プレイバック琉球の風 -DRAGON SPIRIT-・(15)江戸上り
──薩摩を出発して1ヶ月あまり、尚寧王ら江戸上りの一行は長い船旅を終え、ようやく京都の伏見に着いたのでございます。
1ヶ月以上の船旅に、さすがの啓山もぐったりです。そこに尚宏が倒れたと知らせが入ります。楊 邦義が診察しますが、風邪の病だそうで、熱が下がるまでは安静が必要だと説明します。
そのころ駿府城では、徳川家康が地球儀を眺めていました。六十余州といえども世界から見れば豆粒のような小国です。大坂城の豊臣秀頼親子が、万が一に備えて方々の大名に声をかけているようで、家康は「何とかせねばのう、あの親子」とつぶやきます。尚寧王一行が伏見に到着したと茶屋四郎次郎清次に聞き、顔をほころばせます。
清次は駿府を出て京都の別邸に戻って来ました。尚寧王一行と会えるのをとても楽しみにしていると家康が言っていたと聞き、琉球侵攻は家康が命じたものなのに、と羽儀は反発します。羽儀は清次に、尚寧王に女歌舞伎を見せたいと言い出しますが、本心は尚寧王ではなく啓山だろと清次は見抜きます。清次の啓山への嫉妬は半端ないですが、結局は羽儀の言うことを聞いてしまう哀しいサガです。
伏見の宿舎に駆けつけ、女歌舞伎が見られることを啓山に伝える羽儀です。よかったな、と邦義も久しぶりの笑顔を見せます。邦義は羽儀に、真鶴が京に戻っていると聞いたが? と尋ねます。確かに真鶴は京に戻りましたが、男の人と茶屋の屋敷を出て行って、今はその男の人と料亭を営んでいると教えてもらいます。邦義はその料亭に向かうことにします。
再会した真鶴に、急にいなくなったからその事情を尋ねる邦義ですが、思わぬ人が現れて……と弁明します。その“思わぬ人”とは、啓山の父親である新垣朝永(鶴 球陽(かく・きゅうよう))でした。朝永は土下座して邦義に詫びます。明で襲撃されて22年、海賊に斬られて倒れていたところを明人に助けられ、明で暮らしていました。海賊に襲われた古傷がもとで、左腕は上げることもままなりません。
自分を助けた明人が貿易の商いをしていて、その手伝いをしていた朝永は独り立ちして貯えもできました。2年前に真鶴が茶屋四郎次郎の屋敷にいると知り、琉球への思いが強くなりますが、薩摩との戦が始まり、商いをたたんで琉球に来る直前に戦が終わってしまいました。せめて一目だけでもと真鶴に会ったというわけです。もう一人、朝永は啓山にも会いたいと強く思っています。
しかし邦義は「啓山に会うことは許さぬ……いや、許せぬ」と認めません。25歳になった啓山は今、自分の生き方に迷っています。そんな時に実の父親が現れたら、啓山はどうなってしまうのだろう? それを考えると、簡単に認めるわけにはいかないのです。わかってくれ、とうつむく邦義に、朝永も真鶴も肩を落とします。
後日、尚寧や樺山久高らを招いて、茶屋の別邸で女歌舞伎が披露されます。食い入るように見ていた啓山は、伏見の宿所に戻ってもその踊りの猛特訓です。踊りでは一つになれるのに、なぜ人間は琉球も大和も殺し合いばかりで、羽儀は哀しい思いです。清次が羽儀を迎えに来て、思わず呼ぶ啓山ですが、悔しかったら一流の踊り手になることね、と去って行きます。「やってやるとも。お前たちを見返してやる」
琉球の謝名家では、軍陀利が産んだ赤子を巴知羅が抱っこしてあやしています。ようやく軍陀利とウシが食事を用意し、孤児たちが集まってきます。阿紀は名護良寧に支援を求めますが、無下に断られます。ついでに薩摩の意向で阿紀を御内原から追放すると告げ、立ち去れと命じます。それを聞きとがめた尚永王妃は、「薩摩の名前を出せば何ごとも通ると思ったら大間違いです」と、亜紀を連れて帰ります。
そのことで良寧から報告を受けた清水半蔵は、琉球の女は扱いにくいと笑います。半蔵は、昨夜真振という女に突然襲撃を受けたと打ち明けます。信じられない良寧は真振が捕らえられている牢に向かいますが、折檻されて身体中あざだらけの女は確かに真振でした。良寧はあの明るく活発だった真振がこのような姿にと愕然とします。
──1610(慶長15)年7月末、尚寧王の一行は京都の伏見を後にし、一路家康の待つ駿府へ向かったのです。
家康は鷹狩りから戻った格好のまま尚寧と対面します。ギロリと睨みつけた家康は無言で尚寧に近づき、連行を担った家久は慌てて尚寧より下座に下がります。会いたがっていた尚寧と会えて、家康はご満悦です。尚寧はその眼で大和を見てみて“大きい”と表現しますが、琉球に比べれば大きな大和も、尚寧王が敬愛する明国に比べれば小さい小さいと笑います。
その夜は徳川・島津・琉球が手を結ぶというめでたい宴が開かれます。さっそく啓山らが琉球舞踊を家康たちに披露します。琉球の衣装は鮮やかで、南国由来だと尚寧は説明しますが、それに比べて薩摩は地味で色がありません。それを家康に指摘されると、「薩摩は貧しゅうございますので」と家久は汗をかきます。家康は家久から、明国への進貢の件が難航していると聞かされ、圧力で家久に急がせます。
病が続いていた尚宏ですが、ひきつけを起こします。邦義が手当てをし、どうにか落ち着きを取り戻した尚宏は、尚寧の見舞いを受けます。このような身体で申し訳ないと詫びを入れる尚宏ですが、しばらく駿府で養生し、自分が江戸から帰って来たら元気な姿を見せよと励まします。
軍陀利の子は「武樽」と名付けられますが、尚寧との子というだけあって、自分の子と思うのは恐れ多いと巴知羅は父になることを拒絶します。しかし高翔は、この子の父親になってくれ、つまり夫婦になってくれと言っているんじゃないかと巴知羅をどつき、巴知羅は手のひらを返したように「ええに決まってるやないか」とニンマリです。
ある夜、閉じ込められている真振を助けにケンが単独で襲い、救出しますが、たちまち中原松之助ら薩摩の男に取り囲まれます。武器を捨てろとの命令に一瞬たじろぐケンですが、その包囲網のさらに外側から奇羅波丸らが鉄砲を構えます。「松之助、いずれお前とは決着をつける。それまで首を洗って待ってろ。は!」
養生している尚宏ですが、少しずつ快方に向かっています。家康は尚宏をいたわりますが、大御所が見舞いに来たと知った尚宏は、琉球をお助けくださいと声を絞り出します。戻る家康を邦義は引き止め、なぜ薩摩の琉球侵攻を認めたのかと詰め寄ります。負けると分かっている戦をなぜしたのかと言われては、邦義も認めざるを得ません。「愚かではございますが、命よりも名を惜しんだのでございます」
──8月も終わりに近づいたころ、一向は江戸に到着。島津家久と尚寧王は直ちに江戸城に赴き、将軍徳川秀忠に拝謁したのでした。将軍秀忠の話は、琉球王朝の存続は認めるが、政は薩摩の指図に従えという内容でした。
ようやく江戸に到着し、尚寧は尚宏への土産を準備せよと啓泰に命じますが、そこに尚宏は22日、駿府で亡くなったと知らせが舞い込みます。『求玉院殿大洋尚公居士』という家康自らしたためた位牌に、尚寧は涙にくれます。
──尚寧王の弟・具志頭王子尚宏。32年の短い生涯でございました。
啓泰は薩摩から急いで戻るよう言われ、一足早く江戸を出立することになりました。啓山は啓泰に、京に残りたいと言い出します。京には琉球にないものがたくさんあり、踊りに精進したいのです。琉球の再建に力を尽くせと啓泰は説得しますが、自分には自分の生き方がしてみたいと食い下がります。「俺は兄貴の分身じゃない。道中ご無事で」
夜、京の大路を急いで歩く啓山の姿を、偶然真鶴と新垣朝永が目撃します。京都に残ることを特別に許可された啓山ですが、羽儀は自分のところに来るよう勧めても、誰の力も借りたくないと断ります。そこに現れた真鶴は、母親のところならと自分のところに来るよう勧めます。啓山はそれさえも断り、自分の好きにさせてくれと微笑みます。その様子を物陰に隠れて朝永が見つめていました。
謝名は素直に監視の言うことを聞いていたおかげで、目がゆるくなったと笑います。謝名は啓泰に明国皇帝に渡してほしいと冊子を差し出します。その中には謝名の思いがしたためられた紙が入っていて、薩摩にその存在を知られないようにという話です。それに目を通した啓泰は、「……これは!?」と驚きの声を上げます。
脚本:山田 信夫・水谷 龍二
テーマ曲:谷村 新司 「階(きざはし)」
語り:北林 谷栄
音楽:長生 淳
題字:水谷 勇夫
原作:陳 舜臣
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[出演]
東山 紀之 (啓泰)
渡部 篤郎 (啓山)
原田 知世 (阿紀)
工藤 夕貴 (羽儀)
清水 宏次朗 (奇羅波丸)
小柳 ルミ子 (真鶴)
間 寛平 (巴知羅)
毬谷 友子 (軍陀利)
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小林 旭 (徳川家康)
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寺田 農 (清水半蔵)
富司 純子 (尚永王妃)
三木 のり平 (高翔)
沢田 研二 (尚寧王)
江守 徹 (謝名親方)
萩原 健一 (楊 邦義)
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制作:音成 正人
制作著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
:NHKテクニカルサービス
演出:榎戸 崇泰
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『琉球の風 -DRAGON SPIRIT-』
第16回「父の愛」
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