プレイバック琉球の風 -DRAGON SPIRIT-・(04)若夏の恋
青空の下、軍陀利が指南役として子どもたちに武術を教えています。2人一組の場面では、啓泰と奇羅波丸が阿紀を取り合い、突き飛ばしている間に、阿紀はケンと組んでしまい、仕方なく啓泰と奇羅波丸でペアを組みます。羽儀は啓山と組む男の子を押しのけて自分がすっぽり鞘に収まります。
天正20(1592)年1月5日、太閤豊臣秀吉が全国の諸大名に対し、朝鮮出兵の命令を発したとの知らせを持って早馬が到着します。小西行長や加藤清正らが肥前名護屋城から158,800人の大軍で出陣し、徳川家康や前田利家ら146,500人は後詰として名護屋城を固めています。さらに秀吉は、島津義弘には琉球王国を薩摩軍の与力として付属させると命令し、尚寧王と重臣たちは衝撃を受けます。
──与力というのは、琉球王国が薩摩の家来になるということで、今後琉球は薩摩の命令に無条件に従えということです。しかし独立国の琉球王国に対して、秀吉の命令は狂気の沙汰としか言いようがありません。秀吉軍は15万余の大軍で朝鮮を侵略し、4月12日には釜山を落とし、そのまま破竹の勢いで北上。5月2日には朝鮮の都・漢城も攻め落としたのでありました。
秀吉の朝鮮出兵に対し、明国は一兵たりとも援軍を送る様子がありません。朝鮮は琉球同様、明国の朝貢国であり、親と子の間柄に相当します。浦添親方や豊見城盛続は、謝名親方が日ごろから“明国の傘の下におれば朝貢国は決して国を危うくすることはない”と言っていたのにと非難しますが、明国は近々必ず朝鮮に援軍を送ると主張を繰り返します。
名護は、明国の援軍が期待できない以上、薩摩の顔を立てて軍役金の半分を拠出するよう進言しますが、謝名は激しく抵抗します。いま琉球が薩摩の軍役を引き受けてしまえば、秀吉の命令通り薩摩の与力となり、やがては属国になり果てて、国家百年の大計に禍根を残すのです。なにとぞ! と平伏する謝名を前に、尚寧は名護に命じます。「軍役の半分を拠出するよう」
6月16日、秀吉軍、平壌を落す──。
巴知羅(はちろう)の店で、謝名は高翔と震天風と酒を飲んでいます。巴知羅は孤児たちに手料理を食わせようと腕を振るいますが、昔海賊たちに食わせたという南蛮料理で、夫を海賊に殺された軍陀利は怒って鍋の中身を捨ててしまいます。即位20年の万暦帝は表に出ず、今や明国は自国でさも守れないのかと謝名はため息をつきますが、明国が滅べば秀吉の次の矛先は琉球になる恐れが高いのです。
──7月16日、待ちに待った明国の大軍がついに朝鮮国境に現れ、秀吉の軍と正面から対決したのでした。それを知った琉球の人々は、喜びに国中が湧き返ったのでした。7年間にわたる朝鮮侵略も、秀吉が病死をしたことでそれぞれの国に大勢の犠牲者を出して、ここに終わりを告げたのでありました。
7年後。──今や啓泰も謝名親方の代わりに子どもたちを教えるまでに成長しました。
海辺では啓山の三線の演奏に合わせて羽儀がしっとりと踊り、おばぁ(ウシ)は羽儀が男だったら(琉球舞踊を受け継げて)よかったのにねとつぶやきます。阿紀は店の酒を黙って持ち去ろうとする名護良寧と浦添百千代に注意し、奇羅波丸は浜辺で黙々と働き、働かずに遊んでいる他の仲間たちと喧嘩になります。
首里城に上がった啓泰は、謝名から阿紀を養女として王妃に仕えさせると打ち明けられます。その後、謝名の紹介で尚寧王と初めて対面しますが、そこに尚寧王妃(真銭金)と妹が、婚礼で着る着物の柄についてああだこうだ言いながら入ってきます。尚寧に“いてくれ”と懇願されていた謝名と啓泰ですが、気を利かせて一礼して黙って居室を後にします。尚寧はただ黙って、後から入ってきた尚永王妃を見つめます。
近習の溜まり場では、秀吉の次に天下を取るのは徳川家康か石田三成かで盛り上がります。啓泰は、朝鮮出兵に真っ先に反対した家康は商いをして儲けたほうが得だと考えていると主張しますが、正当な説でも力づくでねじ伏せる説き方が、仲間たちには少し煙たい存在です。日本と戦った明国が家康を信用するわけもなく、啓泰は家康が琉球を通じて明国と貿易するために、琉球が攻撃されると警鐘を鳴らします。
──秀吉亡き後、眼を広く世界に向け、大和の国に新しい統一国家を作り上げようとする野心的な男がおりました。その名は徳川家康、57歳。
武力を推して国を制する政は秀吉の代で終わりにしたい、と家康は五大老の面々の前で表明します。武力に頼らず他国とも平和の交わりを第一の眼目とし、海外との貿易も盛んにして日本を豊かにしたい考えです。そのために自分たちが力を合わせて強大な一つの国にまとめ上げることが大事と力説します。「我々がまず為すべきことは、私利私欲のためにこの日本国の足並みを乱しておる輩を罰することだ」
──家康の強い意志により、五大老署名入りの海賊行為禁止令が、二度にわたって薩摩に送られたのでした。
家康が懇意にしている豪商・茶屋四郎次郎は、3年前に初代が亡くなってすでに2代目清忠の時代です。傍らには先代の妾だった真鶴が控えています。家康は、秀吉が明国を怒らせてしまった現状、手土産として未だに囚われの身となっている明国将軍茅国科(ぼうこくか)を丁重に送り返すことにします。「この仕事、薩摩にやらせてみるかの」
屋敷に戻った真鶴は、家康が明国との貿易で儲けて、次の天下人を狙うというのは無理でしょうねと清忠に告げます。明国は朝貢国の琉球と朝鮮としか貿易を認めず、琉球と薩摩にとって明国との貿易は国を守る命綱です。そこに家康が割って入るならば。「家康さまは戦をなさるおつもりですか?」との真鶴の問いに、清忠は先代が真鶴と話していて楽しいと言っていたと、話をはぐらかします。
茅国科将軍を明国に送還せよとの命令書が薩摩に届きます。回りくどいのが嫌いな清水半蔵は、茅国科は昨夜食あたりで急死したと報告することを進言しますが、島津義久に一蹴されます。家康が明国と取引を始めたら、商売あがったりな琉球はどうする? 琉球王は首でもくくって死ぬか? と義久はマッサージしている楊 邦義に尋ねますが、首をくくるのは薩摩の殿さまも同じことと言って義久をうならせます。
そのころ邦義の家には、海賊の文太が入り込んでいました。帰らないとのどを突きます! と清水 富は刀を手にしますが、文太の目的は富の身体ではなく金なのです。仕事にあぶれたのも邦義のせいだと思っているのか、巾着袋を見つけると、富にとんでもない情報を吹き込みます。「あんたの亭主には息子が2人いる。へへ……一度亭主に聞いてみな。その亭主を明国からさらってこいと命じたのはあんたの親父だ」
帰宅した邦義は娘の美矢を愛情たっぷりに可愛がっていますが、富は文太に言われた言葉が引っ掛かっています。邦義が仕事で琉球に戻るたび、薩摩には戻って来ないのではないかと不安にさいなまれるのです。いつも戻ってきているではないかと邦義は富を慰め、今度も富と美矢のために戻ってくると約束します。富は嬉しくて邦義に抱きつきますが、邦義は少し複雑な表情です。
阿紀が養女に入る日が来ました。奇羅波丸は謝名の家に押しかけ、阿紀と羽儀と奇羅波丸でなんとか生き抜いてきたのに、取り上げないでほしいと訴えます。さらに阿紀は養女になれて羽儀はなれないのはなぜか、啓泰はお城に上がれて自分は一生荷物運びなのはなぜかという運命の違いを謝名にぶつけます。戻ってきた奇羅波丸は、見送りに行く啓泰と遭遇し殴り合いの大ゲンカになります。
そのころ羽儀は、琉球舞踊の名手である名護親方に教えを乞うため、啓山を連れて名護の稽古場に来ていました。女は踊らなくていいと門前払いをしようとしますが、どうしても踊りたいという思いをぶつけます。どうしても踊りたければノロ(祝女=国王から任命され集落の祭祀を取り仕切った女性神職)になれという名護に、自分のために踊りたいと食い下がりますが、良寧と啓山に抱えられて連れ出されます。
薩摩は家康に逆らう勇気はなく、茅国科を送り返すことにしたと、琉球入りした邦義は謝名に報告します。明国は家康を受け入れるだろうかと謝名は考えますが、礼節には礼節を重んじる国だけに、どう転ぶかは未知数です。客人としてきている邦義のことを聞き出そうとする軍陀利ですが、いつもはふざける巴知羅が一切ボケず、「阿紀ちゃん、啓泰と啓山呼んできてくれるか」と真面目なのが不気味です。
呼ばれた啓泰と啓山に、巴知羅は出来上がった料理を運ばせようとします。軍陀利と阿紀は自分たちが運ぶと言いますが、余計なことすな! と巴知羅はたしなめます。「啓泰、啓山、今日は大事なお客さんや。恥をかかんように、ちゃんと背筋を伸ばして、挨拶行ってこい!」 兄弟は、仕方なく料理を運びます。
義久は内密な話で謝名と面会したいと言っているそうです。しばらく考えた謝名は、返事はしばらく待ってほしいと邦義に伝えます。邦義の考えは、家康が明国と貿易したければさせてやればいいし、その結果琉球が滅びてしまうなら滅びればいいというものです。“国が滅びても人間は生きていける”というのが根底にあるようです。飢えで死ぬと言っても人間はそこまでヤワじゃない、とは医師ならではの言葉です。
そこに啓泰と啓山が料理を運んできました。7年前、まだ子どもだった兄弟は、今では立派な青年です。右目に青あざがあり、武術の訓練中に不覚を取ったと理由を説明する啓泰に、そして琉球舞踊の衣装を身にまとい、武術を少しという啓山にも、邦義は頼もしさを感じます。謝名に促されて退出する2人ですが、邦義は深々と頭を下げます。「立派な青年に育ってくれた。琉球という国があってこそだ」
邦義からの情報は、謝名によってすぐに尚寧に報告されます。もし家康が明国と貿易したら、琉球が生きるために残されている明国との貿易が失われるわけで、それがなければ琉球王国は生きていけないのです。謝名は義久との面会を尚寧に打ち明け、他の者に知れたらやっかいなことになるからと、尚寧は「私の用向きで八重山へ出向くということでどうか」と助言します。
羽儀は髪の毛を梳きながら、琉球の外に出ることも視野に入れ、啓山も一緒に行こうと誘い出そうとします。寝っ転がって黙って聞いている啓山ですが、羽儀にとっては琉球は息苦しくて生きていけないわけです。どうせ孤児(みなしご)だしどこで生きても同じと、自分を納得させるようにつぶやくのですが、振り返った時には啓山の姿はありませんでした。
阿紀と2人きりでいる啓泰は、しばらく琉球から離れることを打ち明けます。昨夜来た客人と何か関係があると阿紀は考えますが、啓泰はそれには答えず、「阿紀ちゃんは奇羅波丸が好きか」と唐突の質問です。なぜ聞くのかと阿紀は困惑しますが、振り返ると奇羅波丸が遠くから啓泰を睨みつけていました。啓泰が行こうとするよりも先に、ケンカは止めて! と阿紀は間に入ります。
──啓泰たちは青春の炎を燃やしながら、琉球の苦難に立ち向かっていくのです。
脚本:山田 信夫
テーマ曲:谷村 新司 「階(きざはし)」
語り:北林 谷栄
音楽:長生 淳
題字:水谷 勇夫
原作:陳 舜臣
──────────
[出演]
東山 紀之 (啓泰)
渡部 篤郎 (啓山)
原田 知世 (阿紀)
工藤 夕貴 (羽儀)
清水 宏次朗 (奇羅波丸)
小柳 ルミ子 (真鶴)
ショー・コスギ (震天風)
間 寛平 (巴知羅)
毬谷 友子 (軍陀利)
坂本 スミ子 (ウシ)
永島 暎子 (清水 富)
──────────
小林 旭 (徳川家康)
橋爪 功 (名護親方)
津嘉山 正種 (浦添親方)
───────────
寺田 農 (清水半蔵)
室田 日出男 (島津義久)
三木 のり平 (高翔)
沢田 研二 (尚寧王)
富司 純子 (尚永王妃)
江守 徹 (謝名親方)
萩原 健一 (楊 邦義)
──────────
制作:音成 正人
制作著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
:NHKテクニカルサービス
演出:吉村 芳之
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『琉球の風 -DRAGON SPIRIT-』
第5回「南海の密約」
| 固定リンク


コメント