プレイバック琉球の風 -DRAGON SPIRIT-・(16)父の愛
──主を失った首里城は人影もなく、琉球舞踊もなく音曲もなく、わびしい空き城でございました。
清水半蔵は、啓泰に再度明国へ赴かせ、進貢貿易の再開を願い出るよう命じます。明国へは昨年、同様の願い出をしていますが、琉球の国力が回復するおよそ10年後まで中断すると、断られたのでした。中原松之助は、進貢貿易が叶わない限り尚寧王はいつまでたっても薩摩に留め置かれることになると圧力をかけ、啓泰は反発しますが、再度明国へ渡ろうと名護良寧がとりなします。
しかし啓泰は、進貢貿易が叶ったとしても、宝物は薩摩が持ち帰ってしまい、貢ぎ物がないと難色を示します。半蔵は貢ぎ物は薩摩で用意するとため息をつきますが、進貢貿易の願い出の一行に松之助も加わると知り、朝鮮出兵で大和人に恨みを抱く者が多いのにと鼻で笑います。しかしそこは、松之助も琉球衣裳に身を包んで、大和人と分からないようにして一行に加わると、抜け目はありません。
ウシの店では、良寧と啓泰が酒を酌み交わします。奇羅波丸や浦添百千代らが暴れ回って薩摩の番所を襲い、金を奪って孤児たちに配って回っているそうです。危機感を覚える良寧ですが、そこにその2人が駆け込んできて、ウシに渡してもらった縄で良寧を縛り上げます。啓泰は尚宏の遺髪を見せ、死ぬ間際まで琉球の安寧を願っていたことを告げ、「いま琉球人が争ったら琉球はどうなる?」と黙らせます。
大美御殿(王妃たちの館)に尚宏の遺髪を持って行く啓泰です。尚寧王妃はいつ尚寧が戻るのか啓泰に尋ねますが、啓泰はハッキリとは答えられず、母の尚永王妃に“そのために啓泰は明国に赴く”となだめます。しかし王妃は啓泰がウソを言っていると睨みつけ、この遺髪も尚寧のものに違いないと取り乱します。尚永王妃は、啓泰だけが頼りと頭を下げます。
──謝名親方が明国皇帝に宛てた手紙は、琉球に援軍を送らず琉球を見捨てた明国に対して、熱烈たる怒りの言葉に満ち溢れておりました。そしてまた、薩摩がいま、台湾侵略を計画していることを告げ、明国の危機を切々と伝える手紙でもありました。
その『反間(はんかん)の書』を読んで聞かせた高翔は、明国に裏切られ、自らは囚われの身となってもまだ明国の心配をしている謝名を慮ります。ともかく内容が内容だけに、松之助に知られないように明国皇帝に渡すには、明の官僚・謝 汝烈の力を借りるしかなさそうです。武樽が泣き出し巴知羅があやす中で、軍陀利は啓泰と阿紀にいつ夫婦になるの? と笑顔を見せますが、顔を見合せたままうつむく二人です。
大事な大事な『反間の書』を掛け衿(えり)に隠し、糸で縫い付けながら、阿紀は啓泰が明国から戻ったらすぐに薩摩に行くととても寂しそうです。啓山は京に残り、舞の勉強をしています。阿紀は羽儀が幸せそうだと羨ましがりますが、縫い付けに使った糸を歯でピッと切った時、啓泰は阿紀の肩を抱きます。「薩摩から帰って来たら、俺と一緒になってほしい」「お帰りを……お待ちしております」
茶屋四郎次郎の別邸では、啓山が考えた踊りを羽儀に教えています。そこに琉球から百千代と真振が金の無心に現れます。羽儀は兄の奇羅波丸と夫婦になった真振を舐めるように見て、自分は遠くにいるから兄を守ってあげてねとシェイクハンド(握手)を求めます。そこに茶屋四郎次郎清次が駆け込み、薩摩の客が来たからと、2人には裏口から帰ってもらうように案内させます。
清次は羽儀に、啓山はこの屋敷ではなく真鶴のほうで預かってもらった方がいい、と提案します。もちろん啓山に対して嫉妬の心がないとはいえませんが、それより重大な事実が発覚したのです。真鶴と一緒にいる「鶴 球陽」は偽名で、“鶴”は真鶴を思って、“球”は琉球を意味し、明人ではなく本当は琉球人、名も新垣朝永という琉球一の踊りの名手です。しかも啓山の実の父……。
その事実を啓山は知らないということを聞かされて、羽儀は複雑な思いのまま啓山の元に戻ります。啓山が琉球舞踊を踊り、それを見た朝永は「棒の扱いが少し違うように思うのですが」と指摘し、明人のあなたに何が分かると啓山はムッとしますが、朝永は同じ舞踊を舞い、左半身が不自由であることを差し引いても見事な舞を披露します。啓山はその美しさに完全に目を奪われます。
──このころ、明国では朝廷の政が大きく乱れ、不満を持つ人々が各地に政治結社を作り始めていました。
中国・福建の琉球館にたどりついた啓泰たちですが、そこに賊が襲撃し、尚寧王の国書などを奪い、取り返そうとした琉球人を刺し殺します。国書を返してほしければ金をタップリ用意しろ、と啓泰を人質に取ります。賊が胸ぐらをつかんだ時に掛け衿に紙のようなものを感じ、着物を破られて謝名の書状を奪い取られてしまいます。取り返そうとしたとき、後ろから殴られて啓泰は気絶してしまいます。
啓泰が目を覚ますと、「啓泰、久しぶりだな」と声をかける男がいました。よく見ると頼りにしていた汝烈です。驚く啓泰ですが、聞けば妻も子も殺され、汝烈は荒れていました。汝烈は啓泰に、ヌルハチについて知っているかと尋ねます。
──韃靼人(だったんじん)のヌルハチとは、後に武力で明を倒し、清という国を打ち立てた人物のことでございます。
汝烈はヌルハチと協力して明国を倒す、そのために膨大な金が要るわけです。奪った尚寧の国書は高く売れるとニンマリし、啓泰が隠し持っていた謝名の書状についても、「あれは面白かった。薩摩が台湾を攻める。大いに結構。大歓迎だ」と告げます。返してくれと啓泰は食い下がりますが、破り捨てたとにべもありません。
奪還のため、良寧と松之助は汝烈に金を払って尚寧の国書を取り返しますが、謝名の書状を提示されて、何も知らない2人は顔を見合わせます。薩摩が台湾を狙っているという秘密が書いてあると知った松之助は顔色を変え、我々薩摩は台湾など狙っていないと口走ってしまいます。汝烈は松之助を島津の侍だと見抜き、手下の者たちは“親父も叔父も石曼子(しまんず=島津)に殺された”と松之助に刀を向けます。
江戸城では、鷹狩り三昧の徳川家康を秀忠が労わります。68歳(69歳?(※筆者注))となり、自分が死んだ後の日本がどうなっているか秀忠に尋ねますが、うまく答えられません。
清次は、天下に異変が起き、豊臣家の世が蘇るかもしれないと期待する向きがあると説明します。大坂城には天下の黄金のうち9割が貯えられ、昨年の慶長14(1609)年1月に家康が方広寺大仏殿の再興を勧めたことで、大坂城からおびただしい黄金が流出し、その心配は薄らぎましたが、太閤豊臣秀吉を贔屓にしていた後陽成天皇のことが気がかりで、家康の力で天皇の退位を勧めてもらい、宮中で未だに蔓延(はびこ)る豊臣色を清めてほしいと進言します。
「もう一人おる」という家康は、島津義久の名を挙げます。大坂も大事だが、薩摩から目を離してはならないと秀忠に厳命します。先日、明国の商人が家康に挨拶に訪れ、福建総督に宛てて勘合貿易を促す書状を与えましたが、明への道はとても遠そうです。それだけに家康にとっては琉球は大切なのです。「いかなることがあろうとも、琉球は薩摩に渡してはならぬ!」
薩摩では、尚寧を伴って江戸から帰還した島津家久が、駿府での家康との対面について詳細に報告します。長年の友人に対するように親しく言葉をかけ、徳川・島津・琉球が手を結ぶめでたい宴を開いたと聞き、家康は琉球におべんちゃらを使い、島津が血と汗で手に入れた琉球を横取りしようとしていると激怒します。「もし琉球に手を出すようならば、島津は一族郎党国を挙げて海へ押し出し、海賊となって東シナ海を暴れ回ってやる!」
薩摩に戻った啓泰は、謝名に『反間の書』を奪い取られてしまったと詫びます。仮に明国皇帝に渡っていても、国が乱れていれば意味をなさなかっただろうと、謝名は啓泰を許します。ともかく明国との貿易は手の届かぬところに行ってしまったと謝名はため息をつきます。気がかりなのは明国との貿易が難しいとなると、尚寧の帰国がそれだけ遅れてしまうことです。謝名は啓泰を義久のもとに向かわせます。
謝名に“小さな嘘は見破られる” “大きな嘘をつかねばならぬ”と指示されて、啓泰は義久と対面します。明国との貿易はいつ叶うか尋ねる義久に、明国皇帝が福建総督に命じて、尚寧を琉球に帰国させれば明日にでもと答えます。その証の書状を提出しますが、義久は偽物だとすぐに見破ります。義久の懐には、松之助経由で渡された謝名の手による『反間の書』があったのです。
激怒した義久は、叩き切ってくれる! と半蔵に謝名を連れてくるよう命じ、刀を取ります。義久の後ろでマッサージをしていた邦義は、無言で啓泰の前に立ちはだかります。「啓泰に謀を命じたのはこの私です! 斬るならば私を斬ってください」 払いのけられた邦義は小刀を取って義久に相対し、半蔵は啓泰の不始末は腹を斬って詫びると義久をなだめます。ふらついた義久は大量に吐血して倒れます。
床に伏せる義久は啓泰を側に呼びます。啓泰が28歳になると知り、国を思う若者は宝だと今日のことは許します。腹を斬ると言った半蔵には「たわけが」とこれも許し、啓泰に手をかければ殺すつもりだったと白状する邦義も不問に付します。啓泰には、親の気持ちを有難いと思うよう諭します。「28か……」と義久は涙を流します。
夜明け前、邦義は啓泰をある場所へ連れていきます。途中、いきなり倒れる邦義ですが、立ち上がると啓泰の方を向き、今日のようなことは二度と許さん! とこぶしを振り上げます。「人間が生きていくのに、国など関係ないッ! 国のために死ぬなんてバカなことだ! 琉球より! 薩摩より! どんな国よりも一人の人間が生きていく方がよっぽど大切なんだ! 分かったか!」 父の勢いに頷くしかない啓泰です。
わしより先に死ぬのは許さんぞ とつぶやき、直後にまた倒れる邦義ですが、どうやら心臓を悪くしたようです。啓泰に支えられて歩き出す邦義ですが、お前に抱かれるようじゃ俺も終わりだ、と振り払います。邦義が連れてきたのは、啓泰ら家族が死んだものと思って手を合わせていた墓石です。見上げると、日の出が出始めていました。いつか見た光景です。「啓泰、生きていることは素晴らしい……」「……はい」
脚本:山田 信夫
テーマ曲:谷村 新司 「階(きざはし)」
語り:北林 谷栄
音楽:長生 淳
題字:水谷 勇夫
原作:陳 舜臣
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[出演]
東山 紀之 (啓泰)
渡部 篤郎 (啓山)
原田 知世 (阿紀)
工藤 夕貴 (羽儀)
清水 宏次朗 (奇羅波丸)
小柳 ルミ子 (真鶴)
間 寛平 (巴知羅)
毬谷 友子 (軍陀利)
坂本 スミ子 (ウシ)
永島 暎子 (清水 富)
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小林 旭 (徳川家康)
橋爪 功 (名護親方)
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寺田 農 (清水半蔵)
室田 日出男 (清水義久)
三木 のり平 (高翔)
富司 純子 (尚永王妃)
江守 徹 (謝名親方)
萩原 健一 (楊 邦義)
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制作:音成 正人
制作著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
:NHKテクニカルサービス
演出:吉村 芳之
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『琉球の風 -DRAGON SPIRIT-』
第17回「命どぅ宝」
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