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2026年5月15日 (金)

プレイバック独眼竜政宗・(27)黄金の十字架

【アヴァン・タイトル】

現在でも、閣議書類のサインに大臣が花押を書く慣習が残っている。花押とは、自分の出した文書であることを証明する符号のようなものである。武将たちの表立った文書にも、花押を記すならいがあった。政宗の花押は、その当時の武将にしてみればとりわけ数が多い。年代順にごく一部を紹介しよう。

青年期の花押は、筆の勢いが豊かではつらつとした若武者ぶりを表している。これが世に知られる「鶺鴒(せきれい)型」の花押で、晩年まで使用された。ただこの花押は、年を経るに従い小型化し、丸みを帯びてくる。近世大名に脱皮した政宗の、花鳥を友とする老境への移ろいを物語っている。花押を鶺鴒の形に似せたのは、鶺鴒の俊敏さを政宗が愛でたためかもしれない。

この鶺鴒の花押が入った政宗の密書が、再び政宗を危機に陥れたのである──。


天正19(1591)年 春、豊臣秀吉に謀反の決定的証拠となる密書を握られた伊達政宗は、苦しい弁明を余儀なくされ上洛の途につきます。生きて再び故郷に帰る日があるか、絶体絶命の旅でした。一行は東海道を京に向かっていますが、なぜか秀吉も鷹狩りにことよせて京を出発し、尾張の清州城で政宗を待ち受けていました。

清州城には徳川家康のほか稲葉是常坊や施薬院全宗もいて、家康からはくれぐれも神妙にと助言されます。羽柴秀次と石田三成を伴って現れた秀吉に、先月亡くなった豊臣秀長の死を悼みます。人はいつかは死ぬとつぶやく秀吉は、老少不定、若死にするやつもおると、秀長の方を見ながら告げます。ひとり思わず大笑いする秀次ですが、ピリピリした空気に呑まれたか、顔を引きつらせて黙ります。

三成は、仕置き奉行浅野長政と陣代蒲生氏郷の書状から、関白に逆心して大崎葛西の不埒者を扇動し、一揆に加担した疑いを詮議します。政宗は、逆心ありとみなされたことが心外であり、氏郷が戦に不安のあまり白を黒と断じたのではないかと主張します。木村吉清親子を救出したことから潔白は明らかと返答しますが、三成はあくまで、謀反が叶わないと諦めてさかしく矛先を転じた結果だと聞き入れません。

三成に証拠となる密書を提示されても政宗は動じず、三成は氏郷をこの場に呼び出します。この期に及んでの悪あがきは見苦しいと氏郷は政宗を批判し、大崎で政宗が書いた起請文を持参して提出します。秀吉は密書と起請文を見比べ、筆跡と鶺鴒の花押が同じ手によるものと断定します。三成は政宗を睨みつけます。「これにて逆心は明白、もはや問答無用!」

後ろに控える片倉小十郎は、密書を氏郷の陣所に持ち込んだ須田伯耆(ほうき)は元伊達家の祐筆で、偽筆で文面を作成したと主張します。須田の父は先代伊達輝宗逝去の折に殉死した忠臣ですが、本人には知行の加増も身分の取り立てもなく、伊達家に恩義はないと言っています。しかし小十郎は、須田の父が切腹したのは殉死御法度の布令の後で法を破ったため、忠臣としての評価はなかったと釈明します。

氏郷は須田の呼び出しを求めますが、召し出しするまでもなく同じ手です。政宗は鶺鴒の花押をよく見てほしいと訴えます。自らの書状には鶺鴒の眼に針の穴を通し、眼が閉じていれば偽物──。確かめましょう、と密書に手を伸ばす秀次の手をパシッと叩き、秀吉は眼鏡をかけて密書と起請文を見比べます。「ああなるほど、政宗の申すとおり、この起請文の鶺鴒には眼がついておる。この密書にはついておらん」

針の穴は言い逃れのからくりでしかなく、氏郷は須田の召し出しを求めますが、秀吉は一喝して氏郷を黙らせます。政宗の逆心の疑いは晴れたと判断した秀吉は、自分に対して逆らう気はないのだなと念押しし、政宗にこのまま上洛し諸侯の面前で臣従の意を明らかにするよう命じます。「都の衆は物見高いぞ。趣向を凝らして参れ」

 

廊下の向こうから氏郷が近づいてきます。巧みに切り抜けた政宗を睨みつけ、だまされぬぞと吐き捨てる氏郷ですが、政宗は自分の目は左が本物、右が偽物と返答します。詮議に参加した是常坊と全宗は詮議を尽くしたとは言えないと不満げですが、家康は秀吉が命を助けたのではないかと笑います。政宗の謀反の密書は本物に違いないが、逃げも隠れもせず堂々と弁明に来た政宗の器量を愛でたわけです。

重大な危機をひとまず乗り越えた政宗は、喜びを書状にしたため飛脚を走らせて米沢へ知らせます。氏郷は今ごろはらわた煮えくりかえる思いだと思われ、小十郎は道中の見張りを政宗に進言します。秀吉も、喜ばせておいていきなり手討ちの可能性もあります。秀吉は政宗の思惑を初めから見抜いていて、天下人の器量とはああしたものか、と政宗は舌を巻きます。

政宗は秀吉の命により1日遅れて清州を出発し、愛姫の待つ京へ向かいます。男伊達の神髄を天下に示して派手好みの秀吉を仰天させる政宗の趣向とは、白装束の政宗が黄金の磔柱(はりつけばしら)を肩に京に入るというものでした。夕方、京の五条大橋を政宗は夕日に照らされて堂々と渡ってきます。

秀吉は手を叩いて大喜びします。黄金といってもケヤキの柱に黄金を貼り付けたもので、進んで臣下の礼を取り、叶わなければ磔をも辞さない覚悟だったのです。三成は政宗のおごった物言いが不満ですが、秀吉は政宗の風流が分からないのかと三成をたしなめます。風流には風流で報いてやらねばならないと、秀吉は政宗が小田原で会いそこなった千 利休の点前を取らせることにします。

織田信長と秀吉に仕え、茶の湯の指南役を務めた利休はこの時70歳。大名たちが争って弟子入りするほどの名声と格式を備え、当時の文化人として頂点に立つ人物でした。政宗は、入洛早々の対面に感動し、懇切な書状を交わしていた利休は初対面とも思えず、お懐かしゅうございます、と政宗を茶室に出迎えます。

利休は初めて政宗に茶を点てますが、“逢い染めのわび茶”がこれほど心にしみたのは初めてと感心します。さすがは秀吉が政宗を“鄙(ひな)の都人”と評しただけあります。政宗は在京中に秘蔵の名物『橋立の壺』を拝見したいと頭を下げますが、「渡さじな 面影映ゆる 人あらば 我には告げよ 天橋立」と詠みます。『橋立の壺』は秀吉に求められ、大徳寺の塔頭(たっちゅう)・聚光院に預け、手元を離れていたのです。

夕暮れの伊達屋敷にはひぐらしが鳴く声が響いています。ようやく政宗が到着し、紅をさして待っていた愛姫は涙を浮かべて政宗の胸に飛び込みます。京での暮らしも長くなりますが、愛姫は未だに慣れないようで、寂しい思いをさせたと政宗は詫びます。謀反の疑いは晴れたのですね、という愛姫に、政宗は真顔になります。「二度とは聞くな。俺は潔白だ。謀反を企てたことはない」

そのころ小十郎も久しぶりに喜多と再会していました。秀吉の機嫌も上々との報告に、喜多は小十郎を労います。

 

脚本:ジエームス 三木
原作:山岡 荘八「伊達政宗」
音楽:池辺 晋一郎
タイトル刻字:長 揚石
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[出演]
渡辺 謙 (伊達政宗)
西郷 輝彦 (片倉小十郎)
竹下 景子 (喜多)
桜田 淳子 (愛姫)
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池辺 良 (千 利休)
奥田 瑛二 (石田三成)
陣内 孝則 (羽柴秀次)
寺泉 憲 (蒲生氏郷)
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語り:葛西 聖司 アナウンサー
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津川 雅彦 (徳川家康)
勝 新太郎 (豊臣秀吉)
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制作:中村 克史
演出:西村 与志木

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』
第28回「知恵くらべ」

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