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2026年7月 1日 (水)

プレイバック独眼竜政宗・(35)成実失踪(しっそう)

【アヴァン・タイトル】

全国で183銘柄もある“政宗”と名の付く酒は、京・伊達屋敷跡の酒倉がつけたのが始まりという説がある。その真偽は定かでないが、政宗が酒を愛したのは事実で、ここ仙台城の酒倉でさまざまな酒を造らせたという。中でも印籠に粉末にした酒を入れ、携帯用にしたという話は、いかにも進取の気性に富む政宗らしい。この印籠酒、合戦の時の興奮剤として大いに活用されたというが、今はその製法が伝わっていない幻の酒である。

政宗といえども、時には酒を飲みすぎて失敗もした。側近に宛てて酒席での不始末の詫びを綿々とつづっている。晩年には、若き日を懐かしみつつ悠然と酒を楽しむ、こんな詩を残した。

四十年前少壮時
功名聊復自私期
老来不識干戈事
只把春風桃李巵

四十年前の若く血気盛んだった頃は、手柄を立てて名を成すことを自分の中でひそかに期待していたものだ。しかし、年老いた今となっては戦のやり方などすっかり忘れてしまい、今はただ春風に吹かれながら、桃やすももの花の下で酒杯を酌み交わして楽しむばかりである──。


慶長3(1598)年8月18日、太閤豊臣秀吉は62歳で世を去りました。伊達政宗には遺品として、名刀『鎬 藤四郎(しのぎ とうしろう)』が与えられます。ひぐらしの鳴く中、じっくりと刀を眺めていた政宗は、「難波のことも夢のまた夢」と秀吉の辞世をつぶやきます。長きにわたり恨み、そしてその死を望んできた政宗ですが、亡くなってみれば寂寥(せきりょう)の感は禁じ得ません。

若い時分に似ていると秀吉に可愛がられた政宗ですが、諸大名に畏れられながらも慕われていた秀吉と、右腕とも頼む伊達成実に離反されいざこざの種をまく自分とは、器量が違いすぎます。愛姫は、善政を敷いて民百姓に慕われてこそ名君であり、朝鮮出兵という愚かしい過ちをし晩年に光を失った秀吉を手本にしないようにと助言します。「申し分は耳に入れておく。だが男には沽券(こけん)というものがある」

淀君に呼ばれ石田三成屋敷に赴いた政宗は、嫡男を秀頼の小姓に差し出せと求められます。秀宗はまだ7歳で、しばらくの猶予を求める政宗ですが、三成は大坂に設ける学問所で訓育を施すと胸を張ります。秀頼の傅役(もりやく)前田利家は病身で、北政所も政に表向きには関わらないと聞き、政宗は“しかるべきお方”に相談して御意に沿いたいと返答を避けます。平手打ちする淀君ですが、政宗は立ち上がります。

それから間もなく、今井宗薫(そうくん)が伊達屋敷を訪れます。千 利休亡き後、茶人の第一人者とみられ、今でいう政界の黒幕でもあったのです。宗薫は政宗の長女五郎八(いろは)姫に縁談を持ってきたのです。相手は徳川家康の六男松平忠輝です。秀吉の遺言では大名同士がみだりに縁組を通じることを禁じていて、政宗はすぐの返事はできないといいながら、「これはおもしろうなってきた」と笑いが止まりません。

話を聞いた愛姫は、忠輝は乱暴者とのうわさで五郎八姫が苦労すると難色を示します。天下人は西に沈み闇の中、大大名はそれぞれの思惑で腹を探り合い、東から秀頼を抱えて昇るのは家康か三成か。天下の綱引きが始まったと政宗は愉快そうですが、愛姫は五郎八姫が綱引きの道具に使われるのかと不満です。最上家の駒姫のように政道のいけにえとなる女子もいて、慎重に考えたいのです。

中秋の名月が澄んだ夜空に美しく輝く夜、猫御前(飯坂局)は秀宗にも縁組をと政宗に迫ります。急いては事を仕損じると、政宗は天下が定まってからでいいと笑いますが、猫御前は五郎八姫の縁談に嫉妬しているのかもしれません。そこに酒を運んできた香の前ですが、猫御前は香の前が侍女の扱いと聞いて満足げです。秀吉のお下がりを側室にしたのでは沽券に関わると言われ、政宗は黙り込みます。

 

2年前に出奔した成実の居場所が分かり、政宗は直ちに相州糟屋(かすや)へ片倉小十郎を向かわせますが、成実は頑として帰参の勧告には応じません。成実は伊達の統領を天下の王にするために働いてきましたが、政宗の天下人たらんとする気概を、茶坊主の真似をして維持しているように映る成実には、その相手が秀吉から家康へ変わっただけとしか思えないのです。政宗を見限った成実は角田城の召し上げも存分にせよと返答して、小十郎を悲しませます。

政宗は成実を逐電とみなして角田城を召し上げ、石川昭光に取らせることにします。角田城の受け渡しには、岩出山から矢代兵衛の軍勢が赴きます。主人成実が帰参するまでと妻の登勢や留守居役羽田右馬助は必死に抵抗しますが、兵衛の号令によってついに軍勢が城の襲撃を始めます。右馬助も戦いますが無数の兵たちに囲まれて命を落とし、登勢と子どもたちも自害して果てます。

書状で報告を受けた政宗は愕然とし、何たること……!! と小十郎も絶句します。城の受け渡しを命じたはずなのに、誰が妻子を討てと言ったかと政宗は顔面蒼白です。政宗は成実に詫び、償わなければならないと唇を震わせます。小十郎は急ぎ糟屋へ向かいますが、成実はこの時すでに相州を離れ、再び行方知れずとなっていました。

 

家康のもとには詰問の使者として三成、浅野長政らが訪れていました。奉行に断りなく伊達、福島、蜂須賀と縁組みしたのは秀吉の遺言に背くものと主張しますが、家康から見れば、政道をゆがめ遺言に背いているのは淀君一派です。三成は伊達との縁組を遠慮せよと食い下がり、家康は突っぱねます。無理を通せば逆臣と見なすと三成が睨みつけ、家康が反発したところで、長政が慌ててとりなします。

利家が62歳で病没しました。家康の力はさらに強まり、遺言体制を守ろうとする三成との仲がますます険悪になります。伏見徳川屋敷に赴いた政宗は、いきなり乱暴をしてきた忠輝を諭し、わざと三成に喧嘩を売ろうとする家康と婚儀の打ち合わせをします。そこに柳生宗矩が、三成派が小西行長屋敷に集まり、徳川討伐の談合に及んだと知らせてきますが、家康は「捨て置け」と涼しい顔です。

大坂城周辺はにわかに雲行きが怪しくなります。三成の企てに憤激した加藤清正・福島正則らの武将たちが、逆に結束して三成を討ち果たそうと動き出します。三成は身の危険を察し夜陰に乗じて大坂城を退去、伏見の徳川屋敷へ逃げ込んだのです。すでに荒くれ武将をなだめた家康は、大坂への護衛を依頼する三成に「見え透いた猿芝居の片棒を担ぐのだけはご免被る」と、在所佐和山への引き退きを勧告します。

三成ほどの忠義者を見捨てて政道が成り立つかと、淀君は北政所に訴えます。何ごとも家康の意見を聞けとの秀吉の遺言もありますが、家康には豊臣に代わって天下を得ようとする邪心が見えると淀君は反発します。秀頼をたくましく育てるには、家康のような質素倹約を身上とする傅役が望ましいと諭し、淀君にも身を慎めと命じます。北政所は、大坂城の命運を家康に託すと京都三本木に引きこもります。

香の前が懐妊したと猫御前が政宗に報告します。政宗は俺は知らぬとしらを切りますが、不義を働いた香の前を屋敷から追い出すか、相手の男ともども四つに…と言い出す猫御前の手前、自分の子だという機会を逸した政宗は、香の前の身柄を茂庭綱元に預けることにします。「謝らんでもよい。俺は嬉しいのだ。嬉しいが公にはできぬ。察してくれ」

ほとほと疲れ果てた政宗のところに愛姫が現れ、身ごもっていることを打ち明けます。「あれは俺の子ではない!」とぐったりする政宗ですが、自分が政宗の子を懐妊したと伝え直します。へ? という表情でむくりと起き上がり、懐妊の事実が本当と知るや、政宗は愛姫をグッと抱き寄せます。

脚本:ジエームス 三木
原作:山岡 荘八「伊達政宗」
音楽:池辺 晋一郎
タイトル刻字:長 揚石
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[出演]
渡辺 謙 (伊達政宗)
三浦 友和 (伊達成実)
西郷 輝彦 (片倉小十郎)
桜田 淳子 (愛姫)
五大 路子 (登勢)
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奥田 瑛二 (石田三成)
樋口 可南子 (淀君)
林 与一 (浅野長政)
大木 実 (前田利家)
石橋 蓮司 (柳生宗矩)
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語り:葛西 聖司 アナウンサー
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秋吉 久美子 (猫御前)
谷 啓 (今井宗薫)
八千草 薫 (北政所)
津川 雅彦 (徳川家康)
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制作:中村 克史
演出:吉村 芳之

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』
第36回「天下分け目」

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