2024年12月31日 (火)

プレイバック夢千代日記・最終回 [終]

──私の病気は白血病です。三十五年前、広島でピカドンの光を浴びたせいです。でも私はピカドンの光を見ていません。母の胎内にいたのです。市駒さんを追って行った山根刑事さんは胃潰瘍で血を吐き、市駒さんの護送も人に任せて湯里に寝ています──

具合が悪く横たわる夢千代の様子をスミが見に来てくれました。木原医師に来てもらうことを勧めるスミですが、白血病は木原先生ではどうにもできないのです。芸者たちが揃って食卓に集まり朝ごはんです。しかし体調がすぐれない千代春は、スミが用意した朝ごはんには手を付けずに自分の部屋に戻っていきます。アコちゃんの横に座る金魚は、自分に宛てられた便せんに目を通して「何だァこれ!?」と声を上げます。

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2024年12月27日 (金)

プレイバック夢千代日記 (連続五回)・第四回

「母さん……夢千代さん……」 夢千代はふと呼ばれたような気がして振り返ります。「市駒さん!? どこ? どこにおりんさる?」 ここです、という声の方向に目を凝らすと、物陰に隠れて市駒が立っていました。夢千代は、はる家で匿ってあげたいけれど、たった今出て行った刑事がきっと引き返してくると説明し、そこから出てこないように言葉をかけます。

夢千代は、市駒が本当に人を殺すようなことをしたのかと優しく問いかけますが、市駒は嗚咽を漏らして泣き出します。懐を確かめた夢千代は、少額の金しかないことに気づき、お金を取りにはる家に戻ります。置屋の中でスミの顔を見た夢千代は、ハッと気が付いて再び市駒のところに向かいますが、その時にはすでに姿をくらましていました。

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2024年12月24日 (火)

プレイバック夢千代日記 (連続五回)・第三回

──幸せはみな一色(ひといろ)だけど、不幸せは一つひとつ違った色をしているそうです。私を含め、我がはる家の芸者衆がなぜ芸者になったかは、一人ひとり違います──

はる家2階の部屋から金魚とアコちゃんが音を立てずに降りてきて、そっと出ていきます。その間、1階の客間では橋爪トヨ子と節子、藤森刑事が訪ねてきていて、夢千代が対応していました。「金魚さんに会わせてくださいッ」とトヨ子は身を乗り出して夢千代に迫り、いきなり言われたらビックリするからと藤森がたしなめます。夢千代はどういう事情かまったく把握していないのです。

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2024年12月20日 (金)

プレイバック夢千代日記 (連続五回)・第二回

──十一月二十一日、小雨。気温八度。眠り浅く手足がだるい──

朝、温泉熱を利用して食べ物を漬ける女性たち。そこに夢千代も混じっています。山根刑事は遠くから夢千代を見ていますが、そこに芸者・雀が現れます。住み込みは窮屈という雀は、ここからほど近いアパートに住んでいると指をさし、遊びに来る? と山根を誘います。山根の興味は雀より元芸者の市駒で、市駒は住み込みだったと雀に聞きます。そんなやりとりに、夢千代が気づいて会釈します。

置屋はる家に来た山根は「あなたのつけてる日記、ありますね。あれ見せてほしいんですよ」と唐突に言い出します。半月前に帰ってきたと山倉の証言にもあるわけです。夢千代は、日記は病状日記で、毎日の身体の状態をつづって半年分を病院に置いてきていて、いま手元にはないと答えます。何の病気ですか、との山根の問いには答えず、一か月後に日記を送り返された時にどうぞ、と山根を見据えます。

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2024年12月17日 (火)

プレイバック夢千代日記 (連続五回)・[新] 第一回

──あんなに表日本は晴れていたのに、山を抜けたら一ぺんに鉛色の空になっている──
11月20日、どう書けばいいのだろう。晴のち曇。
──久しぶりの旅なので、目がくらむ。流れ落ちるように、血が引いていく──

急行「但馬」が長いトンネルを走り抜けていきます。その列車に乗って神戸の病院から帰る夢千代は、立ち上がろうとしてふらつき、手で顔を覆って座席に座り込みます。足元をみかんが転がってきました。隣の座席の男が「少し買いすぎたんですよ」とみかんを勧めてきます。それを断ると、夢千代はそっと目を閉じます。

この音が山陰の音です。これを聞くと帰って来た気がします。

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