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2026年8月 7日 (金)

プレイバック琉球の風 -DRAGON SPIRIT-・(09)冊封使(さっぽうし)の季節

那覇港に冊封使を乗せた2艘の船が入港し、岸壁には琉球民が大勢でその様子を見守っています。迎えるにあたって尚寧王や弟尚宏、浦添親方や名護親方、謝名親方ら三司官、啓泰や啓山たちも正装で集まっています。琉球民たちは「大明国」の旗を掲げ、手を振って歓迎の意思を表明します。小舟に乗り換えた正使と副使が、陸地に近づいてきます。

──冊封の正使・夏 子陽さまと、副使の王 士禎さまでございます。『冊封』と申しますのは、明国の皇帝の名において、琉球の国王たる地位を安堵することでございます。

上陸した冊封使は、そのまま宿舎である天使館に向かいます。子陽は道すがら、琉球の群衆の中に大和の人間がいたと気づきます。それには士禎も気づいていますが、琉球に大和の人間がいるというのは不思議だとつぶやきます。そして冊封の儀式が首里城で執り行われます。尚寧や親方ら首里城内にいる者は、その間みな一礼し、参列していない王妃や仕える阿紀らも手をついています。『汝を封じて琉球国中山王となす』

──この瞬間に、明国皇帝によって、尚寧王の琉球王としての正当性が認められたのでございます。尚寧王は即位してすでに17年になりますが、この冊封の儀式が済むまでは、単に王子に過ぎませんでした。つまり琉球王としては認められていなかったということです。新琉球国王は、明国皇帝から贈られた冠や衣服を身に着け、今正式に認められた国王としての証を、王族や重臣たちに披露するのでございました。

尚寧が冊封使を宴に招待することになり、謝名は軍陀利に子陽の世話を頼みます。子陽は琉球の運命を左右するほどの力を持っていますが、有名な堅物であり、先年妻を亡くしたことにより心を閉ざしてしまっています。何としても琉球の立場を聞いてもらう必要がありますが、この時期に明国皇帝の名代を迎えることができたのはまさに天の助けで、そのチャンスを謝名は逃したくなかったわけです。

謝名たっての願いにより、尚寧と子陽の面会の場に軍陀利が加わることになりました。軍陀利は煎り米の煮汁と茶湯を混ぜ大きな茶筅で泡立てて作る、琉球に伝わる伝統的な『ブクブク茶』を子陽に出します。始めこそ明国の茶しか飲まないと手を付けませんが、“郷に入っては郷に従え”のことわざに倣い、ブクブク茶を楽しみます。

明の官僚・謝 汝烈は、かつて啓泰と対面した時に話していた“南海王国”作りのために、その手本となる琉球を見学に来たのでした。そして啓山と名護良寧、浦添百千代は、琉球舞踊を学ぶ自分たちのために踊りを教えてほしいと士禎に頭を下げます。士禎の踊りはきびきびしていて、3人はその動き一つひとつに目を奪われています。

日差しが強く部屋内に移した会見の場で、子陽は尚寧に子がいないことを心配します。尚寧は弟の尚豊を顔合わせさせ、養子に迎える予定だと子陽に説明します。そのころ尚寧王妃は、自分に子が出来ないのは14歳の時の病が原因ではないかと知り愕然とします。ただ尚豊に継がせるぐらいなら側室を迎えて、その子を育てたほうがいいと母の尚永王妃に訴えます。「母上さま、阿紀はいかがでございましょう?」

 

江戸に行っていた震天風と弟子のケンが琉球に戻って来ました。城普請の人足たちが江戸に集まり、遊女から乞食に至るまで大変な賑わいだそうですが、薩摩の人間はひとりもいません。来春の駿府城普請に加勢する大名からも、薩摩の名が消えているとのことです。薩摩は“他のこと”で忙しいからという家康の計らいらしく、それを聞いた謝名は、琉球出兵の準備に忙しいということかとため息をつきます。

5年経った今でも、震天風の胸の中には、明国が家康と貿易をしては困るという理由だけで、明国の茅国科(ぼうこくか)将軍を無事に送り届けた家康への謝礼船2隻を沈め、300人の明人の命を奪った後悔が残っています。もう忘れるのだと謝名は立ち去りますが、いくら琉球が生き残るためだと説明を受けても、震天風は未だに忘れられません。

夜は子陽を家に招いた謝名は、薩摩が琉球に武力侵攻するようだと伝え、その時には明国に援軍を求めます。援軍が無理なら、明国皇帝に家康への書簡をと、さらに難題を依頼するのです。子陽は他国に頼らず自分の国は自分で守れと突き放します。明国は文物を持つ国で、琉球や朝鮮、カンボジアといった“野蛮国”に貿易という恩恵を与えているのに、これ以上何を求めるのだと謝名を見据えます。「明国は秀吉以来、大和を決して許していない。琉球は何ゆえ大和を許すのか、それが不思議でならぬ」

 

琉球に突然、茶屋四郎次郎清次を伴って羽儀が帰ってきました。清次は啓泰と汝烈と会い、世界情勢を語ります。天竺(インド)にイギリス、オランダ、フランスなどいろいろな国が武力侵攻し、東インドカンパニーを作って命がけの商いを繰り広げています。そんな彼らが次に狙うのは、明国・琉球・大和です。この3つが争えば、それを待っていたかのように強力な武力と財力で乗り込んでくると説明します。

琉球が家康に謝恩使さえ送れば、薩摩が琉球に進行することは家康が許さないわけです。大和が統一され侍が力を持つ時代が終わった今、家康が考えているのは、若い商人の清次が啓泰や汝烈と手を携え、南の国々に富を求めて出かけていくことです。ちなみに汝烈が考える南海王国は、国境がなく武力で富を奪うこともなく、自由で幸せであるビジネスですが、それを聞いた清次は大笑いします。

羽儀が京から帰ってきていると聞いて、啓山がウシの店に駆けつけます。羽儀は啓山のために化粧をし、紅をさし、再会します。「ずいぶん……変わったね。キレイになった」と啓山は羽儀に見とれます。羽儀は夢にまで見た啓山の踊りを見たいと言い、啓山は“かぎやで風(かじゃでふう)を踊って見せます。踊りを見つめながら、羽儀の脳裏には清次に襲われた時のことが蘇ってきました。

我に返ると、清次や啓泰がいました。清次は啓山に、今日限り羽儀のことは忘れてくれと言い放ちます。奇羅波丸は反発して清次を殴り倒しますが、その瞬間羽儀は叫びます。「お兄ちゃん! 何するの私の大事な人に……!」 啓山は哀しい表情を浮かべます。女なんか……もう信用しない……そうつぶやく啓山は、ウシの店を飛び出していきます。

ついに迎えた中秋の宴で、啓山は子陽らの前で見事に踊ります。その間、尚寧の側室に打診された阿紀は、“一生を共にしたいと願う人がいる”と打ち明け、側室の話を断ります。その相手である啓泰もまた、この宴で啓山の踊りを見守っています。羽儀は琉球を離れるにあたり啓山に詫びの手紙を残し、踊り終わった啓山はそれを読みます。啓山は羽儀に贈ってもらった打掛をかぶり、羽儀を思いながら眠ります。

宴の途中から子陽は胸を押さえ、大事をとって休養することになりました。謝名はそのお世話を軍陀利に頼むことにしますが、子陽の考えに同意できない軍陀利は断ります。しかし結局は折れ、子陽のお世話に天使館に向かいます。軍陀利に何かあったらどうするのかと巴知羅は謝名に詰め寄りますが、黙っている謝名を見て「ま、まさか……!?」と衝撃を受けます。

軍陀利は夜通しで、甲斐甲斐しく子陽のお世話を続けます。そのおかげもあって子陽はよく眠れたようで、翌朝には少し回復できたようです。子陽は軍陀利がいると心が休まると、今日もそばにいてくれますかと尋ねますが、「私のような……野蛮国の野蛮人でもいいのですか」と皮肉で返します。

 

夜遅く、薩摩から派遣された清水半蔵は、島津義久の言葉を尚寧から冊封使に取り次いでもらいたいと謝名に伝達します。冊封使に対し明国船は薩摩に来航し貿易をおこなう。明国船が琉球に来た時薩摩も琉球に赴き“出会い貿易”の便宜を図る。しかし謝名は、秀吉の朝鮮出兵があった以上、明国は大和を憎んでいるわけで、冊封使が大和の、特に薩摩の要望を聞き入れるはずがないと取り次ぎを拒みます。

ため息をついた半蔵は渋々承知をしますが、再三再四家康に対して謝恩使を送るよう申し付けるも未だに実行されず、すぐに送れと命じてきました。しかしこれも謝名は、薩摩が琉球の政に口出しする限り、家康に対しての謝恩使は金輪際送らないと断ります。半蔵は“虎の威を借るなんとやら”と深いため息をつき、冊封使もいつかは明国に帰るとつぶやきます。「清水どののお言葉よくよく覚えておきましょう」と謝名は半蔵を見据えます。

琉球は美しい国です、と海を眺めながら子陽はつぶやきます。数歩歩くとよろめき、横で支えていた軍陀利にもたれかかります。2人の構図はそのまま明国と琉球のようです。明国はまもなく滅びると考えられ、琉球を助けたくてもその力はないのです。琉球が頼れば明国も琉球も滅びてしまう。子陽は軍陀利にこれまでの感謝を述べます。

子陽ら冊封使たちは無事に帰国し、王府に掲げられていた『冊封』の黄色い旗は啓泰によって下ろされます。軍陀利のおかげで、結果は保証できないが、家康に宛てた親書が出るよう尽力すると約束したそうです。子陽は愛しい軍陀利に漢詩を残していきました。

江樓書感
獨上江樓思渺然
月光如水水連天
同來翫月人何處
風景依稀以去年
ただ一人川のほとりの高楼に登れば、思い出は果てしなく蘇ってくる。月光は水のように清く澄みわたり、川の水も空に連なって流れている。思えば去年ともに来てこの月を愛でた人は、今どこにいるのであろうか。ただ風景だけは去年とそっくりで少しもかわっていないのに。

──1606年10月21日、夏 子陽さま以下500名の冊封使たちが、139日間の琉球滞在を終えて無事ご帰国なさいました。

冊封使たちが帰国すれば、薩摩が動き出す……。鍵がかけられた天使館に振り返り、啓泰はつぶやきます。

 

脚本:山田 信夫
テーマ曲:谷村 新司 「階(きざはし)」
語り:北林 谷栄
音楽:長生 淳
題字:水谷 勇夫
原作:陳 舜臣
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[出演]
東山 紀之 (啓泰)
渡部 篤郎 (啓山)
原田 知世 (阿紀)
工藤 夕貴 (羽儀)
清水 宏次朗 (奇羅波丸)
ショー・コスギ (震天風)
間 寛平 (巴知羅)
毬谷 友子 (軍陀利)
坂本 スミ子 (ウシ)
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橋爪 功 (名護親方)
津嘉山 正種 (浦添親方)
寺田 農 (清水半蔵)
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沢田 研二 (尚寧王)
富司 純子 (尚永王妃)
江守 徹 (謝名親方)
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制作:音成 正人
制作著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:吉村 芳之

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『琉球の風 -DRAGON SPIRIT-』
第10回「女たちの戦い」

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