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2026年8月12日 (水)

プレイバック琉球の風 -DRAGON SPIRIT-・(10)女たちの戦い

謝名親方からの呼び出しで、首里城・久慶門から阿紀が出てきて巴知羅の店に向かいます。御内原(おうちばら=国王の私的空間)では女たちが“明日にも薩摩が攻めてくる”とあらぬ噂に惑わされています。なぜ薩摩と険悪なのかなど、政の中身を知らされていないからです。謝名は、政は自分たちに任せて、それぞれ仕事に励むよう阿紀から説得してほしいと言いますが、それだけでは納得できないと阿紀はうつむきます。

戦を始めるのは男でも、むごい目に遭うのは女や子どもたちです。なぜ薩摩と仲良く暮らしていけないのか、戦をするなら自分たちにそのお話がないのか、女たちは知りたがっているのです。「女たちの小さな願い、切ない言葉も聞いてやってくださいませ。私が親方のお言いつけで御内原へ上がったのも、そういう女たちの声が聞こえる親方にご報告し、政に反映していただくためではなかったのでございますか」

御内原での女たちのざわめきは尚寧王も憂いていたところで、尚寧は啓泰に御内原に行って、これまでの政の中身と経緯を説明するよう命じます。謝名は御内原に出向いて政を説明するなど前例がないと止めますが、尚寧は前例がなくても構わないという態度です。男だけでは国は守れず、女たちの支えを失えば、いずれ国は滅びてしまうのです。そう言われて、謝名は返す言葉がありません。

さっそく啓泰が御内原に出向きますが、政の説明の前に質問の嵐です。今帰仁城に派遣された夫のこと、豊見城にいる弟のこと、明国南京の国子監(こくしかん)に留学している許婚(いいなずけ)のことなど、戦に対する心配事から、いつしか個人的な話になり、「みなさん、自分勝手なことばかり言って、御内原の女として恥ずかしくはないのですか」と侍女頭はたしなめます。

侍女頭が要点をまとめて、代表して啓泰に質問します。薩摩と仲が悪くなった原因……薩摩は朝鮮出兵の分担金の支払いを琉球に要求し、琉球は拒み続けてきました。しかし薩摩は秀吉と共謀して、琉球から先に征服すると圧力をかけてきたわけです。琉球は100年にわたり戦はしておらず兵も武器もないため、代わりに軍用金と食料を出すよう求められます。今問題になっているのは、一部を支払った軍用金の残額です。

王府は残額を払う意思もなく、払う必要もないと啓泰は答え、女たちは拍手して賛同しますが、払わなければ戦になるのではないかという侍女頭の質問はもっともです。戦にならないように王や三司官、自分たちも全力を注いでいると言ったところで、戦になれば愛する人たちが犠牲になるということもあり、戦ではなく金を支払った方がいいのではないかという声も上がり始めます。

徳川家康への謝恩使派遣について……6年前に琉球船が陸奥に漂着し、家康の計らいで琉球に帰ることができたわけですが、それに対して御礼の使者を出すべきところ、出せない事情があります。大和の国々は明との交易は一切認められておらず、かつ朝鮮出兵で明国は大和の国々とは交易したくありません。しかし明との交易を手に入れたい家康は、琉球を従えることで交易を斡旋させる思惑があるのです。

これに対して薩摩が謝恩使を出すよう横から口を出してきています。家康から言われて催促していると思われますが、薩摩は“琉球は薩摩の附庸国(家来の扱い)”と公言しています。いま謝恩使を送れば薩摩の言い分を認めたことになり、琉球は薩摩の属国扱いにされてしまうのです。女たちは、属国になったとしてもこれまで通り暮らしていけるなら、それでもいいのでは? という声が上がります。

イラッとした啓泰は、女たちに問いかけます。強い武力を持った人間なら、持たない弱い人間に対して何をしてもいいのか。男は家族を守るために命を懸けて明国に貿易に出向き、女は留守を守って子を育て、この琉球国を作ってきたわけです。「私たちの大切な国や家族、踊りや音曲まで大和人(やまとんちゅ)は力づくで奪おうとしているのです。それでもあなたたちは、大和の属国になりたいというのですか!」

 

──このころの家康は将軍職を息子の秀忠に譲り、大御所として駿府城におりましたが、幕府の実権は家康が全てその手で握っていたのでございます。

家康居城の駿府城。ウィリアム・アダムス(三浦按針)が客として、裃をつけて登城しています。そこに茶屋四郎次郎清次と羽儀が挨拶に来ます。朝鮮国との和睦が成就し、豊臣秀吉が残した後始末をようやく済ませることが出来ました。イギリスやオランダ、フランスなどは明国や日本を狙っていて、その前に明国と交わりを持ち、力を合わせてイギリスなどに対処しなければならないと家康は考えています。

だからこそ琉球も自国のことばかり考えるのではなく、ある意味力づくで従わせるより他に道はありません。島津に琉球入りを認めて、すんなりいけばいいというのは幕府の“建前”ですが、それはすなわち島津にタダで琉球をくれてやるため……ではありません。明国との貿易を幕府が一手に担うため、そして琉球入りで島津に大きな犠牲を払わせ弱体化させる意味合いもあります。

両親を失って孤児になった羽儀を琉球は温かく迎え、16歳になるまで育ててくれました。羽儀はその琉球が家康に何か無礼を働いたのかと疑問をぶつけます。家康が38歳の時、時の天下人織田信長に謀反を疑われたことがありました。謀反を企てたことはなかった家康ですが、いわば大国たる信長に対し、小国である家康が反抗すれば、たちどころにつぶされてしまいます。家康は泣く泣く従いました。

そして今、イギリスやオランダらが大国として日本をうかがっていて、家康はこの国を守らなければなりません。そして守るためなら琉球もいけにえにする必要があるのです。「謝名とかいう三司官に伝えよ。琉球がもし生き延びたければ、小事にこだわらずわしに謝恩使を送って臣下の礼を取り、自ら進んで明貿易の橋渡しとなるように、と」

 

島津義久は、家康がそろそろ琉球入りを命じると察知しますが、琉球はそれを分からず苛立ちます。中原松之助は琉球は薩摩の附庸国と言い切りますが、楊 邦義は即座に否定します。家康は島津の琉球入りで、征服が成ったら堺や長崎と同じように幕府の天領とし、明貿易を島津の手から奪うつもりです。朝鮮出兵の分担金の負担か大島割譲のどちらかを認めれば、琉球入りはしないことを清水半蔵に伝えさせます。

伝える相手の謝名は、それでも拒む可能性がありますが、義久はそのときは“三司官の名護良豊は大島割譲を納得している”と教えてやれと命じます。邦義には驚くべき内容ですが、義久によれば本当の事のようで、名護は尚寧の養子に入った尚豊の味方なのです。あとは謝名が認めれば、琉球入りはこの世から消えてなくなる。ただし、叶わぬ場合は……。「言わずとも分かっておろう」

松之助と美矢の間に産まれた赤子は矢之助と名付けられ、様子を見に来る半蔵ですが、富は戦が近いのかと感じとります。国が買い占めを行ったせいで、米が不足し値段が上がっているのです。美矢は松之助と啓泰・啓山が戦うことになると悲鳴に近い声を上げますが、矢之助をあやす半蔵は何も答えません。

松之助は相変わらず、弱者は強者に頭を下げるべきという持論です。邦義は、薩摩が琉球を力でねじ伏せればお互いに心にゆがみを持ち、すべてを不幸せにすると諭します。琉球王朝も宮古島や奄美大島を力づくで奪い取った経験があり、もしかしたら現地民は、今でも王府に対して怒りを抱いているかもしれず、それが相手の心を見失ってやがては自らの心も病んでいく証なのです。

夜になると、富がシクシク泣き出します。夫は今度こそ琉球から戻って来ないのではという不安からです。邦義は、富、美矢と松之助と矢之助、啓泰と啓山ら琉球のみんなを連れて、戦のない国に行かないか? と持ち掛けます。ただ、そんな国は……「琉球もない。薩摩もない。大和もない。そんな国でみんなと一緒に同じように暮らすことが出来たら、どんなにいいだろうか。そんな日が、いつか来るだろうか」

名護は尚宏を差し置いて、尚豊を尚寧の世継ぎとして薩摩との和睦を進めます。いったん白紙に戻したはずの話が復活していることもあり、それを打ち消すため謝名は尚寧に側室として阿紀を推挙します。啓泰が顔色を変え、尚寧は王妃を傷つけたくないと首を横に振ります。形ばかりの側室をと食い下がる謝名に、尚寧は形ばかりでいいなら阿紀ではなく、冊封正使だった夏 子陽の世話役を果たした軍陀利がよかろうと告げます。

こうして軍陀利に尚寧側室の白羽の矢が立ったわけですが、軍陀利は怯えるように首を振り、巴知羅も納得できないと謝名に掛け合おうとします。必死に止める啓泰ですが、これが阿紀だったらどうするのかと啓山に突っ込まれ、何も言えなくなってしまいました。巴知羅と啓山が謝名のところに行こうとしたとき、現れたのは邦義と松之助でした。

 

脚本:山田 信夫
テーマ曲:谷村 新司 「階(きざはし)」
語り:北林 谷栄
音楽:長生 淳
題字:水谷 勇夫
原作:陳 舜臣
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[出演]
東山 紀之 (啓泰)
渡部 篤郎 (啓山)
原田 知世 (阿紀)
工藤 夕貴 (羽儀)
間 寛平 (巴知羅)
毬谷 友子 (軍陀利)
永島 暎子 (清水 富)
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小林 旭 (徳川家康)
寺田 農 (清水半蔵)
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室田 日出男 (島津義久)
丹阿弥 谷津子 (侍女頭)

沢田 研二 (尚寧王)
江守 徹 (謝名親方)
萩原 健一 (楊 邦義)
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制作:音成 正人
制作著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:吉村 芳之

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『琉球の風 -DRAGON SPIRIT-』
第11回「父子の悲劇」

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