湯原に 鳴くあし鶴は 吾がごとく 妹に恋ふれか 時わかず鳴く
(大宰帥 大伴旅人)

最愛の妻大伴郎女(おおとものいらつめ)を亡くした旅人は、天平元年ごろ足に瘡(かさ)ができ、次田温泉(二日市温泉)に湯治に来ていた。その時、湯原(ゆのはら)で絶え間なく泣いている鶴の声を聞いてこの歌を詠んだ。
湯原で鳴く葦辺(あしべ)の鶴はわたしのように妻を恋うているのか、いつも鳴いているよという意。九死に一生を得たものの、自ら死境をさまよった作者の特別な感懐(おもい)がある。

<説明プレートより>