暑い夏が過ぎ、吹く風に秋の気配を感ずるころ、観世音寺(かんぜおんじ)に紅(あか)や白の胡蝶(こちょう)が舞いはじめる。入口の大きな寺号碑(じごうひ)の傍(かたわら)で、池のほとりで、古庵(こあん)の庭で、大きくしだれた枝先に花房がゆれる。山上憶良(やまのうえのおくら)が秋の花の筆頭にあげたように、万葉人からこよなく愛された萩。万葉集には百首を超す歌が詠(よ)まれている。観世音寺に萩の花がゆれると古都も一段と秋めく。

<説明プレートより>