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2025年11月 2日 (日)

大河ドラマべらぼう -蔦重栄華乃夢噺-・(42)招かれざる客

蔦屋重三郎(蔦重)は俳諧の本を読みながら、今ではこうなっているのか! とそのおもしろみにニヤニヤしています。尾張の書物問屋・永楽屋の東四郎と商談しているのです。ふたりはすっかり仲良し、意気投合して売り広めもお互いにお願いすることになりました。

そのころ幕府では、オロシャの船が来たと大騒ぎになっていました。やって来たのは蝦夷地のネモロ(根室)で、オロシャに流れ着いた日本の民を送り届けたわけです。引き渡しだけすればいいと本多忠籌は安堵しますが、オロシャは民の引き渡しを兼ねて江戸に来航したいと言い出したようで、オロシャ王の勅書を持ち、国交を開いて通商を望むとあったそうです。

松平信明は松前藩に抜け荷をされるぐらいなら、通商を認めてもいいかもしれないと松平定信に進言しますが、定信は鬼の形相で「ならぬ!」と一喝します。江戸に迎え入れたところ、大筒をぶっ放さないとも限らないわけです。オロシャの言葉は大黒屋光太夫という漂流民が通詞(つうじ)し、その光太夫がオロシャに飼いならされているかもしれないのです。「この件はネモロにて、ご公儀が直に事に当たる」

そのさなかに京都所司代から、帝が父君に尊号を贈るつもりのようだと急報が舞い込みます。怒りに震える定信は、武家伝奏を呼び寄せるよう命じます。「いかにしても御尊号をお贈りになるなら、向後一切の禁裏御料を打ち切ると申し伝えよ」 禁裏御料とは朝廷への金銭援助のことであり、他の老中たちは固唾を呑んで見守ります。

つよが一生を終え、偲ぶ会が開かれます。江戸に戻ってきた蔦重も、弔問客に頭を下げて回ります。蔦屋に来たついでに髪を結ってもらっていた人も多かったようです。蔦重は尾張に行っていて死に目に会えませんでしたが、しばらく顔を出さなかった唐来三和(とうらいさんな)が来て飯を食っています。武家戯作者の先達にいろいろ習いたいらしく、滝沢瑣吉(さきち)が連れて行ってしまいます。

駿河屋市右衛門やりつも来ています。吉原の状況は金を落とさない客が増えて非常に厳しく、お座敷に声がかからず芸者も上がったりです。蔦重は“看板娘”の絵を見せ、やりませんか? とりつを誘います。難波屋のおきた……もともと人が集まっていて、絵を出して評判を上げる手法に、頼んでみようかね とりつは返答します。みなさまのご加護を、とみんなでつよの位牌に手を合わせます。

新年を迎え、蔦屋の前ではつきたてのもちが振る舞われます。店先に立った蔦重は無事に畳を入れられるとひいき客に報告し、『身上半減ノ店』の看板を下ろします。さらに蔦屋では書物問屋も始めることになりました。ふらりと立ち寄った開運先生に蔦重は、ひいき客たちの相はどうかと尋ねます。「うん? みんな笑っておるな。これは“笑う門には福来る”の相じゃ! やっちまったな!」

この年の蔦屋の店先は、新作の黄表紙に狂歌集もずらりと並び、さらに書物まで顔を出す華やかぶりでした。ひときわ華やかなのは歌麿の錦絵で、歌麿は絵を買ってくれた客に直筆で名入れしていきます。蔦重は、歌麿には江戸中の評判の美人を描き尽してもらうと客に売り込み、当の本人は「そうなの!?」と困惑します。

 

2月、定信は武家伝奏らの公家を江戸に呼びつけ、尊号を贈る贈らないの一件をしつこく詰問。帝は尊号は贈らないと諦めたし、もうよろしいやございませんか、と正親町正明は飽き飽きしていますが、定信は言葉を発さず、舞扇をパチンパチンと閉じてイライラしている様子です。

定信は正明らをお役御免とし閉門とすることにします。尊号は諦めたのだしと信明はとりなしますが、問題はそこではなく、幕府と朝廷を結ぶ役目にも関わらず両者間に不和を作ったことにあります。武家が公家を処罰するのは前代未聞ですが、武家・公家問わず帝から政を預かり日本を治める将軍家の臣下だから理に適うと聞き入れません。オロシャに狙われるこの非常時、不和の一件が漏れればどう付け込まれるか分からないのです。

忠籌と正明はたまらず一橋治済に泣きつきます。今の定信は誰も信じまいという様相で、オロシャ使節に直談判すると言い出しかねません。オロシャが日本を狙うのは皆無とは言い切れませんが、泥を塗られた朝廷や謀反を疑われた松前藩、幕府郡代を置く領地を出せと言われた北国大名ら、国内に敵を作るばかりなのです。治済はふっと顔を上げ、錦絵を忠籌に見せます。「この娘、大層美しいらしいぞ」

江戸では看板娘ブームが起き、歌麿が描いた浅草寺境内の水茶屋・難波屋のおきた見たさに人だかりができます。偵察に来た忠籌も、おきたの出す茶が1杯4文から48文に上がっていることに驚愕します。これは両国の煎餅屋・高島屋も同様で、看板娘おひさが売るせんべいに太客が鈴なりです。女郎屋大黒屋の富本節の吉原芸者・豊ひなも指名が殺到、「一節歌ったらすぐ次のお座敷にね」とりつは送り出します。

蔦屋にはウチもウチもと応募が殺到します。蔦重はたくさん名が入ったリストを歌麿に渡し、ひと月でこんなにできるわけねえだろ! と歌麿は声を荒げます。蔦重は弟子に描かせて歌麿が名入れすることを提案しますが、それは自分もイヤだし弟子もイヤがるでしょう。しかし最後の仕上げを歌麿がすれば歌麿作になるし、弟子の腕も上がると説得します。ともかく今は、歌麿の絵が店に繁盛を生み、江戸の金が回り出して不景気が動き出しているわけで、歌麿はいろいろな思いが交錯し、黙り込んでしまいます。

浮世絵師北尾重政のところにも、ウチの娘も描いてくれと依頼が来ているようですが、この手はいけると踏んだ本屋も商人たちも後追いしはじめているのです。重政も弟子に描かせて自分が名入れすることも多いと説明しますが、一点一点心を込めて描きたい歌麿は、弟子には任せたくないという気持ちが働いてしまいます。「俺が身勝手なんですよねぇ、きっと」

ていはそんな歌麿を慮って、蔦重にとっては商いの品ですが、歌麿にとっては子のようなものかもしれないと諭します。本を見ながら蔦重の身体のツボを押すていは、つよのようにこめかみを押さえて痛がります。医者に診せねえと! と焦る蔦重に、決して騒がぬとお約束くださいますかと念押ししたていは、妊娠したことを打ち明けます。「ともかく、お口巾着で」

歌麿は弟子の菊麿に、下絵を描かせてみることにします。そこに地本問屋西村屋の与八が二代目の万次郎を伴って訪ねてきます。鱗形屋の次男坊である万次郎は、大量の案を歌麿に見せます。看板娘がありなら鳶や火消し、魚河岸など男ぶりを売ってみたり、色鮮やかな錦絵に対抗して、摺(すり)を工夫して濃淡だけで錦絵を作ってみたり、歌麿もうなるほどの企画たちです。『虫撰(むしえらみ)』を初めて見た時に胸を震わせた万次郎が、いずれ歌麿とやりたいと書き留めていたのです。

万次郎が初めて出す本とあって、与八も後押しします。歌麿は、腕のある弟子とこういうものを作ることを提案しますが、歌麿と組みたい万次郎は、これからもずっと蔦重のもとで描くだけだと、絵の世界を狭めてしまうような気がするとつぶやきます。与八も、蔦屋の印が上、歌麿の署名が下にある扱いを指摘します。「騙されているとは申しませんが、都合よく使われてるとこもあんじゃございませんかね」

 

忠籌ら老中は定信に対して反発的な態度を翻し、考えに従うと誓ってきました。その上で忠籌は、蔦重の美人絵を定信に提出します。茶が1杯100文、せんべい1枚120文、芸者を呼べば紙花のまき散らし。それにつられて市中の物価も吊り上がり、田沼病の息の吹き替えしではないかと進言するのです。定信は、絵に記された蔦重の名に「またあの者か」と吐き捨てます。

蔦重は、板の作り直しを考えています。ていが事情を聞くには、開運先生が連れてきた相学仲間の観和家から“相学”の文言を使うな、“相”の字を入れるなとクレームを入れてきたそうで、『婦人相学十躰』のタイトルを『婦女人相十品』に変えるのです。確かに絵の相はこちらがいい加減に入れていることもあり、現にそれがもとで人相見と客の間でいざこざが起こってしまっているのです。

そこに鶴屋喜右衛門が、一枚絵に女郎以外の女の名を書き入れてはいけないというお達しが出たと伝えに来ました。誰の絵か分からなければ儲かりもなくなるわけで、話を聞いたりつは激怒します。せっかくいい風が吹いて来たのにと大文字屋市兵衛はため息をつきます。蔦重は、女郎の絵なら名入れもできると女郎の大首絵の揃いもんを提案しますが、扇屋宇右衛門は厳しい表情です。「入銀なしならな。吉原もほんと厳しくてな」

市兵衛は、誰かさんのところの借金も滞っているとチクリと刺します。誰かさんとは身上半減で借金の返済を猶予してもらっている蔦重のことを言っているわけです。絵も売れれば借金も返せると蔦重は言い張りますが、駿河屋市右衛門は例えば女郎絵50枚で100両分として借金返済の代わりとすることを提案します。

蔦重は歌麿に事の顛末を伝えますが、そもそも歌麿はやるとも何とも返事していません。しかも自分の絵50枚で蔦重の借金100両分と知り、「それ、借金のかたに俺を売ったってこと?」と怒りに震えます。しかし蔦重に子が生まれると知り、自分の考えに合わないことは不本意ながら、蔦重に何度も何度も頭を下げられては、歌麿もイヤだとは言えません。「仕方中橋。やってやるよ」

しかし歌麿の中で何かが動き出します。歌麿の家に来た西村屋万次郎に、仕事を受けることを伝えます。「この揃いものを描き終わったら、もう蔦重とは終わりにします」

 

作:森下 佳子
音楽:ジョン・グラム
語り(九郎助稲荷):綾瀬 はるか
題字:石川 九楊
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[出演]
横浜 流星 (蔦屋重三郎)
染谷 将太 (喜多川歌麿)
橋本 愛 (てい)
中川 翼 (みの吉)
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太田 光 (大当開運)
田中 裕二 (観和家)

島本 須美 (たか)

中村 蒼 (次郎兵衛)
伊藤 淳史 (大文字屋市兵衛)
山路 和弘 (扇屋宇右衛門)

安達 祐実 (りつ)

橋本 淳 (北尾重政)
津田 健次郎 (滝沢瑣吉)
風間 俊介 (鶴屋喜右衛門)
西村 まさ彦 (西村屋与八)

井上 祐貴 (松平定信)
矢島 健一 (本多忠籌)
生田 斗真 (一橋治済)
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高橋 克実 (駿河屋市右衛門)
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制作統括:藤並 英樹・石村 将太
ブロデューサー:松田 恭典・積田 有希
演出:西尾 友希

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』 第43回「裏切りの恋歌」

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