座座元)
坂口 涼太郎 (中山富三郎)
伊藤 かずえ (マツ)
橋本 淳 (北尾重政)
津田 健次郎 (滝沢瑣吉)
井上 芳雄 (重田貞一)
又吉 直樹 (宿屋飯盛)
古川 雄大 (北尾政演)
尾美 としのり (朋誠堂喜三二)
風間 俊介 (鶴屋喜右衛門)
映美 くらら (大崎)
井上 祐貴 (松平定信)
矢島 健一 (本多忠籌)
嶋田 久作 (柴野栗山)
生田 斗真 (一橋治済)
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原田 泰造 (三浦庄司)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・藤原 敬久
演出:深川 貴志
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第47回「饅頭(まんじゅう)こわい」
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